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御前会議 二の議題
しおりを挟む──二の議題
宰相が述べる。その後を皇帝が引き継いだ。
「こちらは私から話そう」
五人は黙礼して後、皇帝を見た。
「皆、この国の建国の言い伝えを知っておろうな」
「建国の、言い伝え……」
五人は顔を見合せた。
「あの、扉の間……の話ですか」
ランフォード大公が答えた。
ジグラード帝国の宮殿には、帝国の建国のときからあるという大広間がある。
そこには、皇帝と皇后の玉座が置かれているが、その後ろの壁には小さな扉があった。二つの玉座の中央。ちょうど人の掌程の大きさで、ほぼ真円の石が埋め込まれている。
「我が帝国の最初の皇帝は我が息子と同じ名のランドル一世だが、その皇后となったのは、あの扉の向こうから来た妖精の女王だと言われている」
皇帝はそう言った。
その話はジグラード帝国の者なら子供でも知っている話だ。だが、現皇帝グラディス二世が六代目の皇帝。
建国のランドル一世の話はほとんど神話だった。
「あの扉にはめ込まれた石は、建国のランドル皇帝、皇后フロレラ様の御世は緑色に輝いていたという。
ランドル一世崩御の後、フロレラ皇后が扉の向こうにお帰りになり、その輝きが消えてしまった」
テーブルに着いた諸侯は頷いた。頷いたが、よくわからなかった。
今、なぜその話なのか。
この話はどこへ向かうのだろう。
「さて、そこで」
皇帝は全員の顔を見回した。その口元に笑みが浮かび、少しばかり少年のような表情になる。
「その扉なのだが、実は、しばらく前より石が光りだしているのだ」
石が……?
一同は顔を見合せた。
扉の間にある小さな扉の事はよく知っている。
建国の神話の話がなければ、見落としてしまいそうな小さな扉だ。扉と言うよりは、扉の形の飾り物とでも言った方がいい。青銅か何か出できていて、確かに真ん中に石がはめ込まれている。
灰色の、なんということのない地味な石だ。
それが、光っている?
「我が帝国は、来年ちょうど建国二百年となる。これを吉兆とし、建国祭を執り行うこととしよう」
皇帝は笑みを戻し、厳かにそう言った。
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