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椎名薫 ー美紀 sideー
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ファンって恐ろしい。
そう思うには充分で。
今日の朝は輝がどうしても一緒に行くと五月蝿かったから仕方なく一緒に登校した。
下駄箱に行くと輝ファンクラブの人たちが私と輝を取り囲んで質問攻め。
「王子はその子とどういう関係なの!?」
「もしかして、付き合ってるの!?」
「王子はみんなのものなのに!」
唖然とするしかなかった私たちはどれも答えられない。
それでも輝は私をさりげなく庇ってくれて。
「俺に質問すればいいだけの話だろ。ミキには関係ない。そこを開けろ」
でも、関係ないと言われたことが悲しくて。
道が出来ても私は動こうとしなかった。
「ミキ?先に教室に……」
「嫌!輝はいつもそうだよ!こういうときだけ私には関係ないって……」
「だ、だってミキに迷惑はかけたくないし……」
「迷惑ならいつもかけられてるわよ!もうこれくらいじゃ迷惑の内にも入らないわ!」
「な、なんかごめんなさい……」
そんな状況を見ていたファンクラブの人たちが口を挟む。
「王子にそんな言い方!」
「王子に謝らせるなんて!」
「偉そうにしてんじゃないわよ!」
そう言われ手を上げられそうになったのを輝が止める。
「いい加減にしろよ?昨日の奴らじゃないから黙ってたけど次ミキに手を出してみろ?別の奴らだろうが女だろうがただじゃおかないからな?」
今まで聞いたことのない低い声で輝がそう言うとファンクラブの人たちは慌てて立ち去った。
「あ、輝……今のはちょっと言い過ぎなんじゃ……?」
「……そうかも。もし、またミキが呼び出されるようなことがあれば俺はもうミキの傍に近付かないから安心していいよ?」
「え……?」
「ほら、早く教室に行こう?」
「ち、ちょっと待って!なんで輝が呼び出されたこと知ってるの!?」
「ちょっと偶然立ち聞きしちゃって……でも、ミキが言ってくれた言葉全部嬉しかったよ」
「全部!?最初から聞いてたの!?」
「あー……うん、そうみたい」
どうしよう。
恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「ミキ?」
「……忘れて!今すぐ全部!今のことも!」
「え?突然どうしたの?」
「いいから!忘れて!」
輝はクスクス笑い出す。
「やだ。忘れてあげない。言いたいことを全部言うミキも恥ずかしがってるミキも全部俺だけのものだから」
「は?どういう意味?輝のものになった覚えないわよ」
「今はねー?いつか俺のことも俺がミキを想ってるくらいにさせてみせるよ」
「ちょっと輝。頭大丈夫?精神科病院にでも行ってきたら?」
「ミキ、流石にそれは傷付くから。俺は至って正常だよ」
「そう?ついに頭のネジが全部ぶっ飛んだんだと思ったわ」
「……もう、ミキは本当に口が悪いね」
「正直者って言ってくれる?それより、早く教室行かないと朝のHRに間に合わないわよ」
「そうだね。ミキ、今日は一緒に帰ろう?」
「え?どうして?」
「念のため。またミキが文句言われると嫌だし」
輝が本当に心配そうに言うのでため息を吐いた。
「……しょうがないわね。その代わり、今日は教室に来ないでよ。私が輝の教室に行くから」
私がそう言うと輝はぱぁっと顔を明るくしてわかった!と笑顔になって思わず顔を赤くした私は慌てて顔を背けた。
「ミキ?」
「な、なんでもないわ!早く行くわよ!」
その顔は反則……っ!
私以外に見せないでほしいと思うこの独占欲は多分、きっと……そ、そう!
家族になったからよ!
それしか考えられない!
決して輝に告白紛いなことを言われたからじゃないわ!
そう必死に自分に言い聞かせながら輝に顔を見られないようにしながら歩く。
私が教室の扉に手をかけると輝が口を開く。
「それじゃあ、ミキ、待ってるから!授業頑張って!」
それだけ言うと輝は自分の教室に向かう。
輝が教室に入ろうとしてるところで目が合って手を振られた。
私はふいっと顔を背け自分の教室に入る。
そのまま、ズカズカと自分の席に座った。
「おはよう!みのりん!今日は朝からご機嫌だね?何か良いことでもあったの?」
「えっ!?私、そんな顔してる!?」
「え?うん、嬉しそうな顔して入ってきたけど……」
薫にそう言われて机に突っ伏した。
「えっ!?みのりん!?ボク、何か気に障るようなこと言った!?」
「……気にしないで。ちょっと恥ずかしいだけだから」
まさか知り合って一週間も経たない薫に表情を読み取られるとは思っていなくて。
私はどちらかと言うと表情はあまり表に出ないタイプだと思っていたからなおさら恥ずかしい。
私の些細な変化に気付くのは輝だけだと思っていたのに……
って!
