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夢じゃなかった
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どれくらい意識を失っていたのか。目が覚めたときには辺りは暗く、月明かりがなければ、真っ暗闇だっただろう。そっとカーテンから顔を覗かせたが、周りには誰も居なくなっていた。
「夢じゃなかった・・・・」
ぺたんと座った私のお尻に触れるのは冷たい石の感触。明らかに畳とか土ではない。
「どうしよう」
あの後気絶したせいで、名乗り出ることが出来ないまま、ここに放置されてしまった。召喚とか聖女とかこの世界とか。異世界に来てしまったと認めざるを得ない。
「はぁ」
今後を保証された彼女と違って私はどうすればいいのか?保護してくださいと召喚に巻き込まれましたと名乗り出る?そう考えた途端、背筋をゾクッと嫌な感覚が襲った。
「やめておこう。嫌な予感がする」
碌な扱いをされないかもしれない。人ひとりの人生を保証するからには見返りを求められるだろう。彼女だって、聖女の力を求められたじゃないか。
「とりあえず、ここから出よう」
カーテンの向こうは広いホールだった。今はガランとしてちょっと怖いくらいだ。外へと繋がる全面ガラス張りの扉の向こうはテラスになっていて、その先は・・・・。芝生が見える。ここはラッキーなことに1階だった。観音開きの扉を開けて、闇に紛れるように木の陰を伝って出口を探すが、なかなか見つからない。ていうか、広すぎじゃない?行けども行けどもガーデンと呼べる庭が広がっていた。どれだけ歩いたのか。漸く庭でないところに出ることが出来た。目と鼻の先には、アラビアンな露出の多い服を着た女性が2人話をしながら、手に持っているものを棄てているようだ。
「ほんと、どうしてこれが喜ばれると思ったのかしら。暑そうなフード付きのマントにロングブーツなんて履くわけないじゃない!」
「仕方ないわよ。あの方、3つ先の国の人ですもの。ここと違って寒いらしいわよ?」
「それに、私、王宮でも上級の女官よ。アイテムバッグなんて、宮殿内に持ち込めないわ。家族に送るにも一旦部屋に持っていかないと梱包も出来ないじゃない」
「まあ、そうね。いいじゃない。そのかわり、ネックレスはいいもの貰ったんでしょ?」
「まあね」
そんな会話をしながら、2人は何処かへ行ってしまった。ここって、王宮なのか。通りで広いはずだわ、
「・・・・棄てられたものなら、拾ってもいいよね?」
私は急いで木の陰から出ると、彼女が棄てたアイテムバッグにロングブーツをしまい、フード付きのマントを羽織った。ついでにそこに棄ててあるシルクとおぼしき布と彼女たちが着ていたようなデザインの、少し破れた服をいただくことにした。
ラッキー♪
アイテムバッグなんて高価なものじゃないのかな?それを棄てるなんて勿体ない。さて、どうやってここから出ようか?私は彼女たちが歩いて行ったのとは反対方向に向かうことにした。暫く歩いていると、今度は、3人の男の人に遭遇した。
「やっと帰ってこれたぜ」
「おい!ちゃんと浄化しろよ?魔物の体液を持ち込むと管理人がうるさいぞ」
「分かってるよ。浄化は魔力を取られるから、討伐の後はキツいんだよ」
「洗浄じゃ落ちないんだから仕方ないさ」
「腹減ったな。早く食堂行こうぜ」
ぐぅ~。
私もお腹減った。さすがにゴミ捨て場に食べ物はなかった。空腹を訴えるお腹を擦りながら、更に歩を進める。すると、ラッキーなことに、畑に辿り着いた。無断でいただくのは気が引けるが、背に腹は代えられない。それに、勝手に喚び寄せたのはこの世界の人たちだ。おまけとは言えちょっとくらいいただいても罰は当たるまい。すぐに食べられそうなトマト、キュウリ、レタス、トウモロコシと少し離れたところに植わっていた果物を多めに頂戴した。お金、ないからね。次にいつ食べ物を手に入れられるか分からない。
