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篠崎家の家庭事情
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実は、自分の腕に手を絡ませている少女を、つまらなそうに見下ろした。
わざと大きく広げられた制服の襟からのぞく、ブラに包まれた胸の谷間。
普段より短く巻き上げられたスカート。
全身で男を誘っている。
「…ねぇ、どこ行くのぉ?」
「俺ンち。」
金があれば、ホテルに直行しているが、今月はすでにピンチだった。
他人を家に招くのは、正直に言うと気が進まない。
しかし、背に腹は代えられない。家なら金はかからないのだから。
この時間なら、家には誰もいないはず。
事を済ませた後に女を追い出し、掃除でもしておけば、きっと誠も喜ぶに違いない。
誠の喜ぶ顔を想像すると、実の心は浮き立つ。
どんな女性と寝るよりも、それは実を高ぶらせた。
世間では、同性愛が徐々に認知されようとはしているが、誠は、実の兄。
言うまでもなく禁じられた想い、だ。
この想いが(誠に)受け入れられない事はわかっているし、誠の傍にいられる今の生活を壊す気も、実には、ない。
けれど、欲求は溜まる。
だから、彼女のような女性の存在は、実にとって都合がよかった。
決して手に入らない、手に入れてはいけない存在の、言わば代用品。
だから、せいぜい行為の間は夢を見させてやろう。
そう、思っていた。
立ち止まり、少女の顎をとらえて上向かせ口付ける。
軽く触れるだけのキス。
それだけで放れてゆく実に、少女は不満の眼差しを向ける。
「…続きは、家に行ってから、だ。」
擦れた声で囁いてやると、今度は満足そうに、いっそう強くしがみついてくる。
…まったく単純な女、と、実は、顔に出さずに嘲笑う。
…靴を脱ぐのもそこそこに、玄関で及んだ行為。
家で…、とは言っても、実際、実が部屋に女を連れ込んだ事はない。
後腐れのないように、玄関か、バスルームか、よくてリビングと言ったところだろう。
ガレージだった事もある。
そんな風に(異性を)適当にしか扱って来なかったから、情事後、横たわったままの恵美が漏らした言葉に、実は虚を突かれた。
「これでアタシぃ、実の彼女だねぇ~。」
行為の余韻に浸りながら、少女は夢見心地に呟く。
思いもよらない、飛躍しすぎた思考に、実が呆気に取られていると、その間に身支度を整えた少女は、興味津々の様子で周囲を見回した。
わざと大きく広げられた制服の襟からのぞく、ブラに包まれた胸の谷間。
普段より短く巻き上げられたスカート。
全身で男を誘っている。
「…ねぇ、どこ行くのぉ?」
「俺ンち。」
金があれば、ホテルに直行しているが、今月はすでにピンチだった。
他人を家に招くのは、正直に言うと気が進まない。
しかし、背に腹は代えられない。家なら金はかからないのだから。
この時間なら、家には誰もいないはず。
事を済ませた後に女を追い出し、掃除でもしておけば、きっと誠も喜ぶに違いない。
誠の喜ぶ顔を想像すると、実の心は浮き立つ。
どんな女性と寝るよりも、それは実を高ぶらせた。
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言うまでもなく禁じられた想い、だ。
この想いが(誠に)受け入れられない事はわかっているし、誠の傍にいられる今の生活を壊す気も、実には、ない。
けれど、欲求は溜まる。
だから、彼女のような女性の存在は、実にとって都合がよかった。
決して手に入らない、手に入れてはいけない存在の、言わば代用品。
だから、せいぜい行為の間は夢を見させてやろう。
そう、思っていた。
立ち止まり、少女の顎をとらえて上向かせ口付ける。
軽く触れるだけのキス。
それだけで放れてゆく実に、少女は不満の眼差しを向ける。
「…続きは、家に行ってから、だ。」
擦れた声で囁いてやると、今度は満足そうに、いっそう強くしがみついてくる。
…まったく単純な女、と、実は、顔に出さずに嘲笑う。
…靴を脱ぐのもそこそこに、玄関で及んだ行為。
家で…、とは言っても、実際、実が部屋に女を連れ込んだ事はない。
後腐れのないように、玄関か、バスルームか、よくてリビングと言ったところだろう。
ガレージだった事もある。
そんな風に(異性を)適当にしか扱って来なかったから、情事後、横たわったままの恵美が漏らした言葉に、実は虚を突かれた。
「これでアタシぃ、実の彼女だねぇ~。」
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