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部活の手続き

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セイヤが調べてくれた部活を作る条件には、三人以上の部員と担当教員の確保が必要と記されていた。


「もう一人男子を見つけないといけないのか?セイヤは心当たりあるか?」


「今のところはないね。緑埜君も赤井君も興味ないだろうしね」


「うん?誰?」


「クラスメイトの名前ぐらいは覚えようよ。もう一緒のクラスになって一か月経つよ」


俺はセイヤに諭されて、視線を向けると廊下側に座った二人の男子に視線を向ける。


緑埜洋平は、緑髪にやる気のなさそうな顔で、フードを被って眠りについている。
赤井隼人は、赤髪で眼鏡をかけた文系男子で、誰とも話すことなく本を読んでいた。


二人ともセイヤほどではないが、イケメンの綺麗な顔をしている。


「誰も見つからなかったら、声をかけてみるか?」


「う~ん。ヨルは話したことなかったよね?僕から声をかけてみるよ」


「そうか?頼む」


「うん。その代わり、ヨルには生徒会へ行って部活創設の手続きを頼むね」


生徒会と言われて、会長の立派な胸を思い出す。
机で弾む胸は見ごたえ十分だった。


「わかった。生徒会に行けばわかるのか?」


「うん。多分、書記の最上照美先輩に頼めばいいんじゃないかな?生徒会だとあの人が一番まともそうだから」


「よし。じゃあ昼休みはそれぞれ行動に出るぞ」


セイヤと拳をぶつけ合う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼休みになって、生徒会室の扉をノックする。


「は~い」


間の抜けた声が中から聞こえて、会長が扉を開いた。


「あら~黒瀬君ではありませんか?」


「東堂会長。お一人ですか?」


「ええ、ええ。今日はお一人なんです。何かご用ですか?」


なぜか嬉しいそうに覗き込まれる。
距離が近い。胸が当たってる。


「うん?どうかしましたか?」


「あっあの!部活を作ろうと思うんです?!」


なんとか胸の魔力を突破して用件を口にする。


「あら?部活を作るですか?男性である黒瀬君が?」


「はい。おかしいですか?」


「いえいえいえ、男性がやる気になってくださるのはありがたいです。ただ、部活動発足にあたる規約はご存じですか?」


少し真面目な話をするために生徒会室に招き入れられる。


生徒会長自らお茶を入れてもらい。
二人で向かい合うようにソファーへと腰を下ろした。


「はい。三人以上の部員と担当教員の確保ですよね?」


「そうです。黒瀬君はどのような部活をお作りになるおつもりですか?」


おっとりと天然な様子で話す生徒会長だと思っていた。


今日はいつもと違う態度に、前回の印象は間違いだったかもしれない。


他の生徒会員がいなくなり、二人きりで話す生徒会長は知性と気品を兼ね備えた年上の女性だった。ただ、少し疲れた様子が見て取れる。


「女子を応援する部活です」


「へっ?」


紅茶を口につけた会長へ部活内容を伝えると、セイヤに応援団だと言ったときのように驚いた顔をする。


「女性を応援するんですか?」


「そうです。その名も男子応援団」


チンプな名前だと思う。
だけど、貞操概念逆転世界ではこれ以上わかりやすい名前はない。


「スポーツの大会に応援に行ったり、文化分の活動を応援したり、個人でも応援してほしいという女子を応援しようと思います」


「うふ、うふふふふふあははは。面白い。面白いですね。それ」


会長は何を想像したのか、笑いながらソファーへともたれる。
笑うたびにお胸様が弾んで目が奪われる。


「それは私のことも応援していただけるんですよね?」


「会長を?まぁ、望むなら応援しますが、一つだけ条件を作ろうと思っています」


「条件?」


「はい。男子が応援したいと思う女子限定です。部員が応援したいと思わなければ応援しません」


自信たっぷりに宣言すると、会長は考える素振りを見せる。


しばらく返答を待っていると、会長は目をキラキラさせながら俺を見た。


「傲慢で身勝手、自己中心的で我儘。とても、ふざけた部活ですね」


こちらを批判しているような言葉ではあるが、会長の顔はどこか恍惚としていて、妖艶に見えた。


指はぷっくりとした唇に当てられ、片方の指は心臓をまさぐるように胸へと当てられる。


「ハァ~ですが……とても面白い。女性に媚びる行為をしているくせに、女性を選ぶのは男性だという。本当に我儘」


試されているような、妖艶さの中に鋭い視線が混じり合う。


「でも、だからこそ貴重で女性達に選んでもらいたいと思わせるには十分な容姿……どこまで計算しているのでしょうね?」


小さな声で発せられた言葉は聞き取れなかった。


「いいでしょう。条件さえ満たしていただければ部活動として認めます」


「ありがとうございます!!!」


俺は立ち上がって勢いよく頭を下げた。


「ふふふ、本当に面白いですね。ねぇ黒瀬君。たとえばではありますが……私が、今。あなたの応援をしてもらいたいと言ったらどんなことをしてくれますか?」


先ほどから感じる視線。
少し気怠そうな疲れた態度。
妖艶な雰囲気。
ここに来て試すような言葉。


ヨルはしばらく考えてから会長の後ろへと回り込む。


「レイカさん。お疲れ様」


そう言って彼女を後ろから抱きしめる。


「えっえっ?えっえぇぇぇぇ!!!だっダメですよ」


戸惑う会長を逃がさないように優しく抱きしめる。


先ほどのから言動で、会長が疲れていること。
欲求不満気味であると判断した。


もしも、俺が元の世界で女性から応援してもらえると言われたら。
ギュッと抱きしめてお疲れ様と言われたい。


もちろん、相手がOKならその続きもしたい。


「いつも応援してます。レイカ会長が頑張って生徒会を運営してくれてるから僕らは安心して高校に来れています」


大げさなことを言っているかもしれない。


体温が伝わるぐらいの間。抱きしめ続けて身体を離した。


「いかがですか?」


会長は最初こそ抵抗していたが、途中からは身を委ねてくれていた気がする。


「へっ?はっ!いえ。あの。結構なお手前でした……」


会長への応援が認めてもらえたようだ。


会話を終えて生徒会長室を後にした。
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