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最終章 混線の処女
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昨日から言われていた悪天候による臨時休校は、俺たちに思わぬ時間を与えてくれた。
朝のうちに親の元に入った学校からの一斉メールを見て、車の運転が得意じゃない母親は〝アンタたちが羨ましい〟と溢し、いつもより早くに出勤した。
外を見ても天気予報の警報が大げさに思えるほど、そんな空模様には見えなかった。
厄介な低気圧がこの街の上を通るのは、これからなのだろうか。
乗り物等を使う遠方から通学をしている者の足には、既に天候の影響が出ているのかもしれない。
そうボンヤリ考えながら、頭の中はもう別の事を考えていた。
こんな日、本当は午後の三時までは家から出ずに、自習してろとはなっている。
けれどそれにならう考えは、当たり前のように自分の中になかった。
嵐が来る前に、虹生を自分の元に連れて来なければ。
【ウチに来る?迎えに行ってもいい?】
スマホがそばにあったのか、すぐに既読が付いた。
【迎え?自分で行けるよ】
―【コンビニ寄ってから行く 何か買って来て欲しい物ある?】
【俺もコンビニ行きたいから迎えに行く】
【分かった】
少し前の自分と今の自分は、彼への接し方がきっと違う。
些細な所に自分の温度が表れる。
彼もそれに気付く事があるのか、時々以前にはなかった間合いを感じる。
虹生の家を訪ねると、オフクロさんも玄関に姿を見せた。
いつ見ても彼は母親似だ、とそう思う。
「おはようございます」
「おはよう旺ちゃん いつもナナと遊んでくれてありがとね お母さん元気?」
「何、ガキに言うような事、言ってンだよ」
「こんな天気だからって、来るお客もいるの だからノンビリもしていられない……アンタたちが羨ましい今のうちだと思って、存分にやって……行ってらっしゃい」
と、俺の母親と同じ事を、虹生のオフクロさんも言った。
虹生のオフクロさんは、自宅で美容室を営んでいる。
丁度店の真上に虹生の部屋があり、俺たちの放課後の過ごし方はそれも含め配意した始まりだったのではと、今になって思う。
親からしたら俺たちはまだまだ未熟なこどもなのだろうと、最近ふと考える。
そこにお互い見えていない、差異があると感じるからだ。
俺たちの成長を一目で見せてしまうのは、きっと毎日袖を通している制服。
いつの間にか蕾を付けている庭の花のように、俺たちのカラダもそこからはみ出して来る。
基があってやっと気が付く。制服のお陰でそのくらいには、普段の俺たちを隠す事が出来る。
朝のうちに親の元に入った学校からの一斉メールを見て、車の運転が得意じゃない母親は〝アンタたちが羨ましい〟と溢し、いつもより早くに出勤した。
外を見ても天気予報の警報が大げさに思えるほど、そんな空模様には見えなかった。
厄介な低気圧がこの街の上を通るのは、これからなのだろうか。
乗り物等を使う遠方から通学をしている者の足には、既に天候の影響が出ているのかもしれない。
そうボンヤリ考えながら、頭の中はもう別の事を考えていた。
こんな日、本当は午後の三時までは家から出ずに、自習してろとはなっている。
けれどそれにならう考えは、当たり前のように自分の中になかった。
嵐が来る前に、虹生を自分の元に連れて来なければ。
【ウチに来る?迎えに行ってもいい?】
スマホがそばにあったのか、すぐに既読が付いた。
【迎え?自分で行けるよ】
―【コンビニ寄ってから行く 何か買って来て欲しい物ある?】
【俺もコンビニ行きたいから迎えに行く】
【分かった】
少し前の自分と今の自分は、彼への接し方がきっと違う。
些細な所に自分の温度が表れる。
彼もそれに気付く事があるのか、時々以前にはなかった間合いを感じる。
虹生の家を訪ねると、オフクロさんも玄関に姿を見せた。
いつ見ても彼は母親似だ、とそう思う。
「おはようございます」
「おはよう旺ちゃん いつもナナと遊んでくれてありがとね お母さん元気?」
「何、ガキに言うような事、言ってンだよ」
「こんな天気だからって、来るお客もいるの だからノンビリもしていられない……アンタたちが羨ましい今のうちだと思って、存分にやって……行ってらっしゃい」
と、俺の母親と同じ事を、虹生のオフクロさんも言った。
虹生のオフクロさんは、自宅で美容室を営んでいる。
丁度店の真上に虹生の部屋があり、俺たちの放課後の過ごし方はそれも含め配意した始まりだったのではと、今になって思う。
親からしたら俺たちはまだまだ未熟なこどもなのだろうと、最近ふと考える。
そこにお互い見えていない、差異があると感じるからだ。
俺たちの成長を一目で見せてしまうのは、きっと毎日袖を通している制服。
いつの間にか蕾を付けている庭の花のように、俺たちのカラダもそこからはみ出して来る。
基があってやっと気が付く。制服のお陰でそのくらいには、普段の俺たちを隠す事が出来る。
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