10 / 30
蔑ろはどちらか
しおりを挟む
「兎に角あーだこーだと要領を得ないが、兎に角あの女が格上の婚約者で、お前は蔑ろにされてるって事だな」
「そ、そんな……事は」
「有るだろ」
まあ、話もそこそこに他人を突き飛ばして去るヤツだものね。婚約者への蔑ろがまっしぐらよね。
「……幼馴染が、来てからなんです。彼女がおかしくなったのは」
「幼馴染?」
「ええ、以前住んでいた所で仲良くなった姉妹なんですが……」
「まあ、姉妹……。その方達は可愛らしいのでしょうか?」
は? 何だかこのジャージ氏の顔が……脂下がるというか、デレデレしてないかしら?
……なーんだか、不穏な空気になってきたような……。本人全く気付いててないけど。元々、丁寧に見えて実は、空気読めない感じなのかしら?
「ええ、とても可愛いんです」
「御歳は?」
「見た所……貴女と同じ位です。可憐な娘達ですよ」
……え。乙女ルーキア、只今御歳19歳なんだけど。
このジャージ氏、どー見ても三十路前に見えるわね。それ、どういう関係の幼馴染なのかしら。歳の差デカくね?
そんな差の子供が、仲良く友情を育み幼馴染付き合い出来るものなの? 偏見だけど、キモい方面でなく?
……まあ、ジジババがメインな我が領地生まれの私は、そんな歳の差すら幼馴染は居ないけどさ。
「可愛くてね。街を案内してあげた先月は小さいアクセサリーを。
先日もレースのリボンをあげて、目を輝かせて喜んでくれて……。本当に可愛いんですよ」
……な、何を言ってるのかしら、この人。
婚約者を差し置いて、若い女の子ふたりを侍らせてプレゼントを与える? それも何回も連れ歩いて?
……やだ、同情して損したわ。ぶつかられた事は腹が立つけど、そりゃ……。そんなのを目の当たりにして先月から? ペペリ嬢も自棄も起こすでしょうよ。
「そりゃ、あのお嬢さんは普通にキレますわよ」
「そうだね、自業自得だったか」
「え? え?」
「時間を無駄にしましたわ……」
「ルーキア、さっさと飲んで。君だけのコーヒーは持つよ」
「えっ、え?」
「まあ本当ですの!? ティ……ご子息様!!」
いっけない、素敵なお店の素敵コーヒー奢りの嬉しさでティナー侯爵令息の身分を道端でバラす所だったわ。
そういう気遣い大事なのよ、木っ端貴族だもの。
「ミシーでいいよ、ルーキア。さあ戻ろう。明日から宜しく」
「えっ……」
わ、忘れられていなかったわ。明日から門番業務……。うう! あのジャージ氏インパクトで軽やかに忘れていて欲しかったのに!!
「あ、あの! ど、どうされたんですか?」
「どうされたもこうされたもない」
「あの、御自身の交友関係を見直された方が宜しいですわ」
「交友関係!? どういう事ですか!?」
……駄目だわこりゃ。このジャージ眼鏡……。この、なーんにも非が有りませんけど? 急に怒り出して怖! みたいなリアクション!
何にも! 何っにも!! ペペリ嬢のことも! 解ってやしないわ。
「紳士らしく為さることです。では、失礼」
……う、ううむ。ティナー侯爵令息様は……笑い方が悪どいのに、美しい……。
そんな場合じゃないのに。つ、つい見惚れてしまったわ。
よく考えたら、要らん口を挟んだ上に不埒な野郎の味方をするところだったのね。
……危ない所だったわ。騎士団所属なのに、これ以上のスキャンダルは我が家の為にも困るのよ。
しっかし、旧知とはいえ若い娘にデレデレする不埒な野郎をサッサと見限るべきよね。ペペリ嬢ったら思いきれないのかしら。
準男爵パワーなら、貴族はダメでも平民にはよく圧力効くだろうし。未だ、ジャージ氏に心が残ってしまって、悲しくて怒ってるのかもしれないわね。
いい事をした……訳ではないけど、理不尽に手を貸さなくて本当に良かった。
……私も、理不尽が払える圧倒的パワーが欲しいわ……。
「明日から来いよ、ルーキア」
「承りました……」
うう、やっぱり行かなきゃならないのね……。
イケメンに呼び捨てにされていると言うシチュエーションでも、実に嬉しくないわ……。
「そ、そんな……事は」
「有るだろ」
まあ、話もそこそこに他人を突き飛ばして去るヤツだものね。婚約者への蔑ろがまっしぐらよね。
「……幼馴染が、来てからなんです。彼女がおかしくなったのは」
「幼馴染?」
「ええ、以前住んでいた所で仲良くなった姉妹なんですが……」
「まあ、姉妹……。その方達は可愛らしいのでしょうか?」
は? 何だかこのジャージ氏の顔が……脂下がるというか、デレデレしてないかしら?
