48 / 54
世界中探しても
しおりを挟む
「ああ、久し振り。この春から学園に通ってるんだったな。寮に入ったと聞いたが……彼らも?」
灰色の服の騎士は、ルークさまとハンスさまに視線を移す。
この春からということは、ルークさまたちは一年生ということである。
「はい、俺たちの学年で寮に入っているのはこの三人だけで」
ロイドさまが肯定する。
ハンスさまが抜きんでて体が大きいけど、やっぱり同学年なんだ。
「三人だけ? 仕方ないか、君たちの世代は数が少ないからな」
数が少ないって、何でだろう。
そういえば、国王陛下や王太子殿下にお子さまが生まれる前後数年は子供の数が多くなるらしい。男子なら側近候補、女子なら婚約者候補狙いの為に、皆さま励むのだそうだ。ほらアレですよ、夜の生活をですよ。
ルークさまたちは第一王子殿下とは八歳くらい違うから、波の谷間かな? 私とシオン兄さまはそのベビーブームの真っただ中に生まれている。我が家の場合は、母さまの学園卒業を待って結婚したら、たまたま国王陛下……当時は王太子殿下の婚姻時期と重なって、子供が同年代になったらしい。
「ロイド、知り合いなのか?」
ルークさまがロイドさまをつつく。
「知り合いというか、従兄の友達」
あ、ここに来る時にちらっと言ってた従兄の人のことかな。
「そうそう、ロイドの従兄が俺と同い年で学生時代はよく遊んでいて、長期の休みには家にお邪魔させてもらったこともある」
灰色の服の騎士は、ロイドさまの頭をぽんぽんと撫でる。扱いが完全に弟だけど、親しいのだということは伝わる。
「君たちは騎士志望?」
「はい、そうです」
「俺もです」
ルークさまとハンスさまがこくこくと頷く。
「それは良かった、じっくり見学していってくれ。即戦力になりそうな年齢の見学者ってなかなかいないから、みんな気にしてて」
「ミャッ?(え?)」
そんな、周囲からの熱い視線は、私が可愛いからじゃなく?
騎士団って猫好きの人が多いんだなと思ってたのに、お目当てはルークさまたちだったの? 確かに見学者に若い男の人は少なかったけど。
私が目当てだと思ってたから、頑張って愛想よくサービスしてたのにっ。
拗ねた私は、ルークさまの膝の上で半回転して、背中を向けて座り直す。
灰色の服の騎士が去り、また誰かが近付いてくる気配がしたけど、振り向いてなんてあげないんだからね!
「フギャッ(ぎゃああっ)」
がしっと首根っこを掴まれてぐいっと持ち上げられ、おかしな声が出る。
「小さいな」
ぷらーんぷらーんとしている私を見て、私を掴んだ人が呟く。先程までは若い騎士ばかりだったが、今度は筋肉は盛り盛りだけど渋いおじさまである。筋肉の所為なのか、顔の輪郭がシャープだからなのか、ワイルド系イケメンである。ジスカール卿と同年代か、ちょっと若いくらい? 四十代後半から五十代前半に見える。
「ミャミャン(まだ五歳なので)」
そう言えば、猫の五歳なら立派な成猫な訳だけど、私の場合は仔猫と成猫の間くらいの大きさになるんだよね。猫は生後三ヶ月くらいが人間の五歳に相当するらしいけど、それよりは微妙に大きい。猫になりたての三歳の頃よりは育っているような気がするけど。
いやいや、私の場合も何も、猫になる人間なんて世界中探しても私くらい……。
灰色の服の騎士は、ルークさまとハンスさまに視線を移す。
この春からということは、ルークさまたちは一年生ということである。
「はい、俺たちの学年で寮に入っているのはこの三人だけで」
ロイドさまが肯定する。
ハンスさまが抜きんでて体が大きいけど、やっぱり同学年なんだ。
「三人だけ? 仕方ないか、君たちの世代は数が少ないからな」
数が少ないって、何でだろう。
そういえば、国王陛下や王太子殿下にお子さまが生まれる前後数年は子供の数が多くなるらしい。男子なら側近候補、女子なら婚約者候補狙いの為に、皆さま励むのだそうだ。ほらアレですよ、夜の生活をですよ。
ルークさまたちは第一王子殿下とは八歳くらい違うから、波の谷間かな? 私とシオン兄さまはそのベビーブームの真っただ中に生まれている。我が家の場合は、母さまの学園卒業を待って結婚したら、たまたま国王陛下……当時は王太子殿下の婚姻時期と重なって、子供が同年代になったらしい。
「ロイド、知り合いなのか?」
ルークさまがロイドさまをつつく。
「知り合いというか、従兄の友達」
あ、ここに来る時にちらっと言ってた従兄の人のことかな。
「そうそう、ロイドの従兄が俺と同い年で学生時代はよく遊んでいて、長期の休みには家にお邪魔させてもらったこともある」
灰色の服の騎士は、ロイドさまの頭をぽんぽんと撫でる。扱いが完全に弟だけど、親しいのだということは伝わる。
「君たちは騎士志望?」
「はい、そうです」
「俺もです」
ルークさまとハンスさまがこくこくと頷く。
「それは良かった、じっくり見学していってくれ。即戦力になりそうな年齢の見学者ってなかなかいないから、みんな気にしてて」
「ミャッ?(え?)」
そんな、周囲からの熱い視線は、私が可愛いからじゃなく?
騎士団って猫好きの人が多いんだなと思ってたのに、お目当てはルークさまたちだったの? 確かに見学者に若い男の人は少なかったけど。
私が目当てだと思ってたから、頑張って愛想よくサービスしてたのにっ。
拗ねた私は、ルークさまの膝の上で半回転して、背中を向けて座り直す。
灰色の服の騎士が去り、また誰かが近付いてくる気配がしたけど、振り向いてなんてあげないんだからね!
「フギャッ(ぎゃああっ)」
がしっと首根っこを掴まれてぐいっと持ち上げられ、おかしな声が出る。
「小さいな」
ぷらーんぷらーんとしている私を見て、私を掴んだ人が呟く。先程までは若い騎士ばかりだったが、今度は筋肉は盛り盛りだけど渋いおじさまである。筋肉の所為なのか、顔の輪郭がシャープだからなのか、ワイルド系イケメンである。ジスカール卿と同年代か、ちょっと若いくらい? 四十代後半から五十代前半に見える。
「ミャミャン(まだ五歳なので)」
そう言えば、猫の五歳なら立派な成猫な訳だけど、私の場合は仔猫と成猫の間くらいの大きさになるんだよね。猫は生後三ヶ月くらいが人間の五歳に相当するらしいけど、それよりは微妙に大きい。猫になりたての三歳の頃よりは育っているような気がするけど。
いやいや、私の場合も何も、猫になる人間なんて世界中探しても私くらい……。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
【R18】寝取られ願望がある旦那様のご要望で、年下の美しい国王陛下に抱かれることになった夜。
yori
恋愛
「お願いだよ、ミア。私のために、他の男に抱かれてきておくれ」
侯爵夫人であるミア・ウィルソンが、旦那様にお願いされて、年下の美しい国王陛下と閨を過ごすことに。
そうしたら、国王陛下に指示されて、色んな事に目覚めてしまうそんなお話。
※完結済み作品「転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件」の数年後、ルーク王国が舞台。ですが、登場人物とか出てこないので、読まなくても全然大丈夫です。
※終始えっちしています。何でも許せる方のみ読んでください……!
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる