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程よい距離を希望

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「デイジー嬢はしっかりしてるから、年下の第二王子殿下もいいけど、どうせなら第一王子殿下を狙ってみたら?」
 どうせならと言われても。狙ってみたらと言われても。
 てか、五歳児に何ゆってるんですかレティーシャさま。私の中身は二十代なので、年齢の割には大人びた会話が成立してるとはいえ。
「どっちも狙いません……」
 そもそも狙うという表現は不敬ではないのだろうか。
「第一王子殿下となら年回りもいいのに。伯爵令嬢なら候補に入るわよね?」
 入るかもしれないですけど、第一王子殿下ってことは、将来的には最も国王陛下になる可能性が高い方ですよね? 王太子宣下があるまでは確定ではないとはいえ、王位継承権は第一位。体が弱い第二王子殿下がその前に立ちはだかるとも思えないし。
 要するに、第一王子殿下と結ばれると、未来の王妃の座に就くことになる。
「候補にも入りたくありません……」
 そんな大役、絶対無理である。私、モブなんで。


「あら、候補もだめなの?」
 完全拒否の私に、レティーシャさまが笑う。
「まあそうね、王子殿下と付き合うなんて面倒なことばかりよね」
 レティーシャさまが、『いつか白馬の王子さまが』に憧れる女子の夢を真正面から砕いてくる。
「遠くから見てるくらいがちょうどいいわ」
 あ、それには私も同意です。普通の社交界でも権謀術数が渦巻いているらしいのに、王族になんて近寄りたくもありません。
 でもでも、遠くからというか、被害が及ばない程度の近さでは見たいんです!


「王子殿下方のことは置いておいて、いいなって思ってる人はいないの?」
 レティーシャさま、さっきも思ったけど、五歳児に何を訊いてるんですか。
「いないです」
 一応答えておく。
「デイジーは、あまり年の近い子との交流がないんです」
 母さまが言い添える。
 そうなんだよね、お茶会だと母さま世代がメインだし。
 呪いの所為で外出時間は二時間以内という制限があるので、外での出会いには期待できないし。制限に引っ掛からない猫の姿でお散歩には出てるけど、散歩している猫と恋に落ちてくれそうな人には今のところ出会ってないし。
 領地に戻れば従弟妹たちがいるが、まだ海のものとも山のものとも分からない赤子~幼児なので、これもちょっと恋に落ちるのは難しい。
「いっそ、うんと年上でもいいんじゃない?」
 そう言うレティーシャさまの旦那様であるクリストフさまは、レティーシャさまより四歳年下である。説得力なさ過ぎである。
「まあ、年下もいいものなんだけど」
 ちらりと惚気たレティーシャさまはこう続けた。
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 クリストフさま、頑張って。
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