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118.目覚めの朝

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3日振りにゆっくりと寝た。
いつもフィアの温もりに癒されていたのは私の方だったのかと今更気づく。
意識が浮上してくると視線に気付く。
ゆっくりと瞳を開けると私を見つめる瞳がある。
アメジストとアクアマリンの瞳と目が合うと三日月型に細められる。

「おはようジーク。」

「…………………………」

「どうしたの?」

「フィア?」

「そうだよ。」

「フィア…フィア…良かったフィア…良かった…」

フィアの髪や頬等に触れ確かめる。

「どうしたの?ふふっ、そこはくすぐった…っつつ。」

「ごめんフィア大丈夫?」

「大丈夫よ。少し痛かっただけ。そんなに青い顔しないで!」

「ごめんフィア。でもフィアが私を庇って…刺されてから3日も目覚めないから…すごく心配したんだ。」

「えっ?えっ?私がジークを庇ったことになってるの?」

「え?」

「ううん。それならいいの。そういう事にしましょう。」

そう言いながら顔を真っ赤にしたフィアが頬を押さえる。

「フィア?どうしてそんなに真っ赤なの?」

「今は…その回復したら説明するね。」

「…うん。そうだね。元気になったら教えて!」

「そういえばサラエン夫人は?」

「まだ目覚めない。」

「そう…元気になったらサラエン夫人のお見舞いに行きたいわ。」

「うん。そうしよう。」

「ねぇジーク、キラデル侯爵はどうなったの?」

「あ…あぁ。それは後で教えてあげるね。まずはオリヴィア医師を呼んでくるから待っててね。」

ー奴の事は何も把握していないんだよな…オリヴィア夫人がフィアを診察している時に確認しておくか。

「待って。もう少しこのままでもいい?まだ朝早いでしょ?ヴィア先生達にご迷惑だと思うから…」

「ダメだ。頼むから自分の事も大事にしてくれ。本当にフィアが目覚めない間の3日間は生きた心地がしなかったんだから。私のためにも直ぐ診察を受けてくれ。」

「心配かけてごめんね。ヴィア先生呼んでください。」

「あぁ少し待っていて。」

私は急ぎ執務室へ向かう。
臣下の誰かはいるだろうと思っていたら全員いて流石に驚いた。
ウィルにはオリヴィア医師を呼ぶように伝える。
ダニーはマーキス公爵家にルドはオーウェン侯爵家にフィアが目覚めた事を伝えに行く。
ゼノスが他三公と四侯に頼りを出しレオンが掴んでいる情報を私に報告する。
本当に頼りになる臣下達だ。
ふと久々に見るゼノスに視線をやる。

ーゼノス…この間は忘れていてすまなかった。お前のおかげでフィアも目覚めたよ。ずっとアルバートとセシリア嬢の事を面倒見てたんだな…

ゼノスには落ち着いたら今度何かお礼をしようと思いながらレオンの報告を聞く。
オリヴィア夫人をフィアの部屋に連れて行ったウィルが戻る。

「診察が終わりましたら声をかけますと言ってました。」

「そうか分かった。」

「もう大丈夫そうだな。」

「あぁ。心配掛けたな。アルバートとセシリア嬢のおかげで目が覚めたよ。」

「えっ?僕は?」

「それとゼノスに殴られて目が覚めた。」

「おいゼノス、陛下を殴ったのか?」

「ウィルさん?落ち着いて…殴ってないから。ただこう胸ぐらを掴んで揺すりはしたけど…」

「はははっ!お前もやればできるんだな。」

そう話しながらウィルがゼノスの頭を撫で回す。
その時、オリヴィア夫人が診察が終わったと報告に来た。




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