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3章 再交する道
13 . 受験生
しおりを挟む「どの教科も演習だから授業が退屈~」
「あ~確かに。ちょっと分かるかも」
「ずっと演習だもんね」
加奈ちゃんの言葉に私も苦笑しながら同意を示す。一日中入試の過去問を解いているとなれば疲れが出てきてしまうよね。
今は休み時間。さっきは日本史と世界史に分かれての授業だったけど、どちらの授業も内容的には入試対策。授業内容が入試対策なのはその2教科だけじゃなくて、全ての教科。
どの教科も高校での学習範囲を終えているから、共テの過去問や同じ形式の問題集をひたすらに解いていくという感じなんだけど、どの教科も文章量が多いから毎日・全教科だと結構大変。
授業では毎回、指定された範囲を決められた時間内に解ききれるように取り組んで、その後に個人での解答解説書の読み込み、先生からの解説の時間が取られる。先生の解説以外は個人作業になるし、内容が違えど基本的には一日中そんな感じだから飽きてしまうという人も少なくない。
……まぁ、受験生だししょうがないんだけど……ちなみに、問題集によって傾向や難易度が微妙に違っているから、より多くの問題に触れるために、複数の出版社の問題集に取り組んでいく予定らしい。
教科によっては1学期から演習をしているから、すでに3冊目に突入している教科もある。
「ちなみにさ、みんなは推薦受けるの?? あっ、一応言っとくとウチは評定足りなくてムリ!」
加奈ちゃん……笑顔でサムズアップしながらつけ足してるけど……うん、まぁ、前向きなところが加奈ちゃんらしいのかな?
それにしても推薦か……もうそんな時期だよね。
「私は受けない」
「えっ、咲空ちゃんなら評定とか余裕だよね?」
「うん……評定的には受けられるんだけど、推薦だと試験での面接の配点が大きいから私にはちょっと厳しいかなって……」
私はただでさえ人と話すのが苦手だから、そこに“面接”という緊張感加わってしまえば、何も話せなくなってしまう気がする。一般試験にも面接はあるけど、配点が推薦ほど高くないから何とかなるはず……
何より、部活に入っていなかった私にはこれといった活動実績もないし、そう考えていくと推薦での合格はかなり厳しいと思う。
「そっか……咲空ちゃんなら大丈夫だと思うけどな~……それで、ハルミンとユイユイは?」
「……アタシは悩んでる」
「私はダメもとで受けてみるつもり」
「ハルミン、推薦組は試験が11月とかだし、そろそろ決めないとなんじゃない?」
「そうなんだよね~……評定は足りてるんだけど、アタシの志望大は推薦でも共テ受けなきゃだから、個別とか面接とかの対策してると共テ対策が遅れそうだなって……」
「夏休み中の三者面談で決まらなかったの?」
どの大学を受験するか、推薦を使うかどうかなんかは夏休みにあった三者面談までに決まっていると思うんだけど……受験生と保護者、学校でその擦り合わせをする面談だったし。
もちろん、共テの結果次第で色々変わってきてしまったりするから、いくつかのパターンを暫定的に決めておくと言うだけだけど。
「三面の時には使わない方向で考えたんだけど、可能性を増やすって意味では受験した方が……って。でも出費が痛い」
「受験するだけで結構するもんね……」
「うん……親は『そんなの気にするな』って言ってくれてるんだけど、要項にある金額みたらさ……」
国立大学でも試験を受けるだけで二万円近くかかってしまうし、晴海ちゃんのお家は五人きょうだい。しかも、今年度は晴海ちゃんを含めて三人が最上級生で進学を控えているとなると、長女としては色々考えてしまうのだろう。
「検定料高いよね……」
「ね。滑り止めを何校も受験するとなるとヤバいと思う。ウチは滑り止めは多くて2校かなぁ……」
「私は滑り止めの私立大学を1校受験する予定」
「アタシは本命だけで頑張る予定かなぁ……」
「私も1校だけの予定。お母さんと先生には微妙な顔されちゃったけど」
結華ちゃんは眉を下げて苦笑している。
そっか、晴海ちゃんと結華ちゃんは本命だけでいく予定なんだ……みんな滑り止めを1校は受験するものだと思ってた。
……でも『どうしてもこの大学に入りたい』と思っていたら、その大学に落ちてしまって滑り止めで受験した大学に合格していたとしても、入るかどうかは微妙だろうし、それなら最初から受けないというのも一つの考え方かもしれない。
特に結華ちゃんには志望している音大に対して並々ならない思いがあるみたいだし……
「アタシも一本でいくって言ったら反対されたわ……。でも、国公立だと前期の合格発表の前に私立は入学金とか振り込まなきゃだから、入るか分からないところに二十万くらい使わなきゃいけないでしょ? だったら1校にしぼって必死に頑張るよ」
そう言う晴海ちゃんは困ったような顔をしているけど、確かな覚悟を持っているみたい。
ちなみに、みんなの志望大は私と晴海ちゃんが国公立大学、加奈ちゃんと結華ちゃんが私立大学という感じ。
「う~ん、私も推薦受けようかな……一本でいくなら少しでも可能性を増やしたいし。念のためにって個別試験の対策は少しずつしてたし……よし、今日帰ったら親と相談する」
そう言って笑顔を浮かべる晴海ちゃんは少し悩み事が軽くなったみたい。
──キーンコーンカーンコーン……
「ヤバッ、チャイム鳴っちゃった。次って国語だったよね」
「うん 」
「じゃあ、また後でね」
「加奈、寝ちゃダメだからね?」
「もぉ~最近は寝てないってば!」
“受験は団体戦”
皆がそれぞれの第一志望の大学に進学できるように助け合っていきたい……──
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