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追求
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部屋に入ってきた美人とジムを思わず見比べてしまった。神様って不公平だよね。
「なんだ。何か文句でもあるのか?」
じろりと睨まれたが、文句なんてあるわけない。ブンブンブンと勢いよく首を横に振る。ま、まあ、お互いに個性的ということで。
「急に呼び出すなんて、どうしましたか?」
「ああ。ちびの抱えてるお方を見てほしくてな」
私は、ソファーにそっと布にくるんだ女の子を置いた。美人さんは、その子に視線を向けると、はっきりと分かるくらいに目を剥いた。その姿も美しいって凄い。
「ジム。この方を何処で?」
「ちびが連れて来た」
そこで初めて美人さんは私に目を向けた。
「・・・・」
「・・・・」
美人さんに見蕩れる私と不審人物を見るような視線の美人さん。お互いに全然違う理由から言葉を発せずにいる。
「しゃべれよ、お前たち。ちびはミャーサ。ダムが世話を焼いてる奴だ」
「ダムが?」
納得のいっていない表情の美人さんだったが、このままでは埒があかないと判断したのだろう。嫌々ながら私に話しかけてきた。
「私はタマキ。この方を何処から連れてきたのですか?」
「ミャーサと言います。えっと、馬車から棄てられたので拾いました」
「嘘はいけませんよ。この方が見えていることがおかしいと分かっていますか?」
分かっていません。
「・・・・。そんなことより、この子、どうにか出来ないなら、リズのところに連れて行きたいんだけど」
好戦的な美人さんタマキではなく、強面ジムを睨んだ。リズはまだ帰っていないだろう。だから、ここに連れてきたのに。
「無駄ですよ。見えないのに治癒は出来ないでしょう。それに、人族の治癒はこの方には効きませんから」
美人さんが女の子にそっと触れると、女の子はふわっと優しい光に包まれた。少しずつ光が女の子に吸収されて、傷だらけだった女の子は骨と皮は変わらないものの綺麗な肌を取り戻した。
「凄い」
「タマキは医者だ」
「目が覚めたら少しずつ滋養のあるものを与えればすぐに健康体になるでしょう。・・で、あなたは何者ですか?」
治癒が終わるとホッとしたタマキの鋭い視線が再び私に向けられた。私は・・・・。
「スローライフ希望の旅人です」
「「・・・・・・」」
駄目ですか?そうですか。
「ジム、ダムは何と?」
「調査中だとよ。タナートとアキたちで4月かかってそれだ」
私の調査?なんで?なんでよ?アキとロルフも私のこと、調べてたの?私、何かした?・・・・あ、うん、ちょっとしたかも。でも、調べられるようなことはしてないはず。グルグルと頭の中でここに来てからの自分のことが駆け巡る。なんで調べられてるのか分からないことが気持ち悪いし、この世界に巻き込まれ召喚されたことがバレるんじゃないかと、私の脳内はパニック寸前だ。
「経過報告は?」
「王宮に注文を届けたパン屋の荷台から降りたところからしか情報がない。それ以前は全くゼロ。どの国の出入国の記録にもない。見慣れない服を着替えた後、屋台の親父から串焼きをごちそうになって冒険者ギルドに来た」
ほぼほぼ正確に私の足取りを掴んでいることが恐ろしい。どうしよう。ちょっとずつ扉のほうに移動してはみたが、私から目を離さないふたりから逃れられるとも思えなかった。
「で、あなたは何者ですか?」
「・・・・・・」
言葉に詰まる。何者か?それは・・・・。
「この方の姿が見えるあなたは、何者ですか?」
先程より言葉が強い。
「えっ・と、じゅ、住所不定無職で、す?」
自分でも何を言っているか分からない。怖い。美人の真顔の迫力、怖い。涙が零れそうだ。
「そう追い詰めるな、タマキ。ちびは常識がないんだぞ?正攻法で聞いても、頓珍漢な返事が返ってくる。今みたいにな」
助け船を出してくれたつもりのジムの言い分も酷いとしか言いようがなかった。パニックになれば、分かるよ。自分が何言ってるか、分からなくなるって。
「ハァ。とにかく、この方を何処で見つけたのかはしっかりと聞き出してくださいよ?」
「分かった。ミャーサ、宿は《イタチの巣》だったな?」
コクコクと頷く。
「そうか。じゃあ、引き払いに行こうな?《疾風》の連中にも挨拶しないとなぁ」
え?何故?まだ、この国から離れるつもりはないんだけど?
