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アイザック・ジョセフ

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私はジェダイナ公爵家に仕える執事です。
ジェダイナ公爵家には大変お世話になりました。
私は幼い頃、両親に捨てられ孤児院で育ちました。
孤児院は援助をもらえるかどうかでそこで育つ子供が普通に暮らせるか非遠い暮らしを余儀なくされるかが変わります。
私は後者の者でした。
人として扱われることもなく学もない私はそのまま朽ち果てる運命だと思いました。
そんな私を地の底から掬い上げてくださったのがキャサリン・レナイト様でございました。
キャサリン様はまだ未成熟な子供でしたが意思の強い瞳で私を見て『お前に決めた。今日から当家の執事になりなさい。ゆくゆくは私の専属になるように。』そう仰いました。
それはつまり、悲惨な孤児院を出て公爵家で働く事が出来るというわけです。
並の暮らしどころか私達平民からすればたいそうな暮らしです。
通常貴族のお嬢様にお仕えするなら相応の教育を受けたものであるのが常ですから。
キャサリン様のそれはよくある子供の我儘の一種だったのですが、公爵様は私に教育を施し執事にして下さいました。
それは貴族の気まぐれだったのでしょう。
それでも私には人生を救って下さった命の恩人の様な方々なのです。
ですから冒頭の私はジェダイナ公爵家に仕える執事というのは合っているようで間違っているのです。
正確には私はキャサリン様にお仕えしているのですから。
ですがキャサリン様は現在レナイト侯爵家の夫人をしております。
本来であれば姉のクリスティーン様が亡くなられた折に家督を継ぐはずでしたのに、姪のイザベルが生まれていた為に家督継承権はイザベル様がを持っているからです。
ですので私は今はサミュエル公爵家にて執事をしていますが、いずれこの邸にキャサリン様が戻られた折には専属の執事となるのです。
結婚しているキャサリン様が戻られる事が有るのかという事についてですが、近い将来戻られます。
ジェダイナ公爵家の家督を継ぐ者の母としてです。
キャサリン様は可愛らしい娘のシャーロット様と凛々しいお顔立ちのヴィンセント様をお産みになられました。
直系の男児が生まれたのですから家督はイザベル様からヴィンセント様に移るのです。
これは決定事項です。
当主である公爵様がお決めになられたのですから。
そのための準備も着々と進めています。
それから可愛らしいシャーロット様を苦しめる者がいます。
その者は早々に始末しなければなりません。
私がお仕えするジェダイナ公爵家の…キャサリン様の憂いは早く晴らさなければなりませんから。
ですがあまり手荒な真似をしてはキャサリン様にご迷惑が掛かるかもしれませんから最初は出来るだけ穏便に事を進めようと思います。
さて…それでは先ずはこの扉の向こうにいる令嬢に舞台から降りて頂きましょうか。

そうして私は笑みを絶やさない仮面をつけるのです。
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