輝が特別みたいな言い方何なの!?
今日の私、絶対おかしい!
きっと家族になったから!
そう!
だから、自然と輝を特別扱いしてるんだわ!
それ以外考えられない!
「そ、そっか……あ、そう言えば、昨日大丈夫だった?」
「え?」
「ほら、輝くんのファンクラブの人たちに呼び出されてたから。今日とか変なことされてない?」
え?
どうして薫がそのことを知ってるの……?
「えっと……薫、昨日は用事があって先に帰ったんじゃ……?」
「え?用事はあったけど先には帰ってないよー」
「え?じゃあ、用事って何だったの……?」
言ってから後悔した。
なんでこんなこと聞いてるんだろう……
嫌な予感が頭をよぎる。
まさか、薫……
「気になるの?いいよ。みのりんになら教えてあげても」
聞いちゃ駄目だ
頭の中ではそう思ってるのに……
私の口からは言ってはいけない言葉が出た。
「うん、教えて?」
「みのりん、素直だねー!あのね、昨日は輝くんと一緒にいたんだ」
「そう、なんだ……」
嫌な予感は的中して。
なんで輝と一緒にいたの?
薫は……
「……輝のこと、どう思ってるの?」
口に出してハッとした。
薫は少し唖然とした後、ニコッと笑いながら口を開いた
「そう言うみのりんは輝くんのことどう思ってるの?」
「え……?」
予想外の質問で思わず聞き返す。
「だーかーらー!みのりんは輝くんのことどう思ってるの?」
「どうって……」
輝は正しい名前は呼んでくれない鬱陶しいだけの幼馴染で。
私がどんなに罵倒しようと多少の文句は言ってたけど笑って聞き流して。
いつでも必ず私の傍にいてくれた。
「……分からないよ」
いつもの私ならただの幼馴染って答えるのに……
「わからないの?」
輝が告白紛いなこと言うから!
だから、今日の私は変なんだ!
「ねぇ、みのりん。私は輝くんのことが憎いくらい好きだよ」
「え?今、なんて……」
わたし?
好き?
誰が誰を……?
「だからね?みのりんが輝くんを好きだって言ってもみのりんにだけは輝くんを渡す気はないから」
何を言われてるのか分からない。
「……みのりん。本当に輝くんをどう思ってるのかわからないの?」
「……分かんないよっ!」
だって、一緒に居るのが当たり前だったんだ!
なのに、どうして今ここに輝はいないの!?
「ボクに取られるかもって思って今にも泣きそうな顔してるのに?」
薫がそう言った瞬間、担任が入ってきた。
私は慌てて前を向く。
薫は小声で囁いた。
「ボク、輝くんと一緒に帰るから邪魔しないでね?」
それからの私は授業に身が入らずただ茫然とそこにいるだけだった。
授業以外もどうやって過ごしたかは曖昧で。
気付いたら放課後だった。
「ミキ?」
名前を呼ばれてハッとなる。
「あ、輝!?な、なんで!?」
「え?あぁ、いつまで待ってもミキが来ないからどうしたのかなって。待てなくて来ちゃった」
輝はごめんと言いながら笑う。
私は辺りを見回す。
教室にはもう誰もいなくて。
残ってる生徒と言ったら部活をしている生徒くらいだ。
自分が情けなくなってくる。
薫の鞄は残ってることに気付いた。
「み、ミキ?どうしたの?具合でも悪い?」
私に優しくしないで。
輝には薫がいるでしょう?
