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最悪の1週間の始まり⑧

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6日目…気怠さはありましたが熱は下がっていました。
体の調子が良くなっても沈んだ気持ちが浮上することはありませんでした。
明日には公爵邸に行かなくてはならない…
ふと何を着ていくべきだろうと思いクローゼットを見ました。
私は社交界デビューもさせてもらえなかったため碌な服を持っていないからです。
ドレスなんて1着も持っていません。
まともな服は母の遺品のワンピースだけですが…
母の遺品は義母に捨てられてしまい、残ったのは地味な色のワンピースが4着と懐中時計のみでした。
それに独学で学んだ程度のマナーしか知らない事も私を不安にさせました。

〔この話は無くなって欲しいけどレナイト侯爵家の名誉を貶めたくはないのに…もしこのまま話が進んだら…私は誰かを選ばなきゃいけないのかしら?私には何もないのに…イザベルお義姉様の様な教養も完璧なマナーもなく、義妹のシャーロットの様な社交性も愛想もない。何より2人は美しく、可愛いけど私は…どうしよう逃げ出したい。今この離れから逃げ出したら自由になれるかしら?どこかの修道院に行って生涯を終える方が良いわよね…〕

そんな事を考えていた時、扉をノックする音がしました。
確認すると使用人の1人で、何でも私が逃げ出さない様に今日は私についているよう父に命じられたと言います。
逃げ道が絶たれてしまいました…。
私の元に来た使用人のアリーさんはさっそく明日の準備に取り掛かりましたが選ぶほどにもない洋服に小物はそもそもありません。
手持ちの服の中で地味な色でも1番綺麗な母のワンピースを用意して頂きました。

「すみません…」

思わず謝ってしまった私にアリーさんは
「仕事ですので。」
と淡々と言っていましたが私は恥ずかしい思いと申し訳なさで一杯になりました。

「明日は朝からお出掛けの準備をします。体調は大丈夫ですか?」

私が昨日寝込んでいた事を知らないはずなのに気づかわれてあたふたしてしまいます。
偽りでも仕事の一環だとしても優しくされて嬉しかったのです。

「大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます。」

「ネイオウミお嬢様、私は使用人です。私に敬語は使わないで下さいませ。」

アリーさんにぴしゃりと言われて肩を落とす事になりました。
その後は話すのも怖くなり殆ど会話をせずに過ごしました。
そんな状態でもアリーさんは私のお世話をキチンとこなして下さいました。
食事の用意を誰かにしてもらったのも久々で側に誰かがいる食事も久々で幸せでした。
湯浴みの後にアリーさんが私の髪を手入れして下さいました。

「ネイオウミお嬢様。髪お揃えしましょうか?」

「髪ですか?」

「シャーロットお嬢様に切られた髪をお揃えしますか?」

「あっ…揃えた方が良いで…す…か…?」

「そうですね。軽くでも揃えた方が良いですね。それでは失礼します。」

そう言うとアリーさんはシャキッシャキッと私の髪を揃えていく。

「本当に簡単にですけど揃えさせて頂きました。」

「あっありがとうござい…ます。」

「いえ。でわおやすみなさいませ。」

結局敬語が最後まで抜けない私の事は無視してアリーさんは部屋を出ていった。
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