魔法学園問題児科

蓮ヶ崎 漣

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問題児様、やらかす

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 あれから早くも一年が過ぎた。

桜は相変わらず成績トップをキープしていた。

菫はなんと三位をキープしている。

楓は十位以内をキープしていて全体的にみんな成績は上がった。

私はと言うとなんと!

二位をキープしている!

つまり、桜の次に成績がいい。

入学当時は自分がこんな成績とキープするどころか取れることすら信じていなかった。

これも先生や桃ちゃん、桜たちのお陰だと思っている。

先生からもらった私たち専用の魔力封じは楓が初日に壊して以降未だに誰も壊れていない。

そのお陰で魔力を制御するコツを掴んだ。

魔法の威力も制御出来るようになった。

たぶんもう魔力封じを使わなくても制御出来るだろう。

そう思い私たちは先生の許可なく魔力封じを外して実践練習のため、校庭に出た。

その日は私たちが校庭を使うと言うことで他の生徒は教室で私たちの実践練習を見学することになっていた。

みんなそれぞれ隠れて先生の合図で練習開始。

そこで事件が起きた――――


 楓が私たちに向けて放った火魔法が私たちだけでなく学校全体を覆ってしまった。

先生と私たちは防御魔法で無事だが学校内の生徒たちは無事だろうか……

菫は私たちの周りの火の消火に最大水魔法を使い、先生と私と桜は学校の火を消火するために最大水魔法を使う。

三人がかりで消火しているはずなのになかなか火が消えない。

私たちの周りの火の消火を終えた菫も私たちの方に合流するがそれでも火はすぐには消えなかった。

楓は自分がしたことが信じられないのか茫然としたままその場に座り込んでいて。

やっと学校全体の火を消火し終え学校を見ると流石魔法学校と言うべきか……

学校全体が最上級防御魔法で守られていたため、周りが少し焦げている程度で中にいた生徒たちは無傷のようだった。

しかし、当然、私たちは先生と一緒に校長室に呼び出された。


「……君たち、魔力封じはどうしたんだ?まさか全員壊れていたなんてことはないだろう?橘先生には壊れたらすぐ新しいものを渡すように言ってあったし、危険を察知したら色が変わり光るようにもしておいた。橘先生がそれに気付かず止めなかったとは考えにくいね」


私たちは誰も何も言えなかった。


「君たちの魔力は君たちが思っている以上に膨大だ。正直、魔力封じが一年も壊れず持ったことに驚いている。だが、それはただ君たちの能力が本来持っている能力に足らず、元から魔力が制御させていたからだ。この一年で君たちはものすごく成長した。君たちの本来持っている能力が開花していたのだろう。もし、君たちが勝手な独断で魔力封じを外していなかったら……魔力封じは壊れたであろうがこんな惨事にはならなかったはずだ。違うかね?」


私たちは自分の能力に過信し過ぎていた。

その結果がこれだ。

校長の言うことはごもっともで返す言葉もない。

私たちが何も言えず黙っていると校長はため息を吐いた。


「全員、退学処分にするしかないようだね」


それを聞いた私たちは驚愕した。


「正直、君たちの将来には期待していたんだが……残念だ。もう戻って学校を出る準備をするんだな」


楓が口を開く。


「待ってくれ……いや、待って下さい!やったのは俺です!こいつらは関係ない!俺が自分の力を制御出来なかったんだ……魔力封じを外しても問題ないって提案したのも俺で……だから!こいつらは悪くない!退学処分にするなら俺だけにして下さい!お願いします!」


そう言った楓の胸ぐらを桜が掴む。


「ふざけるな!お前だけ犠牲になるつもりか!?魔力封じを外すことに賛同した僕たちにも非はある!自分たちの能力を過信し過ぎてたんだから!」


「桜くんの言う通りだよ!楓くんだけ犠牲になるのはおかしい!!」


「ちょっと!桜!止めなよ!楓も何馬鹿なこと言っているの!自分だけ犠牲とかカッコよくもなんともないんだから!」


「じゃあ、全員仲良く退学か!?それこそふざけんじゃねぇ!お前らは俺より優秀だろうが!人間界にだって行けるし暮らすことも出来るだろうよ!でも、俺は違う!俺は……魔法がなきゃ何も出来ねぇ……しかも、力だけだ。その力を制御出来なかったんだぞ?俺に何が残ってるよ……?なぁ!教えてくれよ!今の俺に何が残ってんだよ!!」


私たちは初めて楓の苦しみを知った気がした。

いつも明るくて悪戯ばっかりしていたけれどみんなのムードメーカーで……

そんな楓の裏の顔など誰も見たことがなかったのではないか……

桜は掴んでいた手の力を緩めて菫は顔を覆い泣いていた。

今度は楓が桜の胸ぐらを掴み押し倒す。


「なぁ……ないだろ?お前らが羨ましかった。悔しかった。お前らはどんどん先に行ってる気がして……だから、実践だけは勝とうと思ってやった結果がこれだ!あの時の杏の気持ちが今ならすげぇわかるよ。多少無理してでもすぐに追い付きたかった。お前らの隣を歩いていたかったよ!力だけでも!力があればお前らを守れるって……」


私たちは黙って楓の話を聞く。

楓は力を緩めると桜を開放する。


「俺だって出来ることなら辞めたくねぇよ……お前らと人間界に行きてぇ……一緒に夢を叶えてぇよ……でも、今回のことをなかったことになんか出来ねぇ。だから、俺だけが辞める。お前らは俺の分も頑張れよ」


楓がそう言うと今までずっと黙っていた先生が口を開く。


「……校長。決断は変わりませんか?」


先生が校長にそう言うと校長はやれやれと言う風に口を開いた。


「椿くん以外を教室に戻しなさい。退学処分は取り消そう」


私たちは納得がいかず抗議しようとしたら楓が遮った。


「ありがとうございます!棗ちゃん、こいつら等のことよろしくな」


「楓っ!」


「嫌だ!楓くん!私も一緒にっ!」


「楓!こんなのってないよっ!」


楓は笑いながら口を開く。


「お前らは俺の誇りだ。大好きだ。特に杏、お前のことは本当に好きだった」


最後に一筋の涙を流しながら楓はじゃあなと言った。

それを見届けたと同時に先生が魔法で私たちを教室に飛ばす。

私たちはその場で泣いた。

桜は声を殺して。

菫は声を出して泣いて。

私は膝を抱えて泣いた。


楓は馬鹿だ、大馬鹿だ。

今度会った時はばかえでと呼んでやる。

しかも、どさくさに紛れて告白なんてしないでよ。

本当に狡い……


それからしばらくすると先生も戻ってきたので自分の席に座る。

私たちは泣き止んではいたものの泣き腫らした赤い目のまま、先生の話を右から左に聞き流しながしていた。

その日、私たちは何も言わず黙々と先生が出す課題をやり続けた。

楓がいつものように笑って戻ってくると信じて。

しかし、この日を最後に楓が学校に来ることはなかった――――
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