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規律
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しおりを挟む今日も風花は何度目かの討伐実習に出ていた。
今回のタームは一日目と最終日が日帰りでの討伐、中三日が野営での連続実習だった。
日帰りでの討伐実習を終えて、今日は野営一日目である。
日も落ちたところで、手分けして野営の準備に取り掛かる。
木咲はくじ引きで担当を割り振ると、自らは監督の任について陣営の端に位置取っていた。
風花はというと。
ぱちぱちと火の爆ぜる音を聞きながら、その場に座ったまま山の中の枯れ枝を集めていた。
火おこしを頼まれたのである。
「おい! ヨン! 横着をするな!」
「えー? ちゃんと火起こせてますよぉ。そんで枝も十分集めてます」
ちょこちょこと風の精霊に助けてもらい、石を集め、丸く囲い、近辺の枝をこんもりと盛った先。
火の精霊に声をかけたら火はあっという間に着火した。
更に予備の枝まで集めているというのに、何故木咲がめくじらを立てるのか理解できない。
テントを貼る担当のジュウゴは二人のやりとりを慣れた様子で聞き流し、食糧と水集めに行っているサンとハチはまだ戻らない。
木咲は風花の態度にこめかみを引き攣らせて、その綺麗な顔を歪めた。
「指示には従ってるんだから、規律も何もないでしょ?」
風花はその作業の傍ら、近付いてくる歪みも討伐していた。
作業中でも注意を怠るな、木咲のその指示にも背いてはいない。
「体を動かせと言っているんだ。体力をつけろと」
体力。
風花にとっては今更だ。
精霊の助けなしでは動くこともままならない体を持って、体力をつけろなどと片腹痛いにもほどがあった。
もっとも木咲はそんな風花の事情など知る由もない。
要するに八つ当たりだ。
「俺が一度でもへこたれたら言ってよ」
実際移動中は風に浮いて移動をする風花は、消耗する体力もないため、休憩を欲することはなかった。
怪我で動けなくなったサンを治療するハチごと風に浮かせて運んだこともある。
何を言われても風花は風花のやりたいようにやるだけだ。
木咲はわかっていないのだ。
この段階のひよっこが、規律を守るよりも優先して学ばねばならないことを。
何一つ。
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