誰にでも優しいから私の心配をしてくれただけなんだ。
あの言葉にもやっぱり深い意味はなくて。
もし、深い意味があったとしてもそれは家族としてと言う意味で……
それが、そう思われるのがこんなに悲しいなんて。
こんな感情、私、知らない。
「輝」
「ん?」
「私より優先しなきゃいけない相手がいるんじゃないの?」
「え?」
「輝には恋人がいるでしょう?」
「な、何言ってるの?恋人なんかいないよ!」
「……そう言って、今まで何人も女と付き合ってきたんでしょ?」
「っ!」
「私を他の女と同じにしないで!」
そう言って私は教室から駆け出すと薫がいた。
薫はありがとうと言わんばかりの顔で手を振ってきて。
それを見てないフリをしながら全力でその場を後にした――――
そう思うには充分で。
今日の朝は輝がどうしても一緒に行くと五月蝿かったから仕方なく一緒に登校した。
下駄箱に行くと輝ファンクラブの人たちが私と輝を取り囲んで質問攻め。
「王子はその子とどういう関係なの!?」
「もしかして、付き合ってるの!?」
「王子はみんなのものなのに!」
唖然とするしかなかった私たちはどれも答えられない。
それでも輝は私をさりげなく庇ってくれて。
「俺に質問すればいいだけの話だろ。ミキには関係ない。そこを開けろ」
でも、関係ないと言われたことが悲しくて。
道が出来ても私は動こうとしなかった。
「ミキ?先に教室に……」
「嫌!輝はいつもそうだよ!こういうときだけ私には関係ないって……」
「だ、だってミキに迷惑はかけたくないし……」
「迷惑ならいつもかけられてるわよ!もうこれくらいじゃ迷惑の内にも入らないわ!」
「な、なんかごめんなさい……」
そんな状況を見ていたファンクラブの人たちが口を挟む。
「王子にそんな言い方!」
「王子に謝らせるなんて!」
「偉そうにしてんじゃないわよ!」
そう言われ手を上げられそうになったのを輝が止める。
「いい加減にしろよ?昨日の奴らじゃないから黙ってたけど次ミキに手を出してみろ?別の奴らだろうが女だろうがただじゃおかないからな?」
今まで聞いたことのない低い声で輝がそう言うとファンクラブの人たちは慌てて立ち去った。
「あ、輝……今のはちょっと言い過ぎなんじゃ……?」
「……そうかも。もし、またミキが呼び出されるようなことがあれば俺はもうミキの傍に近付かないから安心していいよ?」
「え……?」
「ほら、早く教室に行こう?」
「ち、ちょっと待って!なんで輝が呼び出されたこと知ってるの!?」
「ちょっと偶然立ち聞きしちゃって……でも、ミキが言ってくれた言葉全部嬉しかったよ」
「全部!?最初から聞いてたの!?」
「あー……うん、そうみたい」
どうしよう。
恥ずかしくて穴があったら入りたい。
「ミキ?」
「……忘れて!今すぐ全部!今のことも!」
「え?突然どうしたの?」
「いいから!忘れて!」
輝はクスクス笑い出す。
「やだ。忘れてあげない。言いたいことを全部言うミキも恥ずかしがってるミキも全部俺だけのものだから」
「は?どういう意味?輝のものになった覚えないわよ」
「今はねー?いつか俺のことも俺がミキを想ってるくらいにさせてみせるよ」
「ちょっと輝。頭大丈夫?精神科病院にでも行ってきたら?」
「ミキ、流石にそれは傷付くから。俺は至って正常だよ」
「そう?ついに頭のネジが全部ぶっ飛んだんだと思ったわ」
「……もう、ミキは本当に口が悪いね」
「正直者って言ってくれる?それより、早く教室行かないと朝のHRに間に合わないわよ」
「そうだね。ミキ、今日は一緒に帰ろう?」
「え?どうして?」
「念のため。またミキが文句言われると嫌だし」
輝が本当に心配そうに言うのでため息を吐いた。
「……しょうがないわね。その代わり、今日は教室に来ないでよ。私が輝の教室に行くから」
私がそう言うと輝はぱぁっと顔を明るくしてわかった!と笑顔になって思わず顔を赤くした私は慌てて顔を背けた。
「ミキ?」
「な、なんでもないわ!早く行くわよ!」
その顔は反則……っ!
私以外に見せないでほしいと思うこの独占欲は多分、きっと……そ、そう!
家族になったからよ!
それしか考えられない!
決して輝に告白紛いなことを言われたからじゃないわ!
そう必死に自分に言い聞かせながら輝に顔を見られないようにしながら歩く。
私が教室の扉に手をかけると輝が口を開く。
「それじゃあ、ミキ、待ってるから!授業頑張って!」
それだけ言うと輝は自分の教室に向かう。
輝が教室に入ろうとしてるところで目が合って手を振られた。
私はふいっと顔を背け自分の教室に入る。
そのまま、ズカズカと自分の席に座った。
「おはよう!みのりん!今日は朝からご機嫌だね?何か良いことでもあったの?」
「えっ!?私、そんな顔してる!?」
「え?うん、嬉しそうな顔して入ってきたけど……」
薫にそう言われて机に突っ伏した。
「えっ!?みのりん!?ボク、何か気に障るようなこと言った!?」
「……気にしないで。ちょっと恥ずかしいだけだから」
まさか知り合って一週間も経たない薫に表情を読み取られるとは思っていなくて。
私はどちらかと言うと表情はあまり表に出ないタイプだと思っていたからなおさら恥ずかしい。
私の些細な変化に気付くのは輝だけだと思っていたのに……
って!
