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赤き竜と白き死神の物語
解放 後日談
しおりを挟む白き聖杖亭の一階、食堂にて
壁際の席で座ってコーヒーを飲んでいたら、ロン毛の猫耳男が向かい側に座った。
「レーオンくん、一緒にごはんたーべよ」
「ウゼェのが来た」
これでもかというほどに顰めっ面をしてやったら、猫男もといレイヴンがニヤニヤ顔を更にニヤニヤさせた。
何なんだこいつは。
「せっかくおれが手伝ってあげたのにさ~つれないの~」
「あの時は本当に助かった。シャクだが、ありがとよ」
「へへ、まぁね~おれもシロくんがどっか飛び出して行ったの見た時心配だったからさ~」
俺がシロの居場所をすぐに突き止める事ができたのは、この男レイヴンのおかげでもある。
こいつは気配を消すのが上手く、尾行もお手のものだった。
あの日、シロが飛び出したところを丁度宿に帰ってきたレイヴンも目撃しており、俺達を見て何かを察したのかすぐにシロを追跡してくれたのだ。
「風の元素術って便利でしょ~」
「あァ、遠くに声を伝える術があるなんてな」
「あのさ~」
「……なんだよ?」
レイヴンが突然ニヤニヤ顔をやめて真剣な眼差しでこちらを見た。
こんな真面目な顔もできるのかこの男は。
「シロくんのこと、大事にしてやんなよ?」
「……言われるまでもねェよ」
「二人見てると、おれが立ち入る隙とかないな~って思ってさ。でももしシロくんがレオンくんのところから離れることがあれば、シロくんが悲しむようなことがあれば、おれ迷わずシロくんのこと奪うからね」
「……あァ、肝に銘じておく」
レイヴンがシロに気があることは知っていたが、まさか今こんな風に言われるとは思ってもみなかった。
茶化すことはせず、自分自身の誓いを思いレイヴンの言葉をしっかりと聞き入れる。
コイツは俺の言葉に満足したのか、いつものニヤケ顔に戻った。
「シロくんの瞳が光るのは、レオンくんのことを考えてる時だなっておれ気づいちゃったんだよね」
「っ……そうなのか」
「それか動揺したり怒ってる時。分かりやすくて可愛いよね~」
「あァ、そうだな……本人は気付いてないみたいだから、あまり言わないでやってくれよ」
「もちろん、気にしてそうだなって思ってたから言わないよ~」
「おれはシロくんが傷付くことは絶対にしないから」とレイヴンは笑って言う。
あまり信用ならない奴だと思っていたが、シロを想う気持ちは本物なのだろう。そういう部分ではこいつは信頼のおける奴なのかもしれないと思った。
「俺が……もしどうにかなっちまったとき、お前がシロを守ってやってくれるか……?」
「……当然。だけど彼はそれを望まない。君が先ずどうにかならないことが最優先事項だ。おれは君の代わりにならない」
俺の弱気な発言に、口元はニヤついているが目つきと口調が変わった。
コイツの素というのはこれなのだろうか。
「せいぜい死なないでね~死んだらシロくん取っちゃうからね~」
「わかってる。絶対死なねェ……ありがとよ」
「お礼ならメシ奢ってよ~」
「仕方ねェな……」
「やった~!ヴァイスさーん!オムライス大盛り!!!」
やっぱり信用できねェ奴だ。
だが、悪い奴でもないか。
今回の報酬:ほんの少しの信頼関係
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