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強豪、滋賀学院 霧隠才雲、現る

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「やっとあいつの本性が見れるかもしれんな」

 副島はそんな言葉を残しながら、ベンチを出てネクストバッターズサークルへ向かった。

「滝音くんの本性……?」

 桔梗が首を傾げる。桔梗から目を向けられた伊香保も理解できずに首を傾げた。

「由依が分かんないなら、そりゃ誰も分かんないね」

「うん。…………って、いやいや、何やの、その言い方。何もないし」

 伊香保の耳が赤い。

「由依って嘘つく時はがっつり関西弁になるんやなぁ」

「…………だって、ほんとに何も……ないもん」

 桔梗が肘で伊香保をつつき、伊香保は耳を赤くしたまま二人して滝音の打席を見つめた。

 副島がニヤリとして滝音の打席を見つめる。あくまで勘だが、ここまでの滝音は何かを隠している。おそらく滝音なりの分析や策として、今大会のここまで、何らかの布石を打っている。副島はそう感じていた。

 滝音の脳が高速で数多ある選択肢から解答を導こうとしていた。さあ、滋賀学院さん。知恵比べだ。

 滋賀学院バッテリーのサイン交換が長く続いていた。最警戒モードに入っている。対する滝音はその点、織り込み済みだ。

 ここからが知恵比べ。最警戒モードの初球は何を投げてくるか。その後は? 何球目がバッティングチャンスか?

 まず、滋賀学院バッテリーも滝音も一致したのが、初球を簡単なストライクコースには投げないということ。

 悩んだ末に滋賀学院バッテリーは川原のピッチングの基本であるストレートを選択した。

 一方の滝音は、初球は外角低めのストレートと読んだ。滝音の読みは見事に当たっている。だが、その初球を滝音は振ることはない。川原の外角低めへのストレートは素晴らしい。ここまでの被打率なんと0.000。1本もヒットを打たれていないのだ。いくら読んだとはいえ、滝音は打てないと判断していた。初球はそのストレートをわざと手が出ないというように見送る。そう決めていた。

 ちなみに、この時、実は滝音の頭脳にはツーアウトで一、二塁となる画が見えていた。五球目を打ち、センター前ヒットとなる筋書きが既に完成していたのだ。かなり高い確率でそうなると滝音は確信していた。

 何故、そこまで言い切れるのか? もし、滝音が誰かにそう聞かれたとする。

 滝音はこう答えるだろう。

「それは、ここまでの四試合でそうなるように伏線を張ってきたからです」と。
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