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門番兼護衛業務はご遠慮したい

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「……」

 ああ、ドえらい事になってしまったわ。
 あの後……何故か兵士長が騎士団長と連れ立って帰ってきてね。騎士団長なんて、滅多に事務室なんかに寄らないのに!!

「せ、……ティナー侯爵令息、どどど……」
「第三の団長? このご令嬢をウチの門番に貸してください。明後日から」

 ……ハイかイエスか畏まりました! そうでない答えは聞いてない! みたいなノリでね。
 靴音も軽やか優雅な足取りで、立ち去ってしまわれたのよ。

 ……アイツさあ、絶対ゲームの悪役令息じゃない!? 絶対そうよ!! 今、私が決めた!! 何の役割なのか知らないけど絶対悪い奴!! と腸煮えくり返ってたの。

 でもね、下級貴族わたしたちは階級社会の下だから、高位貴族おえらいさんに逆らえないじゃない? 縦社会で下っ端に発言力は無いの。上の言う事は絶対なのよ。
 だから、我らが騎士団長てもちのおえらいさんにお縋りするしか無かった訳なの。サメザメとシクシクとね。

 大体さあ、書類の締切で何度も苦しめて来られたんだし? 団の長たる者、無力な事務官を守る義務が有るわよね。行けっ! 戦え団長!!

「はあ……」

 そうよね、気が乗らないとしても!! 溜め息を吐かれるお気持ちも分かるわ!! あの人、押しが強すぎたものね!!

「……行ってくれ、ジョーサイド嬢」

 諦 め が 早 い!!
 交渉しろよ!! せめて!! 抗う姿勢を!!

「わ、私……意味が分からなくて!! 知らない殿方に(門番を)無理強いされて怖かったんです!」
「気の毒な事だとは思う。だが! 彼にその逞しい実力を見初められてはもう無理だ」

 待て、誰が逞しいんだコラ。こんなに小刻みに震えて悲しんで怯えてる私に、何ちゅう言いがかりなのよ。

「先日の話は聞いた。やはり、あの跳ね返しジョーサイドの血は争えないな」

 伯父様のダサい二つ名を私にまで当て嵌めるの、マジ止めて欲しいわ……。
 何なのよ、跳ね返しって。トランポリンなの? 此処に有るの? 存在するの!?
 でも、そこに突っ込んでる場合じゃないわ! もっと、か弱く弱者らしく抗議しなきゃ!! どうしたら良いの!? あっ、ヒロインのマネしたらいい!?

「酷いっ!! 伯父様が異色なだけですっ!! 私、か弱いんですから!!」
「……団長、もうその辺で。貴方は滅多に来ないからいいでしょうが……。もっと彼女に寄り添うお考えを」
「兵士長……」

 兵士長……? その、なーんだか引っ掛かる言い方なのは何故なのかしら。
 庇ってくれてるから突っ込まないけどさ。

「業務命令だ。ジョーサイド事務官、ティナー侯爵令息の護衛を命じる!」

 お、横暴だーーー!!
 さっきの話は、私の訴えは! 丸ごと無視!? 酷い、酷すぎるわ!!

「ぎょっ……!? お待ちくださいませ! 門番は、護衛では有りませんわよ!?」
「そんな事は分かっている!! 正直意味不明で鬱陶しい。だが、従わざるを得ないのだ!! 彼の望みはあの日から大体叶えられる!!」
「なっ……」

 何でなのよ。
 彼は、王族でも無いのに……。いや、王族でも望みは大体叶わないわよね。
 ゲームの中でも、確か……薄っぺらい会話の中から小刻みにスケジュール通りに動いてたらしいもの。
 窮屈極まりない生活で、変えようがないらしいけど……何を話してたんだっけ? 全て薄かったからなー。

 あれ?そもそも……ヒロインは、誰と……どの王子殿下と会話してたのかしら? 誰が攻略対象なの?
 第一王子殿下およつぎさまは、婚約者の公爵令嬢様とセットで一段上のセレブな場所にお出でで、そもそも夜会で立ち話なんざなさらない。高みの見物だと聞いたわ。
 第二王子殿下スペアさまは王妃様のご実家筋の公爵家を継がれるらしいから、そもそも王都に居られないし。……他のお子様は軒並み王女殿下よね。

 考えれば考える程、ミステリー……。
 ヒロインたら、マジで誰と話してたのかしら。まさか詐欺師? オレオレ王子? 勘違い野郎?
 情報不足スタートの新興貴族だし、詐欺の件が濃厚ぽくて、有り得るわね……。

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