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「白猫の兵士達がどこからか私を嗅ぎつけてきたのです。白猫の集団は私を縄で縛り宮殿に連れ戻しました…

しかし…そこには…見るのも無様な死に方をした高貴な猫の死骸が沢山転がっていたのです。

白猫の偉そうな兵士は私の耳元で呟きました。

『貴方が生きていたことはお前の母上である王妃には知らせない…しかし…貴方はここで死んでもらう』

……飲む物、食べる物を与えず私を餓死させようと終宮殿の地下に私を連れ出したのでしょう。

白猫の兵士の首輪には王冠が描かれていました。王冠の意味すること…そう…父上は母上の暗殺事件を知っており見殺しにした。……その後、私が生きていた事までも知っていた……私が死んだことにしようとした父上……私の父上までもが私を死んでほしいと願っていたのです…

……もうこの宮殿には私を愛してくれる家族はいない…全員私を殺そうとした……」

涙を浮かべぐっと歯を食いしばる王子の表情を始めて目にしたのはアファ師が初めてだろう。

それほど王子は人前で感情をあらわにすることをためらっていた。

「地下で息を潜めていた私はあることに気づいた。この宮殿には宮中の者が全くと言っていいほど近づいてこない…

そう、この終宮殿は王達の理不尽な理由で暗殺され捨てられてしまった代々の王子達が眠っている…

この場所は呪われた宮殿とされ、宮中の関係者は誰一匹として近づいてこない…

…皮肉にもこの話は私が幼い頃、母上が話してくれた逸話なのです…教えてくれた母上がこんな場所にはこないでしょう」

ふーっと白い息を吐き王子は続ける。

「ある時、地下に差し込む明かりが地上のものであるのに気づき、私はこの先に抜け穴があるのだと確信しました。 

…誰も立ち寄らず老朽化した板は簡単に外れました。板を登るとそこには…質素ではあるものの小綺麗な終宮殿の中だったのです。

…几の上には沢山の果物や料理が置いてありました

こうして私はここに戻ることになったのです。」

ここまでの王の話を聞きアファ師は疑問に思った。

「終宮殿には誰も通らないはずでしょう?なぜ果物や料理が沢山置かれているのでしょう?」

「…これは宮中で噂に聞いた話ですが、代々の王子と共に処刑されたお付きの者達が亡霊となり、終宮殿に忍び果物や料理を置いてったり、掃除をしてくれるのだとか…

私も会って見たいとは思いますが…霊感がないため一度もその者達に会った事がないのです」

ここまで話をして王子は我にかえった。
せっかく来てくれた来客に対してお茶の一つも出し忘れていたことに
申し訳ないと謝る王子にアファ師は王子様自らがご用意されるのはこちら側が申し訳ないと言った。

「…では王子様は今、食べるものには困られていないということでよいのですか?」

「はい…どうやらそのようです…」

「……王子様は愛されていたのですね」

ふっと微笑むアファ師に王子は思わず先程の意味を聞き返した。

「…それはどういう…」

「お付きの皆さんに…貴方様は愛されていたのです。自分が死んでも子どもの頃から見てきた我が子のような貴方様を愛おしく思っていたのでしょう…

宮中の女性であれば尚更…王の女として働かされる宮女は我が子を生むことができないと聞いています…
その分…想い入れも強かったのでしょう…
…可愛い……可愛い…王宮みんなの子だったのですよ」

アファ師の温かい言葉を聞き、王子の心は熱く震えた。
我慢していた涙がつーっと頬をつたった。

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