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ヒロインには頼もしき防波堤がいる

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「ふんふんふふーん! どんでんどどーん!」

 結構怒られたけど、足音もちょっと軽やかに寮を出てこれたわね!
 因みにこの鼻歌は吟遊詩人が歌ってた流行りの歌をテキトーに覚えてアレンジしたものよ!
 行きつけの喫茶店でモーニングメニューも平らげた事だし!
 さて往かん、マダム・チャレーナのお店!

「……ねえ、お姉ちゃん。流石にヤバくない? あのオッサンから物貰うの」
「そ、そうかなあ」
「大体、滅茶苦茶歳離れてんのに幼馴染とかヤバくない?」

 ん? 後ろに居るのは姉妹かしら。
 小洒落……てもないわね。可愛らしい顔だけど田舎オーラが漂う姉妹だわ。
 しかしデカい声ね。田舎だとどうしても叫ばざるを得ないから声量だけ増えるのよね。掠れてガラガラになるのよ。

「昨日、ウチの商店にあのオッサンの婚約者来たらしいよ……。もう要らないから責任取ってお前んちで引き取れって」
「は? え……!? ひ、引き取れって……どーゆー事!?」
「どーすんの!? あんなショボ土産で、アタシがあのオッサンの嫁に行かなきゃならないとかマジ勘弁なんですけど!? 強請ってたお姉ちゃんが行きなよね!」
「い、嫌だよ!! 私には未だ……王子様が」

 ……ど、どっかで聞いた事あるシチュエーション!!
 う、後ろの姉の方……まさかヒロイン!? しかも攻略が上手く行ってないぽい!

 ……あんなトウモロコシヒゲ頭だっけ? ポニーテールが静電気で半分逆だって喫茶店の庇とくっつきそうな勢いだわ……。面白いな。
 最近乾燥してるもんなあ。髪油買って帰らなきゃ。
 ……しかし、酷い頭ね。夜会ごとに頭の色変えられるからデフォルト姿をすっかり忘れてたわ。
 髪染め粉も高価な割に、髪質ギシゴリになるのに……無茶しやがって。生身なんだからケアしないといけないのにね。

「うう、ジャージとこんなに親密度上がるなんて……迂闊だった……」

 ……あのジャージ氏、攻略対象だったの!!
 しかも、ペペリ嬢から棄てられている!! それは目出度いニュース! 今度出会えたらおめでとうを言わなきゃ!!

「いや、意味が分からな過ぎ。なにシンミツドって」
「隣国の皇子のジロータローとも夜会で中々出会えないし……」
「お姉ちゃん、アタシら下っ端貴族の出る夜会に隣の国の皇子が居る訳ないじゃん。何しに来んの?」

 ……妹ちゃん、正論だわ……。何というナイスマトモ思考! そうよ! 家族を救ってやって!
 妹ちゃんの言う通り他所の国の皇子なんて、普通は会えないのよ! この前仕事の出来る私が追い出したから! ヒロイン補正、只でさえでも効かない!

「え……何しにって……そりゃ、私と恋を」
「はあ? やめなよ、あの人混みでどうやってそんな高貴な人と会うの? いい歳して変な妄想してさあ。
 お目にかかれたとしても、こっちなんかボロ雑巾程度にしか見られないよ?」

 夜会、やっぱり人混みなんだ……。そしてリアリスト妹ちゃん最高だわ! 個人的に表彰して勲章を差し上げたいかも!

「ぼ、ボロ……? ええ……キリエも……何か見ないし……」
「はー? 誰それ。知り合い?」
「えっと、騎士で……ちょっとチャラいけど、付き合うとマトモになるの」

 攻略対象だし、あのキリエの事かしら……。アイツ、マトモになんのかしら。考えてみりゃ、実家から嫌われている女好き借金王なんて、間違いなくスリーアウト疫病神物件よね。もし引き受けるなら、ヒロインは心がドマゾ……心広すぎるわね。でもそんな献身しても、親戚に軒並み縁を切られそうだわ。やだ、キリエったら思い出しても最低ね!

「付き合うと? 何その妄想。騎士の知り合いなんてアタシらに居た?」
「い、一方的に知ってるんだけど」
「はあー? 会った事ない人と付き合う妄想とかヤバイよお姉ちゃん。偉い人がいる余所で言わないでね。変な事ばっか言うんだから! そんなんだから3日後の夜会に出せないってパパが言ってたよ」
「そ、そんなぁ!?」

 取り敢えずあのしっかりした妹ちゃんが居れば、危険な夜会はヒロインにとっては平和ね。
 ……しかし、あのジャージ氏が攻略対象だったとは……、意外や意外。

 ……そういや、夜会で荒ぶらせる予定の庶子様がたって誰なのかしら。
 ……攻略対象達だったりしてー!
 ……うわあ。
 ……ハズレて欲しいわぁ。ジャージ氏とキリエと皇子って似てなかったし!!
 ……ハズレてないなら、後ふたり居
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