上 下
173 / 215

明かされる真実 ハル視点

しおりを挟む
「お前達が知らされていないのか、王家もニコラス・レナイト侯爵に騙されているか…どちらだろうな?」

アイザック・ジョセフは何を言っているんだ?
俺達が知らされていない可能性はあるが…もし、ニコラス・レナイト侯爵が王家をも騙しているとすれば何が考えられる?
一体何が?

「シャーロット・レナイトとヴィンセント・レナイトの父親はニコラス・レナイト侯爵だと言う話か?」

突然エドがそんな事を言い出した。
そうか…白い結婚が王家についた嘘だとしたら2人は侯爵の子供でもおかしくない。
でもだとすれば侯爵はイオの母親がいながらキャサリン夫人と関係を持った事になる。
つまり不貞の証拠がシャーロット・レナイトになる。
アイザック・ジョセフの反応を見るが特に表情を変える事はなかった。
イオは…無表情だった。
驚きも悲しみもなく、ただその話を受け止めていた。

「何だ…知っていたのか。」

「いや。知らなかった。でも、王家を騙すような話ならその位かなと思っただけだ。だが、その話自体に真実味があるかは分からないな。お前の妄想かもしれないからな。」

エドはやっぱり凄いな…俺はイオの父親を無意識に疑いたくなかったからその可能性を考えないようにしていたんだろうな。

「妄想?事実だ。」

「それはキャサリン・レナイト夫人が言ったからか?」

アイザック・ジョセフはグッと手のひらを握りしめている。

「キャサリン・レナイト夫人が言った事なんだろう?」

アイザック・ジョセフは唇を噛み締め悔しそうにした。
やはりキャサリン・レナイト夫人が言ったからそう信じているだけなんだろう。

「そうであれば良かったが…シャーロット様とヴィンセント様がニコラス・レナイト侯爵の子供だと侯爵本人が言ったんだ。」

…………⁉︎
侯爵本人が言った?

「お父様がそう言ったのであれば本当なのでしょう。」

「イオ?」

「以前から気になっていたんです。いえ、そう願っていただけなのかもしれませんが…もし私と義姉が父の本当の子供でシャーロットとヴィンセントがそうでなければ私は父の本当の子供なのに愛されなかった事になります。でもそうでないのであれば、私だけが父に愛されなかっただけという事です。父の子供の中で私だけが…」

愛されていなかったと思う?
何故イオだが愛されなかった?
イオの母親を愛していたのに?
そうだとしたら何かおかしくないか?

「それはおかしくないか?」

俺の言葉にイオは首を傾げる。

「何がだ?」

アイザック・ジョセフは何がおかしいのか分からないでいる。

「明らかにおかしいな。」

だがエドは分かったらしい。

「イオの母親は父親の最愛の人だったなら、どうして裏切る必要があった?」

「あぁそのことか。簡単だよ。先に裏切ったのがパトリシア夫人だったのだから。」

「つまりイオがニコラス・レナイト侯爵の娘ではないということか?」

「その通りだ。」

「何故そう思う?それも侯爵が言っていたのか?」

「あぁ・パトリシア夫人には他に男の影があったとな。」

「イオ、侯爵に詳しく話を聞く必要がありそうだな。恐らくことの発端は侯爵の誤解にある可能性が高い。全てを正そう。」

もし俺が思った通りなら、イオの父親は…ニコラス・レナイトは何て可哀想な人なんだろうな。
そしてジェダイナ公爵はそれを利用したんだろうな。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

夫は帰ってこないので、別の人を愛することにしました。

ララ
恋愛
帰らない夫、悲しむ娘。 私の思い描いた幸せはそこにはなかった。 だから私は……

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

両親からも婚約者からも愛されません

ララ
恋愛
妹が生まれたことで、私の生活は一変した。 両親からの愛を妹が独り占めをして、私はすっかり蚊帳の外となった。 そんな生活に終わりを告げるように婚約が決まるが……

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

処理中です...