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1日目
第6話 一日目:花火大会(ルタオ〝シルヴィ〟と共に)
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ラーメンを食べたあと、私と親友は酒とつまみを購入してホテルに向かう。札幌駅からはタクシーに乗った。
行き先を伝えると、タクシーのおじさんがほんの少し困った声を出す。
「そっち方面はちょっと時間がかかるかもしれません。もうすぐ花火大会が始まるので……」
「花火大会? こんな都会で花火をあげる場所があるんですか?」
「お客さんが泊まるホテルの近くに川があるんですよ。そこでやります」
私と親友は目を見合わせた。
そんなに近くなんだったら、ホテルの窓から花火が見られるかもしれない。
客室に入った私たちは、ルタオで購入した「シルヴィ」というエロいチョコムースケーキと、近くのコンビニで購入した「ぶどうのめ」という、JA余市認定のぶどう果汁を使用したチューハイを窓の縁に置いた。
「花火見えるかなあ」
「どうだろうね。見れたら最高なんだけど」
その時、「パーン」という音と共に、花火が一輪咲き乱れた。
「「んおおおおおお~!!」」
ビルに囲まれている立地だったので、高くない位置で上げられた花火は残念ながら見ることができなかったが、高い位置で上がる花火は綺麗に見える。
瞳に花火の光を映しながら、親友が呟く。
「ぽみーがギックリ腰になってなかったら、この花火見れなかったね」
実は親友は、私がギックリ腰になった時に、旅行が中止になる可能性を考えて、当初予約していた一泊目のホテルをキャンセルした。そして私が旅行できそうだとなってから新たに別のホテルを予約したのだ。
それにしてもおま、おま。二度手間をかけさせたっていうのに、〝そのおかげで花火が見れた〟みたいな言い方しやがって。良い子すぎるだろ、好きだ。
私と親友は、花火を眺めながら「シルヴィ」を口に入れた。
そして、二人同時にため息を吐く。
ルタオ舐めてた。
正直、それなりにおいしいケーキなのだろうなと思っていたのだが、とんでもない。
まず、グラサージュショコラがめちゃくちゃ滑らかでうまい。貧相な舌ながら、私はグラサージュショコラにそれなりの品質を求めている。奇妙なほど上から目線だが、「シルヴィ」のそれは主席合格だ。入学式では答辞を読め。
そしてムースももちろんうまい。三層のムースが織りなすハーモニーは、まるで天女の歌声のようだ。
親友もお気に召したようで、隣でまた記憶を飛ばしている。
口安めにコーヒーと「ぶどうのめ」を交互に飲んだ。「ぶどうのめ」は甘くて飲みやすい。まるでジュースだ。二リットルはガブ飲みできる。
大好きな親友と、おいしい食事をしながらまったりと花火を眺める。下を見ると、浴衣姿の人たちが歩道を歩いていた。夏だなあ。
私は「ぶどうのめ」をくいとひと飲みしてから、口を開く。
「私さ、このごろ花火で感動できなくなってたんよね」
「分かる」
「小さい時は大好きやったのに、毎年見てると慣れてきて、感動できなくなった」
それなのに、今日の花火は、十数年ぶりに心が震えた。
北海道で見ているからか、おいしい食事をしているからか、親友と見ているからか、はたまた全ての要素によってかは分からない。
北海道一日目にして、一生分の思い出をもらった気分だ。
行き先を伝えると、タクシーのおじさんがほんの少し困った声を出す。
「そっち方面はちょっと時間がかかるかもしれません。もうすぐ花火大会が始まるので……」
「花火大会? こんな都会で花火をあげる場所があるんですか?」
「お客さんが泊まるホテルの近くに川があるんですよ。そこでやります」
私と親友は目を見合わせた。
そんなに近くなんだったら、ホテルの窓から花火が見られるかもしれない。
客室に入った私たちは、ルタオで購入した「シルヴィ」というエロいチョコムースケーキと、近くのコンビニで購入した「ぶどうのめ」という、JA余市認定のぶどう果汁を使用したチューハイを窓の縁に置いた。
「花火見えるかなあ」
「どうだろうね。見れたら最高なんだけど」
その時、「パーン」という音と共に、花火が一輪咲き乱れた。
「「んおおおおおお~!!」」
ビルに囲まれている立地だったので、高くない位置で上げられた花火は残念ながら見ることができなかったが、高い位置で上がる花火は綺麗に見える。
瞳に花火の光を映しながら、親友が呟く。
「ぽみーがギックリ腰になってなかったら、この花火見れなかったね」
実は親友は、私がギックリ腰になった時に、旅行が中止になる可能性を考えて、当初予約していた一泊目のホテルをキャンセルした。そして私が旅行できそうだとなってから新たに別のホテルを予約したのだ。
それにしてもおま、おま。二度手間をかけさせたっていうのに、〝そのおかげで花火が見れた〟みたいな言い方しやがって。良い子すぎるだろ、好きだ。
私と親友は、花火を眺めながら「シルヴィ」を口に入れた。
そして、二人同時にため息を吐く。
ルタオ舐めてた。
正直、それなりにおいしいケーキなのだろうなと思っていたのだが、とんでもない。
まず、グラサージュショコラがめちゃくちゃ滑らかでうまい。貧相な舌ながら、私はグラサージュショコラにそれなりの品質を求めている。奇妙なほど上から目線だが、「シルヴィ」のそれは主席合格だ。入学式では答辞を読め。
そしてムースももちろんうまい。三層のムースが織りなすハーモニーは、まるで天女の歌声のようだ。
親友もお気に召したようで、隣でまた記憶を飛ばしている。
口安めにコーヒーと「ぶどうのめ」を交互に飲んだ。「ぶどうのめ」は甘くて飲みやすい。まるでジュースだ。二リットルはガブ飲みできる。
大好きな親友と、おいしい食事をしながらまったりと花火を眺める。下を見ると、浴衣姿の人たちが歩道を歩いていた。夏だなあ。
私は「ぶどうのめ」をくいとひと飲みしてから、口を開く。
「私さ、このごろ花火で感動できなくなってたんよね」
「分かる」
「小さい時は大好きやったのに、毎年見てると慣れてきて、感動できなくなった」
それなのに、今日の花火は、十数年ぶりに心が震えた。
北海道で見ているからか、おいしい食事をしているからか、親友と見ているからか、はたまた全ての要素によってかは分からない。
北海道一日目にして、一生分の思い出をもらった気分だ。
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