不憫な貴方を幸せにします

紅子

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誓い

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誰もいないのを確認して、化粧室からグランの元に転移した。

「グラン!」

私は目の前に現れたグランに両手を伸ばして抱きついた。驚いているグランを気遣う余裕なんてない。グランの腕の中でやっと息が付けた私は、そのままグランに甘えることにした。

「まだ、お茶会終わってないのにどうした?」

「だって、限界だったんだもん!」

周りの好奇心溢れる目と候補のご令嬢たちの恨みの籠もった視線、王子2人の過剰なまでの接触。どれも私の心を疲弊させるには充分だった。

「やっぱり気に入られたんだ?」

「やっぱりって?」

「自覚があるか知らないけど、ティナは誰よりも可愛い天使だからね?あの2人も例外じゃないってこと」

「ううう。無理。鳥肌たつし。周りが恐ろしいよぉ。グランがいてくれたらそばから離れないのに」

グランは私を抱きかかえて、温室にあるソファに連れて行ってくれた。グランの膝に陣取って、お茶とお菓子を出す。

「辞退したいけど、そうしたら、グランが他のご令嬢に取られちゃうし。第2王子も第3王子も気持ち悪いし鬱陶しいし」

「はは。そんなこと言うのはティナだけだよ。私と目を合わせられるご令嬢なんてティナくらいだ」

私が落ち着いた頃を見計らったかのように、グランは私の髪をクルクルと弄り始めた。

「グラン、手の甲を浄化して?」

あの王子たちに口付けされた場所だ。その後も手を握られたし。

「オニキス。頼む」

オニキスはグランの最上級の守護精霊だ。光系の魔法が使えるから浄化出来るはず。ふわんと私の手が光り、もちもちになった。すっとグランに手の甲を差し出す。一瞬驚いた顔をしたグランだが、意味が分かったようだ。破顔してすぐにそこに口付けた。そして、反対の手の甲にも。

「グランは私とずっと一緒にいてくれるんだよね?」

「ティナが望むなら」

「望むよ。グランがいい。グランじゃなきゃ嫌だ」

甘えるようにグランの首に腕を巻き付けた。

「・・・・私の、お嫁さんになってくれる?」

震える声を必死に抑えているのが、グランの身体から伝わってくる。

「なる!約束だよ!」

勢いよく返事をすると、グランは私をそっと抱き上げ、温室の中でもバラが咲き誇る一画へと連れてきた。そして、私を下ろして跪くと、左胸に手を当てて真剣な表情で瞳を見つめてきた。

「ベルティナ。私の唯ひとりの人。愛しています。どうか私の隣で生涯を共に生きてください。あなたをどんなときも護ると誓います」

「はい。私の愛はあなたに。幸せにすると誓います。大好き」

2人だけの誓い。お互いの守護精霊が見届け人だ。「誓いの印に」とグランは私の額に口付けた。私もお返し、と思ったがちょっと悪戯心が顔を覗かせた。「チュッ」不意打ちでグランの唇に軽く、触れたか触れないかくらいに軽く口づけた。このくらいなら大丈夫かなと。

「ウッ・・・・・・」

駄目だった。グランはそのまま後ろにひっくり返り、オニキスがクッションになって受け止めていた。

『やり過ぎだ!!!』

『触れ合いの皆無だった者には酷なことよな』

ザクロから怒鳴られ、ライムからは呆れられた。オニキスともう1体のグランの守護精霊ベリルからは溜め息を貰った。

「だって、触れ合いにも慣れるくらいには触れ合ってるから、大丈夫かなと。・・・・ごめんなさい。やり過ぎました」

オニキスに回復して貰ったグランは、それからすぐに目を覚ました。先程のことは夢だと処理した模様。「いい夢だった」と言う呟きが聞こえた。

「夢じゃないからね!」

「え?!・・・・ウッ」

『こら!!!また気絶させたいのか!』

「だって!夢にされたら哀しいじゃない。グラン!」

「は、はい!」

「ちょっとずつ慣れようね?」

「え!な、慣れるのか?あれに?ウウウ。ど、努力します」

真っ赤な顔も初々しくて可愛いけど、慣れてもわないと、初夜とか困るから。鼻血噴いて気絶は回避したい。なかなか前途多難そうだ。
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