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赤き竜と白き死神の物語
燃える瞳 前編
しおりを挟む冒険者の宿『白き聖杖亭』は二階建ての建物で、上階が宿として冒険者たちが寝泊まりしており下階は依頼の窓口兼食堂として機能している。
ギルドとしての窓口は専任のギルド員数名が担っているが、食堂の方で料理を用意しているのは宿の主人であるヴァイスさん一人で、給仕は暇な冒険者が日雇いでバイトしていたりする。
僕にしては珍しく一人で昨夜はぐっすり眠ることができ、少し陽が高くなってから起き出して着替え、朝食を済まそうと下階に降りかけた階段で聞き慣れた声が聞こえた。
低音の、よく響く耳心地の良い声……レオンの声だとすぐにわかった。
誰かと話しているようで、会話が聞こえてきた。
話している相手はずいぶんハスキーボイスだが、どうやら女性のようだ。
「なぁ、久しぶりに会ったんだからさ、心ゆくまでヤろうじゃないか」
「ふざけんな。お前に付き合ってたら俺の身がもたねェっつーの」
「そう言うなって!アタシとアンタの仲だろ??前はお互い動けなくなるまでヤッたじゃないか」
「あんときゃお前が毎日毎日しつこかったから仕方なく付き合ってやっただけだろうが!」
……もしかして聞いてはいけない内容かもしれない。階段を降りる足がつい止まってしまった。
二人とも結構大きな声で話しているからか、意識を逸らそうとしても会話が耳に入ってきてしまう。
「なー、アタシを番にしてくれたら良いじゃないか!そしたら毎日心置きなくヤれるだろ!?」
意識を逸らそうと頑張りながら階段を降りるのを再開しようとした矢先、こんな発言が聞こえてきて足を踏み外した。
ドガシャーン!と派手な音を立てて下階まで転げ落ちてしまった。痛くはないが恥ずかしい。
ヴァイスさんが音に驚いてキッチンからこちらに飛んできた。
「シロ!?怪我はないかえ?」
「大丈夫大丈夫、寝ぼけていただけだよ」
「大丈夫か!?すげェ音したぞ……」
ヴァイスさんに続いてレオンが駆けつける。
その後ろから同じように心配そうに見下ろしているのは知らない女性だった。
褐色肌に短く刈ったピンク色の髪、彼女もおそらく冒険者なのだろう、前衛職の中でも守りを捨てて攻撃に重きを置いていると思しき露出度の高い軽鎧を身に纏い、露わな腕も腹筋もしっかりと筋肉がついていてがっしりしている。
そして彼女の額には短い角が二本生えていた。
「アンタ大丈夫??階段から落ちて無傷とは、こんな細っこいのに意外と丈夫だね!!!ハハハ!!」
階段から落ちたショックで若干ぼーっとしながらも普通に立ち上がると、彼女は面白いおもちゃを見つけた子供みたいなキラキラした目で僕を眺めた。
そして僕の目線が彼女の角に向けられていたことに気がついたらしい。
「ハルスオーガンは珍しいかい?お嬢さん!オーガンは街中に多いけど、半血はまぁあんまり居ないか!」
「あ、すみません無遠慮に眺めてしまって!」
つい知識欲が出てしまい不躾なことをしてしまった。しかし彼女は気のいい人なのだろう、気にした様子もない。
ただ僕の謝罪の言葉を聞いてギョッとして見せた。
「え!!こんなべっぴんさんなのに男の子なのかい!?!?ヘェ~!エルフィンみたいに綺麗だねぇ~!!」
エルフィンとは森に住む耳の長い長身痩躯の人族のことだ。
種族の特徴として男女ともに非常に見目麗しい。
エルフィンに間違えられるのは光栄だが、彼女は一体何者でレオンとどのような関係なのだろうか?
後編へ続く
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