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幼年期編

ご神託、賜りました

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俺はゆっくりと顔を上げて、ここに居るのが物語の中の味方ばかりなのを確認した。そして、「結界」と呟いて完全に外との接点を断ち切った。これで、ここでの話は外に漏れない。

「その方・・・・」

全員が呆気にとられている。俺の検証した限りでは、闇属性とは、『目に見えない全てのことを対象としている』と分かった。つまり、何でも出来ちゃうと言う結論になる。目に見えているものは意外と少ないのだ。

「父様、母様。いえ、側妃様。俺は、池に落ちた時、この国に関する神託を授かりました」

突然、俺が明瞭に話し始めたこととその内容にみんな一様に目を見開いている。

「キース。母を側妃様と呼び直したのは何故だ?その方の母だろう」

ショックを隠しきれない側妃様を気遣って父が咎めるように言った。咎めてくれなければ、次の会話に進めないから、これでいい。

「だって、俺はマリーテレーズの双子なんかじゃない。俺を産んで亡くなった側妃様の侍女の子でしょう?」

「なっ!」

この爆弾発言に、全員が目を剥いた。

「誰がそのようなことを言ったのだ!」

「誰も。先程も言ったでしょう?神託を授かったと。その神託は、正妃様が嫁がれた頃から俺が成人するくらいまでのこの国の出来事です。俺の出自もその一部にありました」

「なんてこと」

頭を抱えた6人には悪いが、取り敢えず、掻い摘まんで話すことにする。

「正妃様がこの国に嫁いでこられたのは、あちらの国では縁談がないから。陰湿で悪質な嫌がらせを多くのご令嬢に繰り返して、それを王族の権力で揉み消してたんだからなくて当然。厄介払いの先がここ。先代が、関税の優遇と国境付近にある港と近くにある鉱山とその周囲の森の譲渡で手を打ちましたよね?子供を作らなくてもいいっていうのも条件のひとつ。代わりに正妃となった。ネルロワイエが出来ちゃったのは、父様が媚薬を盛られたから。その媚薬は、確実に妊娠するあの国の王族にのみ伝わる秘伝の薬で、マリーテレーズを妊娠中にも使われましたよね?で、正妃様を妊娠させるくらいならってことで、俺の母親が代わりを務め、俺が生まれた」

「あああああ。4歳児に何という神託を下されるのだ!」

騎士団長が天を向いて嘆き始めた。

「その方が急に流暢に喋り出したのは、神託のせいか?」

「そうです」

「目覚めてから喋らなくなったのは?」

「今までの舌っ足らずな喋り方は難しかったし、ひとりでいれば喋らなくもいいから・・・・」

「魔法は?何処で覚えた?」

「えっと、神託に使い方も適性も出てきたから、試してみちゃった、みたいな?」

「「「「「「ハァ」」」」」」

おそらくは、俺が魔法を使っていたことを追求する、若しくは、6歳までは使わないように諭すためであろう呼び出しが、神託という大事になってしまったのだから、頭が痛いよね。

「神託はその方が成人するまであるのだろう?重要なことを掻い摘まんで話せるか?詳しくは、出来れば、書面にしてもらいたいが、その方、字は書けるのか?」

「鋭意、努力中です!ミミズの這った字でよければ、書くことは出来ます」

俺の力強い返事にクスクスと笑い声が聞こえた。

「いや、いい。そうだな。宰相に代筆させよう」

うん。その方がいいと思うよ。前世を思い出しただけでは、この世界の字は書けなかった。基本50字は覚えたから書けるのだが、この小さな手では、ミミズが這ってしまうのだよ。

「あなたがわたくしの侍女の子であるということは、ここに居る者と老衰で亡くなった産婆しか知りません。あなたがどう思っていようとも、あなたは、わたくしの子です。わたくしは、あなたの母です。分かりましたね?」

俺をその腕に抱き締める側妃様の声は、俺の胸にじんわりと浸透していった。

「畏まりました」

臣下の礼をとった俺を、大人達は溜め息交じりに何とも言えない目で見たのだった。
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