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第七話 ルイナ妃

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「…王子様、今お時間よろしいでしょうか」

 目が桃色に輝きまだどこか幼さの残る十八歳の娘、ルイナ妃が王子の居室の前でお辞儀する。

「なんだ?」

 裕福なマーレ町内で美しい娘と評判であったルイナを王は気に入った。実年齢より遥かに大人っぽい話し方は彼女が聡明であることを表していた。

ぜひ将来の王妃になってほしいと王は望んだ。ルイナはそれに答えるように王子の元に頻繁に通っていた。

しかし、ここ数日、王子はルイナを居室に通す事を許さなかった。何かあったのだろうかとルイナが思案していると、王子が誰かと話している声が聞こえた。

近くで耳をすませ王子の声を聞いた。

「私の側室にならないか」

落ち着いた澄んだ声がルイナに向かって鋭い刃となって胸をえぐった。

ただ一人、王子の寵愛を受けようと臨んでいたのに……
その為に今日まで努力してきたのに……
糸も簡単に王子の心を掴む女人がいるとは許さない…

ルイナの美しい顔はたちまち怒りをたたえた醜い顔となり澄んでいた筈の心を黒く染め上げてしまった。

嫉妬に駆られたルイナは侍女に女人の後をつけさせ逐一報告を行うように命じた。

女人の正体は男であり王様の子…
ルイナはその真実に驚愕した。
その男は茜瞳魔子とされるため父である王とはともに生きられない…

可哀想に…可哀想に……

ルイナは思わず笑みを浮かべる。
王様の子であろうと茜瞳魔子では噂好きの宮廷では生きて行けないだろう

あの男が宮廷を追い出されるのは時間の問題だ

しかし、一応王子にあの男の件について声をかける必要がありそうだ

あの者が男であると知った時、王子はどんな顔をするであろう。
ルイナは王子が崩れ落ちる姿を想像しほくそ笑んだ。

加えてあの者が茜魔魔子で王様の実の子であると伝えたら…
…………そんなことは言えない。
ルイナの中にある善良の心が後者を伝える事をはばんだ。
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