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2日目
第11話 二日目:夜パフェ:イニシャル サッポロ
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都会の札幌に帰って来た私と親友は、次の目的地に向かった。
お気づきだろうか。私たちはこの日まだ、甘いものをほぼ口にしていない。
私は甘いものが主食だ。なんならファミレスに行ったらまずスイーツを頼み、それを食べ終えてからごはん系を食べるくらいだ。うるさい。デブって言うな。その通りだよ。血糖値をブチ上げないとテンションが上がらないんだよ。
だから私は、インドカレーを食べてからソワソワしていた。
足りない。腹はいっぱいだが満足できない。甘いもので満タンになった腹に蓋をしないとこの気持ちは収まらない。
親友はそれを分かっていた。なので次の目的地を「夜パフェ」に設定していたのだ。さすが。
私たちが向かった先は、「INITIAL sapporo(イニシャル サッポロ)」。お酒やハーブを組み合わせた大人向けのパフェで有名だ。
店内はレトロモダンで落ち着く雰囲気だった。
メニューを開くと、パフェというよりもはや芸術が載っている。
私と親友はしばらく悩み、注文した。
ショコラフリークの私はもちろん、ショコラを使用したパフェ「ショコラ・バナン」を頼んだ。
そして親友は、パフェグラスの上に桃が半分くらい載っている「パルフェ・クラス」なるものを頼んでいた。
店員が慎重にパフェをテーブルに並べる。
「ショコラ・バナン」は、背が低く浅い、サンデーグラス。
一方「パルフェ・クラス」は、背が高く深い、パフェグラスだった。
食べる前から完成度が高い。ビジュアルが美しすぎて食べるのがもったいない。
私は目の前にある「ショコラ・バナン」をぐるりと回し、全体を舐めるように見た。
グラスの側面に、輪切りのバナナが飾り付けられているのが美しい。そしてパフェの上部には、キャラメリゼされたバナナ、チョコアイスっぽい何か、生クリームの上に添えられたフランボワーズ、そしてなんかよく分からない葉っぱが載せられている。
「くそっ……! 芸術点が高すぎてどれがなにか全っ然分からん!」
「ほんとそれ。今私なに食べてるんだろう」
私たちは、メニューに記載されたパフェの詳細を確かめながら、少しずつ口に運んだ。ちなみに「なんかよく分からない葉っぱ」は「タイム」というハーブだったらしい。おしゃれすぎて分かんねえよ。
メニューの詳細に、「山椒かおるドライフルーツとヘーゼルナッツのサクサクチョコ」というものがあった。私は山椒などの薬味系が苦手だ。なぜチョコパフェに山椒が入っているんだよふざけるな、と半ばキレ気味でサクサクチョコを口に放り込む。
不思議なことに……うまい。
というより書かれていなかったら山椒が入っているなんて分からないほど自然に馴染んでいる。なんでチョコと山椒が合うんだよふざけんな……。
「山椒って柑橘系だから合うのかも」
親友の言葉で納得した。なるほど、チョコと柑橘系って合うもんな。しかしチョコと山椒を合わせようとしたやつ天才かよ。
よくあるパフェだと、中盤あたりから飽きてくる、もしくは全てがごちゃごちゃに混ざって味がよく分からなくならないだろうか。
しかし、「ショコラ・バナン」は違った。
このパフェは、広く浅いグラスに入っているのだが、スプーンを差し込むところによって中に入っているものが違うので、食べる度に新しい味や触感と出会えるよう計算されていた。
それでいて、ベースとなるチョコレートソフトクリームのおかげで統一感は損なわれていない。
素晴らしい。この小さなグラスで、私を満足させやがった。
視覚で殴り、多彩な味による防ぎようがないクリティカルな攻撃ばかりを打ちやがって。こんなの勝てるわけないだろ。
今回も、私の完敗だ。
「あ」
私が感傷に浸っていると、親友がテーブルにぼとりと桃をひとかけら落とした。
彼女が食べている「パルフェ・クラス」は、私が食べたものより防御力が高い。
なんせグラスの上に桃が半分乗っかっているのだ。慎重に食べている親友でさえ、油断したらこうなる。
パフェは芸術性が高くなればなるほど、食べるのが難しくなる。
お気づきだろうか。私たちはこの日まだ、甘いものをほぼ口にしていない。
私は甘いものが主食だ。なんならファミレスに行ったらまずスイーツを頼み、それを食べ終えてからごはん系を食べるくらいだ。うるさい。デブって言うな。その通りだよ。血糖値をブチ上げないとテンションが上がらないんだよ。
だから私は、インドカレーを食べてからソワソワしていた。
足りない。腹はいっぱいだが満足できない。甘いもので満タンになった腹に蓋をしないとこの気持ちは収まらない。
親友はそれを分かっていた。なので次の目的地を「夜パフェ」に設定していたのだ。さすが。
私たちが向かった先は、「INITIAL sapporo(イニシャル サッポロ)」。お酒やハーブを組み合わせた大人向けのパフェで有名だ。
店内はレトロモダンで落ち着く雰囲気だった。
メニューを開くと、パフェというよりもはや芸術が載っている。
私と親友はしばらく悩み、注文した。
ショコラフリークの私はもちろん、ショコラを使用したパフェ「ショコラ・バナン」を頼んだ。
そして親友は、パフェグラスの上に桃が半分くらい載っている「パルフェ・クラス」なるものを頼んでいた。
店員が慎重にパフェをテーブルに並べる。
「ショコラ・バナン」は、背が低く浅い、サンデーグラス。
一方「パルフェ・クラス」は、背が高く深い、パフェグラスだった。
食べる前から完成度が高い。ビジュアルが美しすぎて食べるのがもったいない。
私は目の前にある「ショコラ・バナン」をぐるりと回し、全体を舐めるように見た。
グラスの側面に、輪切りのバナナが飾り付けられているのが美しい。そしてパフェの上部には、キャラメリゼされたバナナ、チョコアイスっぽい何か、生クリームの上に添えられたフランボワーズ、そしてなんかよく分からない葉っぱが載せられている。
「くそっ……! 芸術点が高すぎてどれがなにか全っ然分からん!」
「ほんとそれ。今私なに食べてるんだろう」
私たちは、メニューに記載されたパフェの詳細を確かめながら、少しずつ口に運んだ。ちなみに「なんかよく分からない葉っぱ」は「タイム」というハーブだったらしい。おしゃれすぎて分かんねえよ。
メニューの詳細に、「山椒かおるドライフルーツとヘーゼルナッツのサクサクチョコ」というものがあった。私は山椒などの薬味系が苦手だ。なぜチョコパフェに山椒が入っているんだよふざけるな、と半ばキレ気味でサクサクチョコを口に放り込む。
不思議なことに……うまい。
というより書かれていなかったら山椒が入っているなんて分からないほど自然に馴染んでいる。なんでチョコと山椒が合うんだよふざけんな……。
「山椒って柑橘系だから合うのかも」
親友の言葉で納得した。なるほど、チョコと柑橘系って合うもんな。しかしチョコと山椒を合わせようとしたやつ天才かよ。
よくあるパフェだと、中盤あたりから飽きてくる、もしくは全てがごちゃごちゃに混ざって味がよく分からなくならないだろうか。
しかし、「ショコラ・バナン」は違った。
このパフェは、広く浅いグラスに入っているのだが、スプーンを差し込むところによって中に入っているものが違うので、食べる度に新しい味や触感と出会えるよう計算されていた。
それでいて、ベースとなるチョコレートソフトクリームのおかげで統一感は損なわれていない。
素晴らしい。この小さなグラスで、私を満足させやがった。
視覚で殴り、多彩な味による防ぎようがないクリティカルな攻撃ばかりを打ちやがって。こんなの勝てるわけないだろ。
今回も、私の完敗だ。
「あ」
私が感傷に浸っていると、親友がテーブルにぼとりと桃をひとかけら落とした。
彼女が食べている「パルフェ・クラス」は、私が食べたものより防御力が高い。
なんせグラスの上に桃が半分乗っかっているのだ。慎重に食べている親友でさえ、油断したらこうなる。
パフェは芸術性が高くなればなるほど、食べるのが難しくなる。
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