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2章 巡り逢う者達

15 . ショッピング

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「お、大きい……」

「着いた~!」

「いや~電車空いててよかったね」

「私も来るの久しぶりだから、すごく楽しみ」


 ──衝撃的な事実を知ったあの日から数日経った週末の今日、私は加奈ちゃん達と4人で学校から駅5つ離れた場所にあるショッピングモールに来ている。
 もちろん、と言ったらおかしいかもしれなけど、桃さんと葵さんも付いてきてくれていて、万が一にも美緒……黒邪と遭遇してしまってもすぐに対応できるようにしてくれている。
 家からはかなり離れているし大丈夫だと思うけど、念には念をいれないと……

 ……あんなことを知った後だから、学校でも考え込んでしまったり、勉強に身が入らなかったたりしてしまった。もちろん、知ったことを後悔するなんてことはない。知らなかった方が後になって後悔していたと思う。

 ……だけど、考えすぎてのめり込んでしまえば、普通なら見えることも見えなくなってしまうから、気を付けないと。麗叶さんにも心配をかけてしまうだろうし……

 そういった意味でも、今日は良い気分転換の機会になると思う。別のことに意識を向けてこそ見えてくるものもあるかもしれにないし。

 麗叶さんも最近の私の様子を気にして、『一度、先の見えない煩わしさを忘れて楽しんでくると良い』と言って送り出してくれた。

 ……とはいっても、初めてのことが多過ぎて今の時点ですでに疲れ始めてしまっている。集合場所はわかりやすいようにってことで、学校の正門に集合してからみんなで電車に乗って来たけど、電車自体が始めてだったから……

「咲空ちゃんはこのモール初めてだったよね? 何見たいとかある?? 服とか雑貨とか」

「うーん……よく分からないから、みんなが行きたいお店を一緒に見て回りたいな」

 ……そもそも私が行ったことがあるお店って近所のスーパーくらいだし……

「……了解! ハルミンとユイユイは?」

「私は服が買いたいかな~来年から大学生なのに私服全然持ってないし」

「私は参考書かな? ……参考書って言っても楽典とかだけど。加奈ちゃんは?」

「ウチ? う~ん、プリ撮りたい! あと服!」

 プリ?
 !……プリクラ?

 前に美緒が朋夜とか友達とかと撮ったものを見せてくれたことがある。その時は『目が大きくなってて顔の形変わってるな』くらいの印象だったけど、仲の良い人達とそういうものを撮るということに憧れがあった。

 ……ん?
 今の美緒は…ううん、美緒はずっと黒邪、なんだよね?
 ……うん、考えないようにしよう。

「じゃあ、まずプリ撮って、その後で楽器店行って、お昼食べて、服見るがてらブラブラして……って感じかな?」

「賛成!」

「うん、いいと思う」

「うん。……楽しみだなぁ」

「! うん、目一杯楽しもうね!」



* * *



『次は可愛くねこちゃんポーズ! ──3・2・1《カシャッ》……こんな風に撮れたよ』

 ……プリクラってこんな風に撮るんだ。機械のガイド音声が指示してくれて、色々なポーズで写真を撮っていく……したことのないポーズばかりで混乱しながらだったけど、みんなでワイワイしゃべりながら同じポーズで撮影するというのは楽しい。

「あっ、きたきた!」

「めっちゃ盛れたね~」

 撮影とラクガキを終えて少ししたら、取り出し口から出来上がったプリクラが出てきた。分割は2つだから、シール媒体は結華ちゃんと私がもらって、加奈ちゃんと晴海ちゃんはデータで受け取るらしい。

「わぁ……」

 学校の卒業アルバム以外で自分が映った写真なんて、それこそ証明写真とかくらいだから……あっ、引っ越す時に前の家の片付けをしていた時に赤ちゃんの頃の写真は何枚か出てきたっけ? ……もっとも、赤ちゃんの頃のものだから、本当に私かどうかわからないけど。ただ、美緒の写真とは別の場所にあったから、美緒ではないと思う。
 お父さんかお母さんが撮ってくれたのかな……? まぁ、一番可能性が高いのはお祖母ちゃんなんだけど……

 「じゃ、次は楽器店だね!」

「うん。付き合わせちゃってごめんね」

「ごめんなんていらないって! ウチ、ピアノとかドラムの試奏するの好きだし!」

「私も問題ないよ。ちょうどリード買いたいと思ってたし」

「てか、試奏つっても、加奈は適当に鳴らすだけでしょ?」

「当ったり前じゃん! できないもん」

「ふふっ。私も色んなお店見てみたいから、一緒に行きたい。楽器店がどんな雰囲気なのかも気になるし」

「ありがとう」

 楽器店なんて家の側になかったから、普通に気になる。イメージとしては壁にギターがかけてあって、棚には楽譜や教本が並んでる…みたいな感じだけど、実際はどんな感じなんだろう?



「へぇ……こんな感じなんだ」

「ここのお店けっこう広いよね」

「うん。色々な物があって驚いちゃった」

 結華ちゃんが言うように楽器店はとても広くて、フロアには試奏用のピアノや電子のドラムセットなんかがたくさん置かれている。
 ガラスケースのなかにはバイオリンやトランペット、フルートなんかも並んでいて、その近くのスペースには楽器に使う小物なんかが置かれているみたい。

 ……こかにある全てが物珍しい。楽器を間近で見るのも初めてだけど、楽器ってこんなに綺麗なんだ。形や光沢が芸術的というか……

 結華ちゃんが探しているものと、晴海ちゃんが買うリードが反対方向にあったから、いったん別れて探すことになった。
 私は結華ちゃんと一緒にいるんだけど、結華ちゃんは慣れた足取りでお店の中を進んでいる。


「──あっ、これだ」

「最初に言ってた楽典?」

「うん。楽典の問題集で、受験の時に筆記試験の科目になってるから頑張らないと」

「そうなんだ。やっぱり、音大だと他の大学にはない科目とかあるんだね」

「歌うのは好きだけど、音楽理論とかは苦手だからもう大変。でも、絶対に行きたい大学だから」

「そう、なんだ……」

『絶対に行きたい』と言いながら、手にある問題集に視線を落とす結華ちゃん。

 ……結華ちゃんは志望大学を選らんだのは『なんとなく』だって言っていた。だけど、『調べていた時に突然“ここに行きたい”ってなったんだ』って言っていた。 
 きっと、何かあるんだろうな。結華ちゃん自身にも分からない“何か”が。

 ……その“何か”が私にも関係している気がする。
 そして、遠くない未来にそれが明らかになる予感も。








 












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