34 / 100
2章 巡り逢う者達
15 . ショッピング
しおりを挟む「お、大きい……」
「着いた~!」
「いや~電車空いててよかったね」
「私も来るの久しぶりだから、すごく楽しみ」
──衝撃的な事実を知ったあの日から数日経った週末の今日、私は加奈ちゃん達と4人で学校から駅5つ離れた場所にあるショッピングモールに来ている。
もちろん、と言ったらおかしいかもしれなけど、桃さんと葵さんも付いてきてくれていて、万が一にも美緒……黒邪と遭遇してしまってもすぐに対応できるようにしてくれている。
家からはかなり離れているし大丈夫だと思うけど、念には念をいれないと……
……あんなことを知った後だから、学校でも考え込んでしまったり、勉強に身が入らなかったたりしてしまった。もちろん、知ったことを後悔するなんてことはない。知らなかった方が後になって後悔していたと思う。
……だけど、考えすぎてのめり込んでしまえば、普通なら見えることも見えなくなってしまうから、気を付けないと。麗叶さんにも心配をかけてしまうだろうし……
そういった意味でも、今日は良い気分転換の機会になると思う。別のことに意識を向けてこそ見えてくるものもあるかもしれにないし。
麗叶さんも最近の私の様子を気にして、『一度 、先の見えない煩わしさを忘れて楽しんでくると良い』と言って送り出してくれた。
……とはいっても、初めてのことが多過ぎて今の時点ですでに疲れ始めてしまっている。集合場所はわかりやすいようにってことで、学校の正門に集合してからみんなで電車に乗って来たけど、電車自体が始めてだったから……
「咲空ちゃんはこのモール初めてだったよね? 何見たいとかある?? 服とか雑貨とか」
「うーん……よく分からないから 、みんなが行きたいお店を一緒に見て回りたいな」
……そもそも私が行ったことがあるお店って近所のスーパーくらいだし……
「……了解! ハルミンとユイユイは?」
「私は服が買いたいかな~来年から大学生なのに私服全然持ってないし」
「私は参考書かな? ……参考書って言っても楽典とかだけど。加奈ちゃんは?」
「ウチ? う~ん、プリ撮りたい! あと服!」
プリ?
!……プリクラ?
前に美緒が朋夜とか友達とかと撮ったものを見せてくれたことがある。その時は『目が大きくなってて顔の形変わってるな』くらいの印象だったけど、仲の良い人達とそういうものを撮るということに憧れがあった。
……ん?
今の美緒は…ううん、美緒はずっと黒邪、なんだよね?
……うん、考えないようにしよう。
「じゃあ、まずプリ撮って、その後で楽器店行って、お昼食べて、服見るがてらブラブラして……って感じかな?」
「賛成!」
「うん、いいと思う」
「うん。……楽しみだなぁ」
「! うん、目一杯楽しもうね!」
* * *
『次は可愛くねこちゃんポーズ! ──3・2・1《カシャッ》……こんな風に撮れたよ』
……プリクラってこんな風に撮るんだ。機械のガイド音声が指示してくれて、色々なポーズで写真を撮っていく……したことのないポーズばかりで混乱しながらだったけど、みんなでワイワイしゃべりながら同じポーズで撮影するというのは楽しい。
「あっ、きたきた!」
「めっちゃ盛れたね~」
撮影とラクガキを終えて少ししたら 、取り出し口から出来上がったプリクラが出てきた。分割は2つだから、シール媒体は結華ちゃんと私がもらって、加奈ちゃんと晴海ちゃんはデータで受け取るらしい。
「わぁ……」
学校の卒業アルバム以外で自分が映った写真なんて、それこそ証明写真とかくらいだから……あっ、引っ越す時に前の家の片付けをしていた時に赤ちゃんの頃の写真は何枚か出てきたっけ? ……もっとも、赤ちゃんの頃のものだから、本当に私かどうかわからないけど。ただ、美緒の写真とは別の場所にあったから、美緒ではないと思う。
お父さんかお母さんが撮ってくれたのかな……? まぁ、一番可能性が高いのはお祖母ちゃんなんだけど……
「じゃ、次は楽器店だね!」
「うん。付き合わせちゃってごめんね」
「ごめんなんていらないって! ウチ、ピアノとかドラムの試奏するの好きだし!」
「私も問題ないよ。ちょうどリード買いたいと思ってたし」
「てか、試奏つっても、加奈は適当に鳴らすだけでしょ?」
「当ったり前じゃん! できないもん」
「ふふっ。私も色んなお店見てみたいから、一緒に行きたい。楽器店がどんな雰囲気なのかも気になるし」
「ありがとう」
楽器店なんて家の側になかったから、普通に気になる。イメージとしては壁にギターがかけてあって、棚には楽譜や教本が並んでる…みたいな感じだけど、実際はどんな感じなんだろう?
