12 / 138
キャッチャー滝音鏡水
1
しおりを挟む
大人のほとんどが避けていく。怖れていたと言ったほうがしっくりくるのかもしれない。
それを感じたのは、幼稚園でお遊戯会の練習をしたときだ。全員の台詞と動きを、先生の見本を一度見ただけで覚えた。
「違うよ、かいとくんはここで前に出るんだよ」
「あ、違う違う。ななこちゃんはここまで出てきてから、おいしーって両手を広げるんだよ」
滝音鏡水がそう指導していると、先生は困ったように言った。
「きょうすいくんは自分のことをしようね。教えるのは先生たちがやるんだから」
先生たちの眼は怯えていた。今でも、いや、鏡水は一生その目を忘れることがない。
ぼくはほかのこどもとちがうんだ。
ぼくはみんなとちがってこわがられるんだ。
鏡水の頭脳は大人たちを困らせた。そんな幼少時代を過ごした。
それでも中学に上がる頃には、怖がられるなんてことはなく、頭脳明晰な生徒として教師から褒められることが多くなった。
自分が悪いわけではなかった。そう胸を撫で下ろした。
一方で、溜まっていた鬱憤からか、この頃から記憶できないというクラスメイトを馬鹿だと見下し始めた。
まだまだ脳は有り余っているじゃないか。
何故、脳を使えないんだ。
いつも立たされたまま答えられない同級生たちの姿は、鏡水にとっては不思議でしょうがない姿であった。
後に白烏結人と桐葉刀貴と出会うまで、滝音は独りで勉強に勤しんで少年時代を過ごした。
それを感じたのは、幼稚園でお遊戯会の練習をしたときだ。全員の台詞と動きを、先生の見本を一度見ただけで覚えた。
「違うよ、かいとくんはここで前に出るんだよ」
「あ、違う違う。ななこちゃんはここまで出てきてから、おいしーって両手を広げるんだよ」
滝音鏡水がそう指導していると、先生は困ったように言った。
「きょうすいくんは自分のことをしようね。教えるのは先生たちがやるんだから」
先生たちの眼は怯えていた。今でも、いや、鏡水は一生その目を忘れることがない。
ぼくはほかのこどもとちがうんだ。
ぼくはみんなとちがってこわがられるんだ。
鏡水の頭脳は大人たちを困らせた。そんな幼少時代を過ごした。
それでも中学に上がる頃には、怖がられるなんてことはなく、頭脳明晰な生徒として教師から褒められることが多くなった。
自分が悪いわけではなかった。そう胸を撫で下ろした。
一方で、溜まっていた鬱憤からか、この頃から記憶できないというクラスメイトを馬鹿だと見下し始めた。
まだまだ脳は有り余っているじゃないか。
何故、脳を使えないんだ。
いつも立たされたまま答えられない同級生たちの姿は、鏡水にとっては不思議でしょうがない姿であった。
後に白烏結人と桐葉刀貴と出会うまで、滝音は独りで勉強に勤しんで少年時代を過ごした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる