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赤き竜と白き死神の物語
※イレギュラ討伐〜変異ケルピー 1
しおりを挟むイレギュラとは
魔物が更に濃い瘴気に汚染された場合、時折発生する突然変異のことを言う。
より凶暴で強い力を持ち、街一つを軽々と滅ぼしかねない脅威となる為、普通は国家討伐隊が対処する対象であるが、時折冒険者達の受ける依頼の中に依頼主がただの魔物と思って普通の討伐依頼として申請したり、生態調査や探索依頼で偶然にも冒険者が遭遇してしまうなどがある。
今回は後者。
そして僕たちは危機に瀕している。
とある村に隣接している森の瘴気祓いの結界の修繕と森の安全調査を、僕、レオン、アイリスの3人で受けたが、森の中央にある泉に出たのはまさしくイレギュラだった。
元は泉を護る『ケルピー』という馬の姿をした水の精霊が、泉の中にできた瘴気溜まりの影響を受けてイレギュラへと変質してしまったようだ。
流麗だったであろう姿はもう見る影もなく、頭は縦に裂けて無数の牙と目玉がのぞき、尻尾の先には棘に覆われた瘤があり鈍器のように振り回している。
おまけに元の精霊としての力が強かったのもあり、元素術を行使するこの魔物は、頑丈なレオンを元素術で圧倒して気絶させ、アイリスを彼女の類稀なる戦闘技術を凌駕する力で叩き伏せ、僕も元素術を詠唱する隙をつかれて魔物の背中から生える無数の触手によって拘束されていた。
「放せっ!このっ!」
必死で身じろぎをするも、ぎゅうぎゅうと触手に締め上げられては全く身動きが取れず、術も使えない。
ぬらぬらと体液にまみれた触手が品定めをするように僕の服の隙間から入り込み、肌の上を這い回る感触がして鳥肌がたった。
さっさと締め殺すなりできるだろうに、そうせずにいつまでも拘束を続けて僕を体液まみれにして、一体何をするつもりなのだろうか?
そういえば魔物は、元になった生物の性別に関係なく男性の形質をとるという。
単純に凶暴になって見境なく生物を殺害するだけでなく、襲った生物に生殖行為のようなことをすることも多いらしい。
なんでも瘴気の種を植え付けて、内側から食らい尽くすか、植え付けた対象を魔物に変えてしまうそうな。
この世界の人はアーティファクトを心に宿しているので、ある程度の瘴気に対して耐性を持っていることが多いが、直接体内に瘴気を注がれようものなら耐えられる者はそうそう居ない。
普通は精神を破壊されて魔物と化すか死ぬかだろう。
最悪の状況を想像し、背筋が凍った。
そして魔物は一際太く、赤黒く、どこからどう見ても生殖器と思しき触手を僕の目の前に伸ばしていた。
死ぬ……?
レオンとアイリスも同じように……?
森に隣接している村もきっと無事では済まないだろう。
そんなのは……そんな結末は……
「嫌……だ……!」
僕はそこで意識を手放した。
2に続く
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