上 下
26 / 215

ハルの看病①

しおりを挟む
今日から2日間、俺がネイオウミ嬢の看病という名の相手をする。
最初の2日間は楽しく過ごしたとエド本人から話を聞いた。
エドはネイオウミ嬢は本が好きだと言っていたから今日は色んな種類の本を用意した。
本を読んでいれば話す事なく時間は過ぎるからな。
彼女の過去を聞いて絆されるとしたらダニーかな…
そんな事を考えていたらネイオウミ嬢の部屋に到着する。
ノックをし部屋の中に入るとエドから聞いていた通りネイオウミ嬢はソファに座っていた。

「今日から2日間は俺だから。」

「宜しくお願いします。それから、先日はハロルド様が助けてくださったと聞きました。本当にありがとうございました。」

「いや…今はどうだ?少しは痛みはひいたか?」

「はい。まだ時々痛むことはありますが良くなりました。ハロルド様が助けてくださったおかげです。本当にありがとうございました。」

「ヘンリー医師にはまだ暫く安静にしているように言われているんだろう?無理はするなよ。」

「はい。気を付けます。」

「まぁまだ暫くは動き回れないだろうから本を持ってきた。エドから本が好きだって聞いたから。気になるものがあれば読んだら?」

そう言ったら瞳を輝かせて喜んだ所を見ると、相当本が好きなんだな。
俺も本好きだからか、せっかくなら好きな本を持ってきてやってもいいかと思ってしまう。

「どんな種類の本が好きか分からなかったから今日は適当に持ってきたけど、希望があれば明日は言ってくれたジャンルの本を持ってくるよ。」

「本なら何でも好きです。」

「何で?何で本が好きなの?」

「えっ⁉︎あ~…お恥ずかしい話なんですが、あの私…貴族令嬢なのに家庭教師をつけてもらえなくて…だから独学で学んでいたんです。私にとって本は先生なんです。だから本が好きなんです。」

本が先生とか…本当に独学で学んできたんだな。
エドだってあんなことがなければ学ぶ事が出来たと思うと…過程は何にせよ俺は恵まれていたんだな。

「そう。それでも特に好きなジャンルくらいはないの?」

「物語が…好きなんて…子供っぽいですよね…」

恥ずかしそうにそう話す。

「そうか?俺も好きだけどな。物語なら何でも良いの?」

「楽しい話が良いです。」

「ハッピーエンドで終わるとか?」

「はい‼︎想像すると楽しくなるので好きです。」

想像すると…つまり自分に置き替えるとって事か?
現実逃避だよな…俺もやったから良く分かる。

「ハロルド様も本がお好きなんですよね?」

「ん?あぁエドに聞いたのか。」

「はい。エド様がハロルド様は本に詳しいと仰っていましたので。」

エド様ね…確かエドもイオって呼んでいたか。
愛称で呼び合うなんて随分仲良くなったんだな。

「ハロルド様はどんな本が好きなんですか?」

「俺?俺も何でも読むけど…好きなジャンルは…歴史書や人体学とか医学書好かな。物語だと俺は冒険ものが好きかな。」

「冒険ものの物語もハラハラして面白いですよね。人体学や医学書は専門書なので図書館では見れなかったので読んだ事はないのですが、歴史書は色んな解釈が合ってつい読み比べてしまいました。」

「そうなんだよな。歴史書はそれが面白いんだよな。」

今まで本の話を誰かとした事がなかったからだろうか、気がつくと持ってきた本も読まずに話に夢中になってしまっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」 先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。 「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。 だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。 そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

処理中です...