「え?いや、あの・・・・」
「余計なことは言わない。出来るな?」
怖い。笑ってるジムの顔が怖い。助けを求めようにもここにはジムの味方、美人さんタマキしかいない。そのタマキは、甲斐甲斐しく女の子の世話をしている。かくして、私はジムに連行されて、《疾風》のみんなにバイバイをして宿を引き払った。ジムの「ちびに依頼が入った」という言葉を疑う者は誰もいなかった。あ~あ。これが信用というものか。ギルドの裏口から再び執務室に戻ると、タマキがのんびりとお茶をしていた。あの子は綺麗な服に着替えさせられて、変わらずソファーで眠っている。少し顔色もよくなったようだ。ほっとした。そして、もうひとり。
「師匠!!!」
壁により掛かり疲れた顔をしたタナートが私に片手をあげていた。
「やあ、ミャーサ。早速やらかしてくれたようだねぇ」
「はあ?!師匠のせいで常識なしって言われてるんですけどぉ?!それに!私の調査ってなんなんですかあ!!!」
そうだよ!ぜ~んぶ、タナートのせいだ。
「それは、私のせいじゃない。君の常識がおかしいのさ。常識を突き破ってしまう君の面倒なんて見れるのは私くらいだよ?」
そんな・・・・。
「タナート。そんなことはどうでもいいですから、この方のことを聞き出しなさい」
「へいへい」
美人さんの冷たく鋭い視線は怖いからこっちに向けないでもらいたい。
「さあ、いろいろと吐いてもらおうか」
ジムの一言で私への尋問が始まった。
「なんだ。何か文句でもあるのか?」
じろりと睨まれたが、文句なんてあるわけない。ブンブンブンと勢いよく首を横に振る。ま、まあ、お互いに個性的ということで。
「急に呼び出すなんて、どうしましたか?」
「ああ。ちびの抱えてるお方を見てほしくてな」
私は、ソファーにそっと布にくるんだ女の子を置いた。美人さんは、その子に視線を向けると、はっきりと分かるくらいに目を剥いた。その姿も美しいって凄い。
「ジム。この方を何処で?」
「ちびが連れて来た」
そこで初めて美人さんは私に目を向けた。
「・・・・」
「・・・・」
美人さんに見蕩れる私と不審人物を見るような視線の美人さん。お互いに全然違う理由から言葉を発せずにいる。
「しゃべれよ、お前たち。ちびはミャーサ。ダムが世話を焼いてる奴だ」
「ダムが?」
納得のいっていない表情の美人さんだったが、このままでは埒があかないと判断したのだろう。嫌々ながら私に話しかけてきた。
「私はタマキ。この方を何処から連れてきたのですか?」
「ミャーサと言います。えっと、馬車から棄てられたので拾いました」
「嘘はいけませんよ。この方が見えていることがおかしいと分かっていますか?」
分かっていません。
「・・・・。そんなことより、この子、どうにか出来ないなら、リズのところに連れて行きたいんだけど」
好戦的な美人さんタマキではなく、強面ジムを睨んだ。リズはまだ帰っていないだろう。だから、ここに連れてきたのに。
「無駄ですよ。見えないのに治癒は出来ないでしょう。それに、人族の治癒はこの方には効きませんから」
美人さんが女の子にそっと触れると、女の子はふわっと優しい光に包まれた。少しずつ光が女の子に吸収されて、傷だらけだった女の子は骨と皮は変わらないものの綺麗な肌を取り戻した。
「凄い」
「タマキは医者だ」
「目が覚めたら少しずつ滋養のあるものを与えればすぐに健康体になるでしょう。・・で、あなたは何者ですか?」
治癒が終わるとホッとしたタマキの鋭い視線が再び私に向けられた。私は・・・・。
「スローライフ希望の旅人です」
「「・・・・・・」」
駄目ですか?そうですか。
「ジム、ダムは何と?」
「調査中だとよ。タナートとアキたちで4月かかってそれだ」
私の調査?なんで?なんでよ?アキとロルフも私のこと、調べてたの?私、何かした?・・・・あ、うん、ちょっとしたかも。でも、調べられるようなことはしてないはず。グルグルと頭の中でここに来てからの自分のことが駆け巡る。なんで調べられてるのか分からないことが気持ち悪いし、この世界に巻き込まれ召喚されたことがバレるんじゃないかと、私の脳内はパニック寸前だ。
「経過報告は?」
「王宮に注文を届けたパン屋の荷台から降りたところからしか情報がない。それ以前は全くゼロ。どの国の出入国の記録にもない。見慣れない服を着替えた後、屋台の親父から串焼きをごちそうになって冒険者ギルドに来た」
ほぼほぼ正確に私の足取りを掴んでいることが恐ろしい。どうしよう。ちょっとずつ扉のほうに移動してはみたが、私から目を離さないふたりから逃れられるとも思えなかった。
「で、あなたは何者ですか?」
「・・・・・・」
言葉に詰まる。何者か?それは・・・・。
「この方の姿が見えるあなたは、何者ですか?」
先程より言葉が強い。
「えっ・と、じゅ、住所不定無職で、す?」
自分でも何を言っているか分からない。怖い。美人の真顔の迫力、怖い。涙が零れそうだ。
「そう追い詰めるな、タマキ。ちびは常識がないんだぞ?正攻法で聞いても、頓珍漢な返事が返ってくる。今みたいにな」
助け船を出してくれたつもりのジムの言い分も酷いとしか言いようがなかった。パニックになれば、分かるよ。自分が何言ってるか、分からなくなるって。
「ハァ。とにかく、この方を何処で見つけたのかはしっかりと聞き出してくださいよ?」
「分かった。ミャーサ、宿は《イタチの巣》だったな?」
コクコクと頷く。
「そうか。じゃあ、引き払いに行こうな?《疾風》の連中にも挨拶しないとなぁ」
え?何故?まだ、この国から離れるつもりはないんだけど?
「え?いや、あの・・・・」
「余計なことは言わない。出来るな?」
怖い。笑ってるジムの顔が怖い。助けを求めようにもここにはジムの味方、美人さんタマキしかいない。そのタマキは、甲斐甲斐しく女の子の世話をしている。かくして、私はジムに連行されて、《疾風》のみんなにバイバイをして宿を引き払った。ジムの「ちびに依頼が入った」という言葉を疑う者は誰もいなかった。あ~あ。これが信用というものか。ギルドの裏口から再び執務室に戻ると、タマキがのんびりとお茶をしていた。あの子は綺麗な服に着替えさせられて、変わらずソファーで眠っている。少し顔色もよくなったようだ。ほっとした。そして、もうひとり。
「師匠!!!」
壁により掛かり疲れた顔をしたタナートが私に片手をあげていた。
「やあ、ミャーサ。早速やらかしてくれたようだねぇ」
「はあ?!師匠のせいで常識なしって言われてるんですけどぉ?!それに!私の調査ってなんなんですかあ!!!」
そうだよ!ぜ~んぶ、タナートのせいだ。
「それは、私のせいじゃない。君の常識がおかしいのさ。常識を突き破ってしまう君の面倒なんて見れるのは私くらいだよ?」
そんな・・・・。
「タナート。そんなことはどうでもいいですから、この方のことを聞き出しなさい」
「へいへい」
美人さんの冷たく鋭い視線は怖いからこっちに向けないでもらいたい。
「さあ、いろいろと吐いてもらおうか」
ジムの一言で私への尋問が始まった。
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