98 / 107
最終章 混線の処女
8
しおりを挟む
「旺 汰?……なんだオマエ……オレと張り合おうってのか?オレのキス、ヘタクソだと思ってるんだろうコノヤロー!オレの本気、見せてやる!」
お互いした事もないキスは、ただ唇を合わせていただけのようなもの。
そんな不恰好でこどもの遊びのようなキスは息継ぎのタイミングも分からないまま繰り返され、喘ぎながら酸素にすがり、張り合うように夢中になって唇を合わせた。
そのうちに俺は虹生の腕を強く掴み、虹生は言葉も出さなくなった。
ただふたりで続けられている遊戯に、周りの音も何も耳に入らなくなる。
持っていた傘は放り出し、ずぶ濡れになろうがお構いなし。
俺たちが昔遊んだ秘密基地――
世界はそこにいる自分たちだけになっていた。
そう周りが見えなくなっていたのは、どうやら俺だけだったらしい。
彼は俺と自分の空間を守っていた。
それはきっと〝幼馴染み、同性〟そして彼の戸惑いという空間。
不安定なふたりのバランスは後ろ向きのまま俺に圧されていた虹生の足下を滑らせ、彼の腕を強く掴んでいた俺と一緒に倒れてしまう。
虹生がそれまで守っていた空間はそれによってなくなり、そのまま俺は虹生の上に重なって自分の邪魔をする彼の腕をチカラで押さえるまでして、口づけを止める事はしなかった。
酸素よりも欲しくなる虹生の唇。
耳に入って来るのは、ふたりの混ざり合う吐息。
今まで感じた事もない人の体温を帯びたやわらかく甘い風は、それまで秘密に作っていた想像の世界をより色鮮やかにさせ、その中で光るような鼓動を響かせ、初めて知るその甘美な世界にすっかり飲まれてしまっていた。
それに誘われ、知らない自分が彼の前に音もなく現れた。
俺の手は彼の腕を離れ、カラダの上を彷徨い始める。
彼の唇を自分の唇で確かめながら、彼の素肌にまで触れようと服の中に手を潜らせた。
「 旺汰! 」
いつまで経っても自分から離れないうえに、挙動も怪しくなって来た俺に痺れを切らした虹生は突然首を大きく振り、自分から俺を乱暴に離した。
そして俺は平手打ちを食らった。
横たわったまま俺を見つめていた彼の目を、今でも覚えている。
真っ直ぐに俺の奥までも貫くようにただ真っ直ぐに、瞬きもしなかった大きな瞳。
やっと我に返った俺は、彼の目を見つめ返す事しかできなかった。
昔から知る彼の事をなぜ自分は……
〈サーーーーーーー・・・・・〉
雨の音が再び聞こえて来た。
ここは昔遊んだ秘密基地の林。
決して何かと間違ったわけではない。
虹生…… 俺が彼に堕ちた日
そして今日 俺は彼の中に入る
お互いした事もないキスは、ただ唇を合わせていただけのようなもの。
そんな不恰好でこどもの遊びのようなキスは息継ぎのタイミングも分からないまま繰り返され、喘ぎながら酸素にすがり、張り合うように夢中になって唇を合わせた。
そのうちに俺は虹生の腕を強く掴み、虹生は言葉も出さなくなった。
ただふたりで続けられている遊戯に、周りの音も何も耳に入らなくなる。
持っていた傘は放り出し、ずぶ濡れになろうがお構いなし。
俺たちが昔遊んだ秘密基地――
世界はそこにいる自分たちだけになっていた。
そう周りが見えなくなっていたのは、どうやら俺だけだったらしい。
彼は俺と自分の空間を守っていた。
それはきっと〝幼馴染み、同性〟そして彼の戸惑いという空間。
不安定なふたりのバランスは後ろ向きのまま俺に圧されていた虹生の足下を滑らせ、彼の腕を強く掴んでいた俺と一緒に倒れてしまう。
虹生がそれまで守っていた空間はそれによってなくなり、そのまま俺は虹生の上に重なって自分の邪魔をする彼の腕をチカラで押さえるまでして、口づけを止める事はしなかった。
酸素よりも欲しくなる虹生の唇。
耳に入って来るのは、ふたりの混ざり合う吐息。
今まで感じた事もない人の体温を帯びたやわらかく甘い風は、それまで秘密に作っていた想像の世界をより色鮮やかにさせ、その中で光るような鼓動を響かせ、初めて知るその甘美な世界にすっかり飲まれてしまっていた。
それに誘われ、知らない自分が彼の前に音もなく現れた。
俺の手は彼の腕を離れ、カラダの上を彷徨い始める。
彼の唇を自分の唇で確かめながら、彼の素肌にまで触れようと服の中に手を潜らせた。
「 旺汰! 」
いつまで経っても自分から離れないうえに、挙動も怪しくなって来た俺に痺れを切らした虹生は突然首を大きく振り、自分から俺を乱暴に離した。
そして俺は平手打ちを食らった。
横たわったまま俺を見つめていた彼の目を、今でも覚えている。
真っ直ぐに俺の奥までも貫くようにただ真っ直ぐに、瞬きもしなかった大きな瞳。
やっと我に返った俺は、彼の目を見つめ返す事しかできなかった。
昔から知る彼の事をなぜ自分は……
〈サーーーーーーー・・・・・〉
雨の音が再び聞こえて来た。
ここは昔遊んだ秘密基地の林。
決して何かと間違ったわけではない。
虹生…… 俺が彼に堕ちた日
そして今日 俺は彼の中に入る
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
マフィアのペットになりました。
かとらり。
BL
藤谷真緒はごく普通の日本人。
ある時中国に出張している父親に会いに行ったら、チャイニーズマフィアに誘拐されて次期トップの李颯凛(リ・ソンリェン)に飼われることになってしまう。
「お前は俺のペットだ」
真緒は颯凛に夜な夜な抱かれてー…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる