cat statue～猫の石像～

episode1-1

石像となり数日…
何もかもがどうでも良くなった私は、
何処に落とされたのかすら興味を失っていた。
そんな時、真っ暗だった私を柔らかな光が包み込んだ。
その光りは蒼く周りを輝かせた。
そして、草木の葉についた夜露がまるで、闇を照す星のようだ。
その時初めて私は月灯りと気がついた。

『月灯りはこんなにも世界を美しく輝かせるのだな』

私はしばらく月夜に魅せられた。

辺りが再び暗くなり、静寂の中、
ザッザッと近づく足音。

「何か落ちてると思えば、え？石像…猫？」

彼の掌にふわっと包まれた。
その温かな手は心地よく、彼は本物の猫を抱くように優しく私を懐に迎えた。

「こんな所寒いし、俺んちにおいで」
と歩きだした。
抱き抱えられた私は落ちた場所が公園であることを知った。

彼の家は公園からすぐだった。

ガチャン。
部屋に入ると、部屋はぐちゃぐちゃだった。
が、彼はその事には気にも留めず、
テーブルの一角を綺麗にし、タオルを敷いた上に私を鎮座させた。

「なんとなく直置きは君に悪い気がするよ」
と優しく撫でながら話しかけてきた。

「猫、ずっと飼いたかったんだけど、アパートじゃあね…」
「の前に部屋片付けろよなって感じだよな、ハハハ…」

スーツから部屋着に着替えた彼は
「明日も早いし、お休みニャンタロー」
と言うと、布団に潜り込み寝息をつき始めた。

『勝手にニャンタローって名前付けられた…ダサい……』
月灯りがカーテンの隙間から私を照した。