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ままならない気持ち ハル視点
しおりを挟む談話室でダニーとチェスの勝負をしているとエドが来る。
何か話があるのだろうと思いダニーを軽くあしらってエドに要件を尋ねる。
ダニーは強いが周りが見えなくなるから、そこを突けば俺もまだ勝てる。
でもダニーが弱点を克服すれば、俺は勝てなくなるかもな…
「イオの事。」
イオに何かあったのかと思い不安になる。
「イオがどうしたのエド兄。」
「いや…あいつ…好きなやついるみたいで…初日にあった時に話していたからさ。お前達何か聞いてないかと思って…」
内容を理解するのに時間がかかる。
エドの話に息苦しさと苛立ちを覚える。
「…いや。特に聞いてないけど?」
「そうか…。」
エドはどういうつもりでこんな話をしてきたんだ?
イオは何でエドに話したんだ?
エドに対してもイオに対しても…そして自分自身に対しても苛々が抑えられない。
「エド兄はなんて聞いたの?」
「ん?あ~憧れている人がいるって…イオが一方的に慕っている人だって。」
イオは初めて会った時、縁談を断ろうとしていた。
その上でレナイト侯爵籍から抜け修道女になるつもりだったらしい。
もちろん俺も初めて会った時は縁談を受け入れるつもりはなかった。
イオが一方的に慕っているってことは、相手は既婚者か?まさかイオが愛人?
いやイオに限ってそれはないな。
動揺して馬鹿なこと考えた。
イオの性格なら好きになってはいけない人を好きになったとか?
その可能性が1番高いのは元婚約者だ。
イオの元婚約者は今は義姉と義妹の婚約者になったって話だけどその元婚約者が好きとか?
それで姉か妹に申し訳なく思って修道女になることに決めたとか?
もし相手が義妹ならイオが申し訳なく思う必要はないだろう。
イオに酷いことをしたんだから…
だとしてもイオならあり得る…だったら尚更…
「何それ。報われない不毛な恋愛でもしてるの?」
婚約解消しているから、もう望はないのに…
それでも修道女になるとか…なんでそんな…それ位その男が好きだって事か?
「だからイオも縁談に乗り気じゃなかったんだ。」
そういうことだよな。
それに初めからそういう約束だったじゃないか…
「だから約束したんだろ。良いじゃないか俺達だってそのつもりだったんだから。」
苛立ちをエドとダニーにぶつけたくなくて俺は談話室を出た。
自室に戻ると誰も入ってこないように言い中に入る。
扉に凭れ掛かってズルズルと床に座り込む。
机の上に置いてあったイオのために選んだ本が目に入る。
喜ぶイオの顔が見たくて選んだ本を今は見たくなくて掌で眼を覆い項垂れる。
イオが弱音を吐ける存在になりたいと思った。
でもイオは大切な話はエドにしているんだろう。
そういうのはエドの方が上手いんだから当然だ…俺だって分かってる!
エドの方が包容力があって頼りになる…
俺にはないものをエドは持っているんだから…
俺は今まで他人に関わろうとはしてこなかったんだから…
そう思う反面、何で俺じゃないんだ!って気持ちになる。
その上好きな男がいるとか…何なんだよ…
最近は側に居れば抱きしめてしまいそうになるのを必死に抑えていた。
それすらも楽しんでいた。
でもこれからはイオの側に居るのが辛いな…俺は自分の気持ちを自覚してしまったから…
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