輝が特別みたいな言い方何なの!?
今日の私、絶対おかしい!
きっと家族になったから!
そう!
だから、自然と輝を特別扱いしてるんだわ!
それ以外考えられない!
「そ、そっか……あ、そう言えば、昨日大丈夫だった?」
「え?」
「ほら、輝くんのファンクラブの人たちに呼び出されてたから。今日とか変なことされてない?」
え?
どうして薫がそのことを知ってるの……?
「えっと……薫、昨日は用事があって先に帰ったんじゃ……?」
「え?用事はあったけど先には帰ってないよー」
「え?じゃあ、用事って何だったの……?」
言ってから後悔した。
なんでこんなこと聞いてるんだろう……
嫌な予感が頭をよぎる。
まさか、薫……
「気になるの?いいよ。みのりんになら教えてあげても」
聞いちゃ駄目だ
頭の中ではそう思ってるのに……
私の口からは言ってはいけない言葉が出た。
「うん、教えて?」
「みのりん、素直だねー!あのね、昨日は輝くんと一緒にいたんだ」
「そう、なんだ……」
嫌な予感は的中して。
なんで輝と一緒にいたの?
薫は……
「……輝のこと、どう思ってるの?」
口に出してハッとした。
薫は少し唖然とした後、ニコッと笑いながら口を開いた
「そう言うみのりんは輝くんのことどう思ってるの?」
「え……?」
予想外の質問で思わず聞き返す。
「だーかーらー!みのりんは輝くんのことどう思ってるの?」
「どうって……」
輝は正しい名前は呼んでくれない鬱陶しいだけの幼馴染で。
私がどんなに罵倒しようと多少の文句は言ってたけど笑って聞き流して。
いつでも必ず私の傍にいてくれた。
「……分からないよ」
いつもの私ならただの幼馴染って答えるのに……
「わからないの?」
輝が告白紛いなこと言うから!
だから、今日の私は変なんだ!
「ねぇ、みのりん。私は輝くんのことが憎いくらい好きだよ」
「え?今、なんて……」
わたし?
好き?
誰が誰を……?
「だからね?みのりんが輝くんを好きだって言ってもみのりんにだけは輝くんを渡す気はないから」
何を言われてるのか分からない。
「……みのりん。本当に輝くんをどう思ってるのかわからないの?」
「……分かんないよっ!」
だって、一緒に居るのが当たり前だったんだ!
なのに、どうして今ここに輝はいないの!?
「ボクに取られるかもって思って今にも泣きそうな顔してるのに?」
薫がそう言った瞬間、担任が入ってきた。
私は慌てて前を向く。
薫は小声で囁いた。
「ボク、輝くんと一緒に帰るから邪魔しないでね?」
それからの私は授業に身が入らずただ茫然とそこにいるだけだった。
授業以外もどうやって過ごしたかは曖昧で。
気付いたら放課後だった。
「ミキ?」
名前を呼ばれてハッとなる。
「あ、輝!?な、なんで!?」
「え?あぁ、いつまで待ってもミキが来ないからどうしたのかなって。待てなくて来ちゃった」
輝はごめんと言いながら笑う。
私は辺りを見回す。
教室にはもう誰もいなくて。
残ってる生徒と言ったら部活をしている生徒くらいだ。
自分が情けなくなってくる。
薫の鞄は残ってることに気付いた。
「み、ミキ?どうしたの?具合でも悪い?」
私に優しくしないで。
輝には薫がいるでしょう?
誰にでも優しいから私の心配をしてくれただけなんだ。
あの言葉にもやっぱり深い意味はなくて。
もし、深い意味があったとしてもそれは家族としてと言う意味で……
それが、そう思われるのがこんなに悲しいなんて。
こんな感情、私、知らない。
「輝」
「ん?」
「私より優先しなきゃいけない相手がいるんじゃないの?」
「え?」
「輝には恋人がいるでしょう?」
「な、何言ってるの?恋人なんかいないよ!」
「……そう言って、今まで何人も女と付き合ってきたんでしょ?」
「っ!」
「私を他の女と同じにしないで!」
そう言って私は教室から駆け出すと薫がいた。
薫はありがとうと言わんばかりの顔で手を振ってきて。
それを見てないフリをしながら全力でその場を後にした――――
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