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過去との邂逅
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しおりを挟むサンと呼ばれたのは後衛の弓使いだ。
俊敏そうな小柄な体躯に、短く刈り上げられた赤毛。
“名”を呼ばれると、人懐こそうな薄緑の垂れ目を緊張に染めて、サンは返事をした。
次に呼ばれたのはジュウゴという前衛の剣士。
左右の腰に一本ずつ帯剣している。
神経質そうな切れ長の目と、肩口で切り揃えられた直毛はどちらも燻んだ金。
すらっと伸びた長身に、しなやかな筋肉を纏い、ジュウゴは短く敬礼した。
Sランク唯一の喩術士は、ハチと呼ばれた。
一見おどおどした少年だが、強力な水の加護を帯びている。
薄い青のコーティングがされた長髪は、本来は水のように透き通って流れるのだろう。
水の精霊に好かれる素養だ。秘めた量自体は多くはないが、良質な素養だった。
「ヨン」
「…………、……はい」
風花は木咲に呼ばれても、一瞬反応が出来なかった。体というより心が拒否しているのだ。
しまった、と思うが、仕方がない。
返事の遅れた風花に、木咲は面白くないようだった。
「なんだその態度は。規律が乱れる」
是正しろ、と木咲は短く言い捨てて、一度風花を睨んだ。
人間の一睨みで怯む風花ではない。
風花はしっかりと木咲を睨み返した。
「お前がどんな信条で動いているかなど、私には関係のないことだ。だが、この実習の最中は私が隊長である。私の命には従ってもらうぞ、ヨン」
木咲は、強い意志を込めた瞳で風花を見据えた。
彼の父親を殺した時の顔が一瞬風花の脳裏をよぎる。
木咲がどんな思いで魔騎士になったのかは知らない。
だが風花は木咲に、父親と同じことにはなって欲しくなかった。
あの時の風花にはなかった感情が顔を出す。
風花も、ただ黙ってはいられなかった。
「……だったら、俺にもあんたの信条は関係ないよー。命令には一応従うけどね」
驚いて目を開く木咲に、風花は挑戦的に微笑んだ。
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