転生後推しが俺の執事になっていました

七

そういえばユグナ執事って執事をする前になにか仕事をしていたのかな…

このことはゲームの攻略にものっていなかったはずだ。

俺は気になり話を訊いてみることにした。

「ユグナ執事さんって以前なにかお仕事されていたんですか…?」

ユグナ執事は微笑みながらも瞳に少し翳をたたえて話し始めた。

「…そうですね…以前は医術師をしていました」

……えぇ？！そうだったんだ…

ユグナ執事が医術師の仕事をしたことがあるのにどうして他の執事を呼んだんだろう…

「十年も前の事ですよ…私はそこにいる人々を救えなかったんです」

少し気になる…でも訊いていいことなのだろうか…

俺の心を読むかのようにして執事は話す。

「…とある街で大火災が起こりました…私はそこの街で医術師をしていたのですが……五十人ほどの命を助けることができませんでした。
……私の父と母もこの火災で亡くなりました…両親は私が医術師になることを応援してくれ、いつも頼りにしてくれました……

救えなかったという思いが募り…今では医術師として患者の前に立つことができません。

本当に…情けないですよね…目の前で腹痛に耐えているお坊ちゃま一人助けることもできないのですから…」

……そんな過去が……

…今までトラウマに耐えているのは自分だけだと思っていた…

違う形だけれどユグナ執事もつらい過去と戦っているんだ…