……なーんだか、不穏な空気になってきたような……。本人全く気付いててないけど。元々、丁寧に見えて実は、空気読めない感じなのかしら?
「ええ、とても可愛いんです」
「御歳は?」
「見た所……貴女と同じ位です。可憐な娘達ですよ」
……え。乙女ルーキア、只今御歳19歳なんだけど。
このジャージ氏、どー見ても三十路前に見えるわね。それ、どういう関係の幼馴染なのかしら。歳の差デカくね?
そんな差の子供が、仲良く友情を育み幼馴染付き合い出来るものなの? 偏見だけど、キモい方面でなく?
……まあ、ジジババがメインな我が領地生まれの私は、そんな歳の差すら幼馴染は居ないけどさ。
「可愛くてね。街を案内してあげた先月は小さいアクセサリーを。
先日もレースのリボンをあげて、目を輝かせて喜んでくれて……。本当に可愛いんですよ」
……な、何を言ってるのかしら、この人。
婚約者を差し置いて、若い女の子ふたりを侍らせてプレゼントを与える? それも何回も連れ歩いて?
……やだ、同情して損したわ。ぶつかられた事は腹が立つけど、そりゃ……。そんなのを目の当たりにして先月から? ペペリ嬢も自棄も起こすでしょうよ。
「そりゃ、あのお嬢さんは普通にキレますわよ」
「そうだね、自業自得だったか」
「え? え?」
「時間を無駄にしましたわ……」
「ルーキア、さっさと飲んで。君だけのコーヒーは持つよ」
「えっ、え?」
「まあ本当ですの!? ティ……ご子息様!!」
いっけない、素敵なお店の素敵コーヒー奢りの嬉しさでティナー侯爵令息の身分を道端でバラす所だったわ。
そういう気遣い大事なのよ、木っ端貴族だもの。
「ミシーでいいよ、ルーキア。さあ戻ろう。明日から宜しく」
「えっ……」
わ、忘れられていなかったわ。明日から門番業務……。うう! あのジャージ氏インパクトで軽やかに忘れていて欲しかったのに!!
「あ、あの! ど、どうされたんですか?」
「どうされたもこうされたもない」
「あの、御自身の交友関係を見直された方が宜しいですわ」
「交友関係!? どういう事ですか!?」
……駄目だわこりゃ。このジャージ眼鏡……。この、なーんにも非が有りませんけど? 急に怒り出して怖! みたいなリアクション!
何にも! 何っにも!! ペペリ嬢のことも! 解ってやしないわ。
「紳士らしく為さることです。では、失礼」
……う、ううむ。ティナー侯爵令息様は……笑い方が悪どいのに、美しい……。
そんな場合じゃないのに。つ、つい見惚れてしまったわ。
よく考えたら、要らん口を挟んだ上に不埒な野郎の味方をするところだったのね。
……危ない所だったわ。騎士団所属なのに、これ以上のスキャンダルは我が家の為にも困るのよ。
しっかし、旧知とはいえ若い娘にデレデレする不埒な野郎をサッサと見限るべきよね。ペペリ嬢ったら思いきれないのかしら。
準男爵パワーなら、貴族はダメでも平民にはよく圧力効くだろうし。未だ、ジャージ氏に心が残ってしまって、悲しくて怒ってるのかもしれないわね。
いい事をした……訳ではないけど、理不尽に手を貸さなくて本当に良かった。
……私も、理不尽が払える圧倒的パワーが欲しいわ……。
「明日から来いよ、ルーキア」
「承りました……」
うう、やっぱり行かなきゃならないのね……。
イケメンに呼び捨てにされていると言うシチュエーションでも、実に嬉しくないわ……。
4
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
完 モブ専転生悪役令嬢は婚約を破棄したい!!
水鳥楓椛
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、ベアトリス・ブラックウェルに転生したのは、なんと前世モブ専の女子高生だった!?
「イケメン断絶!!優男断絶!!キザなクソボケも断絶!!来い!平々凡々なモブ顔男!!」
天才で天災な破天荒主人公は、転生ヒロインと協力して、イケメン婚約者と婚約破棄を目指す!!
「さあこい!攻略対象!!婚約破棄してやるわー!!」
~~~これは、王子を誤って攻略してしまったことに気がついていない、モブ専転生悪役令嬢が、諦めて王子のものになるまでのお話であり、王子が最オシ転生ヒロインとモブ専悪役令嬢が一生懸命共同前線を張って見事に敗北する、そんなお話でもある。~~~
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される
未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」
目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。
冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。
だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし!
大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。
断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。
しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。
乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる