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続編
初めてのお茶会⑥(エリオット視点)
しおりを挟む「──僕には6つ年上の兄がいます。……兄上はとても優秀で、学園ではいつもトップの成績を取っていて、今は皇宮で文官をしています。皇宮で経験わ積み、8年後には父上の後を継いでコール伯爵となる予定です」
「まぁ、まだお若いのに皇宮で仕事をされているのですね」
6歳差ということは、お兄さんもまだ学園を卒業してすぐのはず。普通、学園を卒業したらまずはそれぞれの家に戻り、両親や祖父母などから領地経営についてを学ぶ。そして、学園で学んだ知識をある程度応用して活用できるようになってから、皇宮やその他の仕事を始め、知識や経験を深めるというのが一般的だ。
それにも関わらず、すでに皇宮に勤めているということは、十分な知識と、その知識を応用できるだけの素質が学園を卒業した時点であるということになる。
それに、家を継ぐ時期が決まっているということは、すでに伯爵を務めるのに十分な素養もあって、あと必要なのは経験を積むことだけなのだということだと思う。
ちなみにお母様も大変優秀な成績で学園を卒業していて、学園に通っていた頃から領地運営の仕事の一部を担われていたとロバートから聞いた。……ロバートに『私がエリオット様とソフィア様にお話ししたことは内緒にしてくださいね』と言われてしまったけど……普通は学園を卒業しても基礎的な知識を覚えられているだけらしいから、それがどれだけ凄いことなのかは言わずもとわかることだ。
「すごいお兄様ですね」
「はい。……ですが、兄上が優秀な方なので、僕に勉強を教えに来てくださる方々も“弟も優秀なはず”と期待していらっしゃいます。……だけど、実際に勉強を進めていくと、皆さん落胆してしまうんです。僕が兄上みたいに優秀じゃないから……」
「勉強は人と比較するものではないと思いますけど……」
「僕も妹と同意見です。オリバー様自身、努力をされているのでしょう?」
「もちろんです! でも、なのに…僕は兄上のようにできないんです……」
“成績は人と競うものではない”。そう言うのは簡単だけど、実際に比較しないというのは難しい。身近に優秀な人がいて、周囲が比較してくるとしたらなおさら。
さっきは、彼の気持ちを引き出すために、『周りが勝手にしてくる比較に勝手に傷付いているのは自分自身じゃないのか』、というようなことを言ったけど、目の前で落胆される様子を見ていたら傷付かない方がおかしい。
「……家庭教師の誰かが僕の話をしてしまったみたいで、“コール伯爵家の次男は落ちこぼれ”という噂が広がってしまいました」
「それは……」
「そんな……」
きっと、オリバー様が落ちこぼれというわけではないはずだ。“お兄さんと比べてしまうと”というだけで、年齢にしたら十分な教養が身に付いている。
しかし、一つ疑問が浮かんだ。
「答えにくいことかもしれませんが、その噂をどこで耳にされたのでしょうか?」
「……僕の家で開催されたお茶会で、いらしていた方々がそのように話されているのを……」
「あれ? オリバー様は今日が初めての社交でしょう?」
「はい、正式に参加するのは、ですが。……以前コール伯爵邸で開かれたお茶会が気になって覗きに行ってしまったことがあるんです」
オリバー様は苦笑した後で、暗い表情になった。
「その時に、他家の方々が『コール伯爵家の次男は落ちこぼれだ。長男が優秀なだけに、未熟さがより一層際立っている』といったようなことを話しているのを聞いてしまって……もちろん 、主催者の息子を直接的に貶すような言い方ではなかったのですが……」
なるほど……“お茶会”というものに興味があって覗きに行ってしまったら、自分を貶すような会話が行われていたと……
「その時に庇ってくださったのがカトル公爵なんです」
「僕達のお母様が?」
「はい、カトル公爵は僕がいたことにお気付きでなかったと思いますが、『会ったことのない子のことをそのように言ってしまうのはどうでしょうか? ……確かにコール伯爵のご長男は優秀だと聞きますが、弟君がどうという指標にはなりません。子は皆、宝石の原石です。それぞれが秘めている輝きを発揮させられるかどうかは私達大人の働きにかかっているのでは?』と言ってくださったのです! さっき、初めてご挨拶しましたが、お綺麗でお優しい方でした」
オリバー様はさっきまでの暗かった表情が一変し、キラキラと輝くような瞳でお母様の話をしている。……すごいな。何年も前のことだろうに、お母様が言った言葉を全て覚えているみたいだ。
……このお母様に心酔……いや、依存してしまっている様子。さっき挨拶した時にお父様があのような態度をとったのも、お母様に依存してしまっているからか?
まぁ、僕とソフィーが想像したような理由もあったのだろうけど……
「僕もお母様の言うように、オリバー様にはオリバー様にしかない才能があるかと思います。もっと自信をもたれてよろしいのではないですか?」
「私もそう思います」
お母様がすでにオリバー様の悩みの種を取り除く言葉を言っているならと、ソフィーと共に言葉をかけるが、オリバー様は顔を歪めてしった。
「………ですが、僕はまだ自分の輝きというものを見つけられていません。僕は……僕は、宝石の原石などではなく、ただの石ころなんだっ……」
~~~~~~~~
読んでくださりありがとうございます(*^^*)
オリバー君はちょっと(大分?)面倒臭いことになっちゃってる子ですが、立派な子になる予定ですので、それまでは暖かい目で見守っていただければと思います_(..)_
長くなってしまった「初めてのお茶会」ですが、次回で(たぶん)終了する予定です!
その後は以前少しお話しした通り、別の話としてエリオットとソフィアの学園生活を描いていこうかなと思います!
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