「へぇ……こんな感じなんだ」
「ここのお店けっこう広いよね」
「うん。色々な物があって驚いちゃった」
結華ちゃんが言うように楽器店はとても広くて、フロアには試奏用のピアノや電子のドラムセットなんかがたくさん置かれている。
ガラスケースのなかにはバイオリンやトランペット、フルートなんかも並んでいて、その近くのスペースには楽器に使う小物なんかが置かれているみたい。
……こかにある全てが物珍しい。楽器を間近で見るのも初めてだけど、楽器ってこんなに綺麗なんだ。形や光沢が芸術的というか……
結華ちゃんが探しているものと、晴海ちゃんが買うリードが反対方向にあったから、いったん別れて探すことになった。
私は結華ちゃんと一緒にいるんだけど、結華ちゃんは慣れた足取りでお店の中を進んでいる。
「──あっ、これだ」
「最初に言ってた楽典?」
「うん。楽典の問題集で、受験の時に筆記試験の科目になってるから頑張らないと」
「そうなんだ。やっぱり、音大だと他の大学にはない科目とかあるんだね」
「歌うのは好きだけど、音楽理論とかは苦手だからもう大変。でも、絶対に行きたい大学だから」
「そう、なんだ……」
『絶対に行きたい』と言いながら、手にある問題集に視線を落とす結華ちゃん。
……結華ちゃんは志望大学を選らんだのは『なんとなく』だって言っていた。だけど、『調べていた時に突然“ここに行きたい”ってなったんだ』って言っていた。
きっと、何かあるんだろうな。結華ちゃん自身にも分からない“何か”が。
……その“何か”が私にも関係している気がする。
そして、遠くない未来にそれが明らかになる予感も。
14
お気に入りに追加
2,386
あなたにおすすめの小説
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
愛しているからこそ、彼の望み通り婚約解消をしようと思います【完結済み】
皇 翼
恋愛
「俺は、お前の様な馬鹿な女と結婚などするつもりなどない。だからお前と婚約するのは、表面上だけだ。俺が22になり、王位を継承するその時にお前とは婚約を解消させてもらう。分かったな?」
お見合いの場。二人きりになった瞬間開口一番に言われた言葉がこれだった。
初対面の人間にこんな発言をする人間だ。好きになるわけない……そう思っていたのに、恋とはままならない。共に過ごして、彼の色んな表情を見ている内にいつの間にか私は彼を好きになってしまっていた――。
好き……いや、愛しているからこそ、彼を縛りたくない。だからこのまま潔く消えることで、婚約解消したいと思います。
******
・感想欄は完結してから開きます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
美しく優秀な次女がいるのなら、私は必要ありませんよね? 〜家を捨てた私は本当の姿に戻り、追いかけてきた皇子と街で暮らす〜
夜野ヒカリ
恋愛
アスラート帝国のカトル公爵家の長女リーナは、プラチナブロンドに青銀の瞳の美しく聡明な少女だったが、
母親と妹からの命令で、カツラを被り、肌を汚して生活していた。
そうしなければ暴力を振るわれたためである。
しかし、母親と妹はリーナの本当の姿も、自分たちが強制したことも忘れて、リーナを“醜い無能”と罵った。
自分の扱いに耐えられなくなったリーナは、ある決意をした。
─────
「お父様、今日より私は、カトルの姓を捨て、平民として生きたく思います」
リーナの18歳の誕生日、リーナは父親である公爵にそう切り出す。
─────
リーナが公爵家を出た時、公爵家の財政管理、領地管理、他家との関係の保持─── ほとんどの仕事はリーナがしていたのだが…………。
貴族としての身分を捨て、街の食堂で働き始めたリーナはそこで幸せになれるのか!?
密かなにリーナに想いを寄せていて、リーナを追いかけて街に下りた皇子との恋の行方は!?
話、設定、登場人物の口調etc.
色々とブレブレですが、ご容赦くださいm(__)m
本編は最後まで執筆、公開予約済みです。本編完結後、のんびりと番外編を更新していく予定です!
3/18 : Hotランキング
60位→30位→15位→10位→6位
3/19~21 : Hotランキング1位
ありがとうございます!!
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
婚約破棄ですか。別に構いませんよ
井藤 美樹
恋愛
【第十四回恋愛小説大賞】で激励賞を頂き、書籍化しました!!
一、二巻、絶賛発売中です。電子書籍も。10月8日に一巻の文庫も発売されました。
皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
正直、こんな形ばかりの祝賀会、参加したくはありませんでしたの。
だけど、大隊長が参加出来ないのなら仕方ありませんよね。一応、これでも関係者ですし。それにここ、実は私の実家なのです。
というわけで、まだ未成年ですが、祝賀会に参加致しましょう。渋々ですが。
慣れないコルセットでお腹をギュッと締め付けられ、着慣れないドレスを着せられて、無理矢理参加させられたのに、待っていたは婚約破棄ですか。
それも公衆の面前で。
ましてや破棄理由が冤罪って。ありえませんわ。何のパーティーかご存知なのかしら。
それに、私のことを田舎者とおっしゃいましたよね。二回目ですが、ここ私の実家なんですけど。まぁ、それは構いませんわ。皇女らしくありませんもの。
でもね。
大隊長がいる伯爵家を田舎者と馬鹿にしたことだけは絶対許しませんわ。
そもそも、貴方と婚約なんてしたくはなかったんです。願ったり叶ったりですわ。
本当にいいんですね。分かりました。私は別に構いませんよ。
但し、こちらから破棄させて頂きますわ。宜しいですね。
★短編から長編に変更します★
書籍に入り切らなかった、ざまぁされた方々のその後は、こちらに載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる