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お出かけはトラブル巻き込まれ系

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「ふぬぬ……」

 彼を知り己を知らんずば百戦危うからず……。
 敵を知るべきなのよね。
 ……情報を集めないと!! 
 まあ、一応護衛門番? とやらをやりに行くから味方? いや、でもきっとアウェイだしなあ。諸手を挙げて門番を歓迎!! なんて、無いでしょうし。……普通、若い娘って……行儀見習いではないのかしらね。メイド的な……人様の面倒を見れる繊細さが必要よね。……ちょっと自信有るけど、見せる機会が無いから残念だわ。

「ふぐう……」

 だから、敵を知らねばならないの!
 ティナー侯爵家の秘密を、いざ!
 仕事仕事で、オマケに勤め先が男の園の騎士団で。女の子の友達とか……特に作れなかったもんだから噂には人一倍疎いの。
 特に情報通にコネのない木端貴族だから……新聞を漁りに行かねばならないわ。
 狙いはお固い新聞とゴシップ誌よ。二極化に絞って参考にしなきゃ。

「あの唸ってる赤煉瓦色の髪は……ジョーサイド一族か」
「ああ、あの……ジョーサイド伯爵家の」
「あー、あの。あの呼吸法……気合いか? 怖」

 うう、図書館へ行こうと思ったら……この道あんまり通らないから目立ってるなあ。
 通行人の噂になっているわ。
 しかも、あんまり良いリアクションじゃないのよね……。

 ご先祖(曾曾御祖父様らしいわ)が勇猛果敢で豪放磊落……。つまり、強いけどいい加減な金遣い荒いどんぶり勘定大迷惑野郎だったらしくて、都会でやりたい放題してたら、ツケが嵩んで疎まれたの……。そりゃそうよね。

 それで、罰として、お金を使いようがない閑散とした僻地に追いやられたと言うのが始まりだっけ……。うう、情けない。
 因みに、ムサくて女性ウケしなかったそうだから非モテだったそうなのが救いかしら……。
 いや、それでもギャンブル癖は駄目よねえ。

 で、領地で地味にやるしかなくてね。その息子である曾御祖父様がせっせとイメージアップに励んだ結果、伯父様が王都で騎士をやれるまでに何とか信頼回復したの。
 で、因みに伯父様はジョーサイド伯爵の地位を頂き、次男の父が領地を預かる家令的なジョーサイド男爵を継いだわ。
 ……ややこしいわね。兎に角ジョーサイド一族で一括りにされてるから、それでいいけど。

 兎に角、我が一族はフレンドリーな空気を出して、規律正しく生活してるのよ。私も確かその一環で、王都に出稼ぎに来てるんだもの。
 あのド田舎に居たら、碌でもないのと縁続きになりかねないってのもあるし……。

 でも、王都のインテリ系貴族の中ではまだ我がジョーサイドに野蛮DQNイメージが強いと言うか……。避けて通られてるのよね。騎士団ではそんな事ないんだけど……。
 この髪が目立つからかしら。

 私の髪は……赤毛のようで……赤いけど……赤煉瓦とは言われているけど、赤毛とはちょっと違うのよ。個人的には。
 単体なら兎も角、このオレンジぽい濃い黄色の目と赤紫の髪は……合わせると……。

 気付いてしまったの。
 焼き芋カラーなのよねえ。

 赤は赤でも、紫……。薩摩芋の皮のアントシアニン色素が混じってるカラーなのよ。
 ジョーサイド一族って、何故か軒並みこのカラーリングなのよねえ。
 馬鈴薯ぽい芋が広まってて、薩摩芋がこの世界では有名じゃなかったのが救いだわ。有るのかしら。有ったら、芋っぽさが世間に知れ渡ってしまう……!! どうか、薩摩芋自体は大好きだから別の色で存在していて!!

 ……ああ、生まれも育ちも田舎だけど、どうして私って見た目も芯からも芋っぽいの……。今日の服(セール品)も芋色だし……。
 何というか、本当にダサいしイモいわ……。

「何だアイツ、邪魔だな」

 うっ、立ち尽くしてたせいで余計目立ってしまった!! 凹んでないで早く図書館へ入りましょう。今日の私は、職務の為情報を集める優良事務官……。

「待ってください、それは……」
「煩いのよ!! どうして着いてくるの!? 私の事なんてどうでもいいんでしょ!? 放っておいて!!」

 ……う、煩いわね。折角インテリ事務官顔で切なくキメてたのに。
 何の痴話喧嘩なのかしら。他所でやって欲しいわ。

「どうでもいいなんて、そんな……。お父様が悲しまれますよ」
「お父様!? そうよね!? 結局、家が大事なんでしょう!! 」
「お嬢様……!?」
「うおふっ!」

 えっ、ちょっと!? あの女、何でこっちに走ってくるのよ!?

「痛い!! 前を見て歩きなさいよ!!」
「はあ!? ぶつかって来たのそっちでしょ!!」

 何なのよこの女!! ぶつかってきたのそっちよね!? 滅茶苦茶酷い言いがかりだわ!! 私の山歩きでちょっぴり鍛えた足腰が無ければ、軽く吹っ飛んでいたのに!!

「す、すみません、本当に! お嬢様が……」
「いいえ、貴方が謝ることなんて無いわ!! 
 ちょっと! 己で落とし前を……居ない!!」
「お嬢様は足が速くて……」

 逃げたですって!? 何なのよ!? 滅茶苦茶腹立つ女ね!! 最悪だわ!!

「そもそも、迷惑を掛けておいて家の人に謝らせるなんて最低ですわよ!!」
「いえ、厳密には形ばかりの婚約者で……」
「形が有るなら大事にすべきでしょうが!! 腹立つわ……」
「何してんの」
「ウヒィ!? アドドド!? タ!!」
「は? 何語?」

 悪役令息ターゲット発見!! いえ、護衛対象!?
 どうして!? どうしてこんな街中の図書館に出没するの!?

「ルーキア・ジョーサイド男爵令嬢だろ? そっちは……カイダシ新聞社の次男じゃないか」
「……何故どうして、此方に……」
「此処は公共の図書館だけど?」
「そそそ、そうですが……」

 此処、新聞コーナーよ!? 侯爵家おかねもちなら、各新聞朝昼晩持ってこさせてるんでは!?
 あ、昼は新聞来ないかー。うっかり!
 じゃなくてー!!

「また色々巻き込まれてるみたいだな」
「あの、お知り合いですか?」
「いえ全然お知り合いでは!! ねえ!?」
「はい……」
「暇だし、何が有ったのか聞かせろよ」

 ……な、何故こうなるの……。
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