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第五章 Prism
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オレとの口づけもオレのカラダを触る事にも、旺汰はもう半端な事はしない。幼馴染みの躊躇いもない。
いつかオレは彼に言った〝こんなカラダで良ければオマエにやる〟。
彼の視線も彼の胸の温度も、自分以外の誰かのものになるのが嫌だった。
オレはそこを自分の居場所にしたかった。
そして彼はオレのカラダを自分のもののようにして行き、オレも旺汰に自分を預ける事に以前のような戸惑いは薄れて行った。
いいの?大丈夫なの?
い……いよ……旺汰……
まるでオンナを相手にしてるような物言いに、笑いそうになったがそれはすぐに胸の中で消えた。
先日の図書室での事が、やっぱり彼の中にも抑える事となってあったのだろうと思ったからだ。
いつも思うけど、この感覚は不思議だと思う。
どこにも行くはずのないカラダが、どうしてこんなに飛び出したくなるんだろう。
吸い込まれるようにカラダからチカラが抜けて行くのに、どうしてこんなにしがみつきたくなるんだろう。
そしてどうしてこんなに近くにオマエはいるのに、胸が苦しくなって泣きたくなるんだろう。
ハ ァ……ハァ……ァァ…… ハ…… 旺……
すぐに苦しくなって、彼を呼びたくなる。
旺汰も素肌になる為にオレから離れた時間は、乱れてしまった呼吸を戻し、強ばったカラダを解し、飛び掛けの自分を取り戻す隙間。
引き込まれた入り口までの、このくらいが丁度いい。
今度はオレが旺汰を触ってあげよう、オレもオマエを確かめたい。
「ちょっと待って……次は……」
支度を終えた彼が、続きを始めようとしたからだ。
「いいよ今日は俺がやる……やりたい」
「……それはなに?」
「いつだったか言ってた〝ゼリー〟だよローション あの日の帰りに寄った、薬局で買ったヤツ」
〝あの日〟というのは日の出を見たり、遠くの公園まで出掛けた日だ。
帰りの途中、通り掛かったそこに突然旺汰が寄りたいと言い出した。
「ちょっとここで待ってて、買い物して来る ついでに飲み物買って来るよ」
ついでが飲み物で〝待ってろ〟だなんて、一体何を買うつもりでいるんだろう。
そんな腑に落ちない事に少々腹を立てて、それでも彼の言うままに仕方なく停めた自転車に寄り掛かって駐車場で空を見ていた。
遠くの空じゃなく、自分の真上の空。
その日は早起きしたりたくさん自転車を漕いだり彼とはしゃいだり、それでも時間がゆったりと感じた日よりだった。
腹の所で風に靡くTシャツが彼の気配を思い出し、少しのまどろみと合わさって心地が良かった。
真上から少し落ちた太陽の眩しさに軽い目眩を感じ、片手をかざして目を閉じた。
セミの鳴き声が、まだ耳に残っていた。
薬局なんて、別にどこも同じじゃないか。なんでこんな時にワザワザ……なんて考えてたんだ。
いつかオレは彼に言った〝こんなカラダで良ければオマエにやる〟。
彼の視線も彼の胸の温度も、自分以外の誰かのものになるのが嫌だった。
オレはそこを自分の居場所にしたかった。
そして彼はオレのカラダを自分のもののようにして行き、オレも旺汰に自分を預ける事に以前のような戸惑いは薄れて行った。
いいの?大丈夫なの?
い……いよ……旺汰……
まるでオンナを相手にしてるような物言いに、笑いそうになったがそれはすぐに胸の中で消えた。
先日の図書室での事が、やっぱり彼の中にも抑える事となってあったのだろうと思ったからだ。
いつも思うけど、この感覚は不思議だと思う。
どこにも行くはずのないカラダが、どうしてこんなに飛び出したくなるんだろう。
吸い込まれるようにカラダからチカラが抜けて行くのに、どうしてこんなにしがみつきたくなるんだろう。
そしてどうしてこんなに近くにオマエはいるのに、胸が苦しくなって泣きたくなるんだろう。
ハ ァ……ハァ……ァァ…… ハ…… 旺……
すぐに苦しくなって、彼を呼びたくなる。
旺汰も素肌になる為にオレから離れた時間は、乱れてしまった呼吸を戻し、強ばったカラダを解し、飛び掛けの自分を取り戻す隙間。
引き込まれた入り口までの、このくらいが丁度いい。
今度はオレが旺汰を触ってあげよう、オレもオマエを確かめたい。
「ちょっと待って……次は……」
支度を終えた彼が、続きを始めようとしたからだ。
「いいよ今日は俺がやる……やりたい」
「……それはなに?」
「いつだったか言ってた〝ゼリー〟だよローション あの日の帰りに寄った、薬局で買ったヤツ」
〝あの日〟というのは日の出を見たり、遠くの公園まで出掛けた日だ。
帰りの途中、通り掛かったそこに突然旺汰が寄りたいと言い出した。
「ちょっとここで待ってて、買い物して来る ついでに飲み物買って来るよ」
ついでが飲み物で〝待ってろ〟だなんて、一体何を買うつもりでいるんだろう。
そんな腑に落ちない事に少々腹を立てて、それでも彼の言うままに仕方なく停めた自転車に寄り掛かって駐車場で空を見ていた。
遠くの空じゃなく、自分の真上の空。
その日は早起きしたりたくさん自転車を漕いだり彼とはしゃいだり、それでも時間がゆったりと感じた日よりだった。
腹の所で風に靡くTシャツが彼の気配を思い出し、少しのまどろみと合わさって心地が良かった。
真上から少し落ちた太陽の眩しさに軽い目眩を感じ、片手をかざして目を閉じた。
セミの鳴き声が、まだ耳に残っていた。
薬局なんて、別にどこも同じじゃないか。なんでこんな時にワザワザ……なんて考えてたんだ。
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