「出口が見つからない」
歩き疲れてしまった私は、奥まった場所にある木の根元に腰を下ろした。空腹も限界。トマトをふたつとキュウリをひとつ食べて、少し落ち着いた。満腹ではなくてもお腹が満たされた私は、うとうとと眠くなってしまった。よく歩いたからね。仕方なく、今日はここまで。眠ることにした。
「おい!頼んであった数と違うじゃないか。1ケース足りないぞ!」
「申し訳ありません!ここに運ぶときにつまずいて落としてしまいまして。数は間違いなく注文通りございます。ですが、予備の分が足りなくて、ですね」
「ああ。それなら、問題ない。注文自体多めにしてあったんだ。怒鳴って悪かったな。落としたパンは?」
パンだと!遠くから聞こえる声にはっと目を覚ました私は、寝起きの頭を無理矢理たたき起こして、聞こえてくる声に意識を集中した。
「食べられませんので、混ざらないよう馬車に戻してあります」
「12345・・・・・・。確かにある。ご苦労だったな」
「では、これにて」
あの人について行けば、ここから出られる!少し離れたところに、幌付きの荷馬車があった。男が御者台に乗り込んだのを確認して、私も急いで背後に回り、荷台に乗った。中には箱が山積みになっている。隠れるにはちょうどいい。ガタッと荷馬車が動き出した。ガタガタと随分揺れる。お尻が痛くなりそうだ。落としたというパンを探していると、ガタッと荷馬車が止まった。
「ご苦労。一応中を確かめさせてもらうぞ」
見つかっては不味い。私は慌てて箱の隙間に身体を捩じ込ませた。荷台に光が射す。
「よし、行っていいぞ」
ガタゴトと荷馬車が再び動き出す。どうやら、上手く外に出られたらしい。必死で探し出したパンを気付かれないくらいの数、アイテムバッグと自分の胃に急いで詰め込んだ。そして、賑やかな通りに出る寸前に、周りに誰も居ないことを確認して、荷馬車から飛び降りる。
さて、この後は、どうしようかな?
「夢じゃなかった・・・・」
ぺたんと座った私のお尻に触れるのは冷たい石の感触。明らかに畳とか土ではない。
「どうしよう」
あの後気絶したせいで、名乗り出ることが出来ないまま、ここに放置されてしまった。召喚とか聖女とかこの世界とか。異世界に来てしまったと認めざるを得ない。
「はぁ」
今後を保証された彼女と違って私はどうすればいいのか?保護してくださいと召喚に巻き込まれましたと名乗り出る?そう考えた途端、背筋をゾクッと嫌な感覚が襲った。
「やめておこう。嫌な予感がする」
碌な扱いをされないかもしれない。人ひとりの人生を保証するからには見返りを求められるだろう。彼女だって、聖女の力を求められたじゃないか。
「とりあえず、ここから出よう」
カーテンの向こうは広いホールだった。今はガランとしてちょっと怖いくらいだ。外へと繋がる全面ガラス張りの扉の向こうはテラスになっていて、その先は・・・・。芝生が見える。ここはラッキーなことに1階だった。観音開きの扉を開けて、闇に紛れるように木の陰を伝って出口を探すが、なかなか見つからない。ていうか、広すぎじゃない?行けども行けどもガーデンと呼べる庭が広がっていた。どれだけ歩いたのか。漸く庭でないところに出ることが出来た。目と鼻の先には、アラビアンな露出の多い服を着た女性が2人話をしながら、手に持っているものを棄てているようだ。
「ほんと、どうしてこれが喜ばれると思ったのかしら。暑そうなフード付きのマントにロングブーツなんて履くわけないじゃない!」
「仕方ないわよ。あの方、3つ先の国の人ですもの。ここと違って寒いらしいわよ?」
「それに、私、王宮でも上級の女官よ。アイテムバッグなんて、宮殿内に持ち込めないわ。家族に送るにも一旦部屋に持っていかないと梱包も出来ないじゃない」
「まあ、そうね。いいじゃない。そのかわり、ネックレスはいいもの貰ったんでしょ?」
「まあね」
そんな会話をしながら、2人は何処かへ行ってしまった。ここって、王宮なのか。通りで広いはずだわ、
「・・・・棄てられたものなら、拾ってもいいよね?」
私は急いで木の陰から出ると、彼女が棄てたアイテムバッグにロングブーツをしまい、フード付きのマントを羽織った。ついでにそこに棄ててあるシルクとおぼしき布と彼女たちが着ていたようなデザインの、少し破れた服をいただくことにした。
ラッキー♪
アイテムバッグなんて高価なものじゃないのかな?それを棄てるなんて勿体ない。さて、どうやってここから出ようか?私は彼女たちが歩いて行ったのとは反対方向に向かうことにした。暫く歩いていると、今度は、3人の男の人に遭遇した。
「やっと帰ってこれたぜ」
「おい!ちゃんと浄化しろよ?魔物の体液を持ち込むと管理人がうるさいぞ」
「分かってるよ。浄化は魔力を取られるから、討伐の後はキツいんだよ」
「洗浄じゃ落ちないんだから仕方ないさ」
「腹減ったな。早く食堂行こうぜ」
ぐぅ~。
私もお腹減った。さすがにゴミ捨て場に食べ物はなかった。空腹を訴えるお腹を擦りながら、更に歩を進める。すると、ラッキーなことに、畑に辿り着いた。無断でいただくのは気が引けるが、背に腹は代えられない。それに、勝手に喚び寄せたのはこの世界の人たちだ。おまけとは言えちょっとくらいいただいても罰は当たるまい。すぐに食べられそうなトマト、キュウリ、レタス、トウモロコシと少し離れたところに植わっていた果物を多めに頂戴した。お金、ないからね。次にいつ食べ物を手に入れられるか分からない。
「出口が見つからない」
歩き疲れてしまった私は、奥まった場所にある木の根元に腰を下ろした。空腹も限界。トマトをふたつとキュウリをひとつ食べて、少し落ち着いた。満腹ではなくてもお腹が満たされた私は、うとうとと眠くなってしまった。よく歩いたからね。仕方なく、今日はここまで。眠ることにした。
「おい!頼んであった数と違うじゃないか。1ケース足りないぞ!」
「申し訳ありません!ここに運ぶときにつまずいて落としてしまいまして。数は間違いなく注文通りございます。ですが、予備の分が足りなくて、ですね」
「ああ。それなら、問題ない。注文自体多めにしてあったんだ。怒鳴って悪かったな。落としたパンは?」
パンだと!遠くから聞こえる声にはっと目を覚ました私は、寝起きの頭を無理矢理たたき起こして、聞こえてくる声に意識を集中した。
「食べられませんので、混ざらないよう馬車に戻してあります」
「12345・・・・・・。確かにある。ご苦労だったな」
「では、これにて」
あの人について行けば、ここから出られる!少し離れたところに、幌付きの荷馬車があった。男が御者台に乗り込んだのを確認して、私も急いで背後に回り、荷台に乗った。中には箱が山積みになっている。隠れるにはちょうどいい。ガタッと荷馬車が動き出した。ガタガタと随分揺れる。お尻が痛くなりそうだ。落としたというパンを探していると、ガタッと荷馬車が止まった。
「ご苦労。一応中を確かめさせてもらうぞ」
見つかっては不味い。私は慌てて箱の隙間に身体を捩じ込ませた。荷台に光が射す。
「よし、行っていいぞ」
ガタゴトと荷馬車が再び動き出す。どうやら、上手く外に出られたらしい。必死で探し出したパンを気付かれないくらいの数、アイテムバッグと自分の胃に急いで詰め込んだ。そして、賑やかな通りに出る寸前に、周りに誰も居ないことを確認して、荷馬車から飛び降りる。
さて、この後は、どうしようかな?
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