【完】太陽の王が愛する妖精王の寵児

115．夜会⑧

「私が2人を殺した…私の邪魔をするから…私の物にならないから…だから私が殺したんだ…」

フィアを見ながらそう話し続ける侯爵からフィアも視線をそらさない。

「愚かですね。」

そう言いまた前に進む。

「愚か？私が？私が殺した事が？憎かったから。私の物にならないから。私の邪魔をするから。だから殺した。それが愚かだと？」

「何故、周りに目を向けられなかったのですか？キラデル侯爵の側にはいつもサラエン夫人がいたのに。」

「サラエン？サラエンはどうした？」

「キラデル侯爵。貴方が切り付けたのだろう？一命は取り留めた。だが今後、目を覚ますかは分からないそうだ。」

「そんな………サラエンが……サラエンまで……？」　　

サラエン夫人の事を聞き先程までの勢いがなくなる侯爵。
サラエン夫人の事を本当は愛そうとしていたのかもしれない。
でもそれ以上に父と母に執着していた。
両親の息子として目の前の男を痛めつけたいと思うが国王として裁きを言い渡さなければならないと堪える。

「キラデル侯爵。貴様は前国王ジェイド陛下並びにグロリア妃……並びにその子を殺害した罪で王国議会にて裁きを下す。また、サラエン夫人への傷害も同様に王国議会にて裁きを下す。さぁ観念しろ。」

「子共？ジークは君なんだろう？」

「私の弟か妹になるはずだった子供だ。あの時、母は妊娠していた。視察に出た後で体調を崩した母を医師が診察し分かった事だ。その時に診察した医師以外には父と私しか知らなかった事だが貴様が殺したんだ。」

カランっ

ナイフを落とし膝をつく侯爵を騎士が取り押さえる。

「そんな…じゃあその子が私達の子供？私が殺したのか？私達の子供を…違うよ私じゃない…私の邪魔をした者がいるんだよ…ねぇサラエンも分かるだろ？許してくれるよね？私の幸せのためなら君は犠牲になっても良いよね？私のせいじゃない…私のせいじゃない。」

またぶつぶつと言い始める侯爵。

「あぁそうか！ジェイド…貴様が奪ったのか？」

ギラリと私を睨むとその細身の体からは想像もしない力で騎士を振り解き落としたナイフを手に取り私に向かって走ってくる。
だが騎士達が私を庇い侯爵を取り押さえる。
侯爵が逃げない様にしっかりと拘束したのを確認して告げる。

「連れて行け。」

『御意に。』

「ははっ…はははっ！ジェイド！お前も知るがいい‼︎大切なも者を奪われる苦しみを‼︎ははははっはははははっ」

ー？？

始めは何を言っているのか分からなかった。
次第にその言葉の意味が分かり背筋が凍りついた。
奴は私に向かってきていた。
そう思っていたが…本当に？


バタっ

と何かが倒れる音がする。
臣下を避けて前に進み出る。

ーフィアは？

私よりも侯爵に近い位置にいた…
目の前に現れた光景に発狂しそうになる。
血を流し倒れているのは私の愛するフィアだったからだ。

「フィア‼︎」

駆け寄り抱きかかえると医務室まで走った。

ー何故フィアが？何故？どうして？

医務室に着くと直ぐに医師に診てもらう。
私の手にはフィアの血がべっとりとついていた。