50 / 243
レフト副島&ピッチャー藤田
4
しおりを挟む
そんな副島と藤田が頑張り続けて迎えた冬の日。
グラウンドに三人目の野球部員が現れた。各部の主将たちは目を疑った。
「え……蛇沼?」
三人目の野球部員は、ひねくれ者の蛇沼神だった。いつもひねくれていじめられていた蛇沼が、にこにこしてボール回しをしている。
「どういうこった」
皆が不思議そうにグラウンドの隅を見つめていた。
「蛇沼ってあんなに大きい声出せるんだな。ま、でも、副島良かったやん。三人目入って」
「まぁ、それでもあと六人か……。もう他に部活やってなくて運動神経良さそうなのって、どの部活も誘って断られてるからなぁ。あとは一年とか誘わないと厳しいだろうな……」
来年、副島は最終学年を迎える。
夏の全国高校野球選手権大会、県予選登録メンバー締切まではこの時点で半年もない。どの運動部の主将もここからあと6人を集めるのは至難の業だと思っていた。
桜が三年生を見送り、二年生たちに三年生の椅子を譲る。
今年も副島は新入生を前にして、野球部員募集のブースに座っていた。今年も校門に一番近い不利なポジションだ。
それでも今年は藤田と蛇沼がいて、心なしか雰囲気も明るい。ここで一年生さえ集まってくれれば……。副島、藤田、蛇沼は大きな声を出して勧誘し続けた。
「一緒に甲子園目指しませんか!」
「俺らと一緒に野球やりませんか? 初心者歓迎!」
だが、結果は残酷だった。
甲子園を目指せる訳じゃない。かといって、気軽なゆるい部活でもなさそうだ。新入生は、一人も野球部への入部届を出さなかった。
「かわいそうに。終わったな、野球部」
各運動部の新主将たちは、副島の甲子園を目指す物語が終わったと確信した。
野球部の部室ではさすがに下を向く三人がいた。
「すまん、蛇沼、藤田」
「仕方ないっす。今は野球やらせようって親も少なくなってきてるし……」
藤田がうなだれてそう返した。
グラウンドに三人目の野球部員が現れた。各部の主将たちは目を疑った。
「え……蛇沼?」
三人目の野球部員は、ひねくれ者の蛇沼神だった。いつもひねくれていじめられていた蛇沼が、にこにこしてボール回しをしている。
「どういうこった」
皆が不思議そうにグラウンドの隅を見つめていた。
「蛇沼ってあんなに大きい声出せるんだな。ま、でも、副島良かったやん。三人目入って」
「まぁ、それでもあと六人か……。もう他に部活やってなくて運動神経良さそうなのって、どの部活も誘って断られてるからなぁ。あとは一年とか誘わないと厳しいだろうな……」
来年、副島は最終学年を迎える。
夏の全国高校野球選手権大会、県予選登録メンバー締切まではこの時点で半年もない。どの運動部の主将もここからあと6人を集めるのは至難の業だと思っていた。
桜が三年生を見送り、二年生たちに三年生の椅子を譲る。
今年も副島は新入生を前にして、野球部員募集のブースに座っていた。今年も校門に一番近い不利なポジションだ。
それでも今年は藤田と蛇沼がいて、心なしか雰囲気も明るい。ここで一年生さえ集まってくれれば……。副島、藤田、蛇沼は大きな声を出して勧誘し続けた。
「一緒に甲子園目指しませんか!」
「俺らと一緒に野球やりませんか? 初心者歓迎!」
だが、結果は残酷だった。
甲子園を目指せる訳じゃない。かといって、気軽なゆるい部活でもなさそうだ。新入生は、一人も野球部への入部届を出さなかった。
「かわいそうに。終わったな、野球部」
各運動部の新主将たちは、副島の甲子園を目指す物語が終わったと確信した。
野球部の部室ではさすがに下を向く三人がいた。
「すまん、蛇沼、藤田」
「仕方ないっす。今は野球やらせようって親も少なくなってきてるし……」
藤田がうなだれてそう返した。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる