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61.晴れ時々曇天

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それから毎日フィアの家族は登城する様になった。
日中は政務もある私の代わりにフィアと話したり、補助をしながら歩く練習をして、最近では外でお茶をする事もある。
フィアは暗い地下にいたからか暗がりや室内にじっとしている事が苦手だと分かった。
窓の無い部屋や地下空間には入る事は出来ないだろう。
だから天気の良い日は外に出たいと強請ってくれる。
今朝もそうだった。

「おはようジーク!ねぇ今日は天気が良いわ。」

「おはようフィア。今日も早起きだね!」

「ごめんなさいジーク…政務でお疲れなのに起こしちゃって…」

「フィアと眠ると疲れなんて無くなるから気にしないで大丈夫だよ!それより今日は本当に天気が良いね。朝食まで時間もあるから少し庭を散歩しようか?」

「いいの?ジークと外に出たかったの嬉しい!」

ー朝からフィアは可愛いすぎる…

侍女を呼びフィアの着替えを頼み、私も着替えをする。
準備が終わったフィアは私に腕を伸ばす。
まだ1人で歩けないフィアを抱き上げる。
私がいない時はこんな風にしないそうだから、きっと私に甘えてくれているのだろうと思うと素直に嬉しい。
私は庭に出るとフィアをおろす。
フィアは私の腕をしっかりと掴み短い距離だが自分の足で庭を歩く。
私もフィアが倒れないように支える。
他の人にはなんて事ない朝のひと時も私達にはかけがえのない時間だった。
そんな事を思い出す。

フィアは見つけた頃よりも顔色が良くなり、体つきもまだ折れてしまいそうな程細いがそれでも肉付きが良くなったと思う。
専属の侍女達はフィアよりも年上の女性にしたからか、フィアが可愛くて仕方ないと言っている。
お世話も楽しいと手入れにも力を入れているため髪艶も肌艶も良くなり出会った頃のキラキラと笑うフィアに…いやそれ以上に可愛くなってきていると思う。

ー本当に私を試しているとしか思えない。約束したから我慢はするが…私だって男だ。好きな女性を前に我慢し続けるのが辛いのは分かって欲しい…

そしてフィアが元気になる一方であの女の処遇を決める王国議会がもう直ぐ始まる。
フィアにはその事を知らせずにいた。
フィアからもその後どうなったか聞かれない。
カルディナ嬢は母親の影響だろう自身がフィアを虐げたという認識すらも持っていなかった。
彼女の処遇は修道院での奉仕活動に決まりそうだ。
後は彼女が自分のした事をどれだけ理解し、認め、向き合えるかでその期間と過酷さが変わる。
彼女もあの女達の被害者だと国王として理解はしているつもりだが、それでも私個人としては許す事はないだろう。

そして、今日はあの女とネイト宰相が会う。
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