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潜入と出会い
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しおりを挟む結果的に風花の作戦は失敗に終わった。
失敗どころか悪目立ちした挙句、他の教師にまで目をつけられてしまったのだ。
生徒たちから突き刺さる好奇の目が痛い。
作戦を遂行するまでもなく、風花はあろうことか教師を伸してしまった。
「これから実施する実力測定の見本を見せよう」
四隊の前衛担当教師は、如何にもな風体で緊張する生徒たちに向き合っていた。
魔騎士団下りなのか、上がり損ねなのかは不明であるが、弱者を下に見る、教えてやっている感の見え見えの嫌な目付きだ。
教師の一言に、列の最後尾にいた風花は、絶対に目を付けられてはいけない、と本能で感じた。
「私と組手をしてもらう。一人指名するので、前に出てくるように」
教師に指名されたのは風花だった。
想定外だ。
皆の実力を見てから合わせて戦う予定でいた風花は、内心どうしたら良いかわからず、返事もせずに立ち尽くしてしまった。
「お前は昨日のオリエンテーションでも、つまらなそうに話しを聞いていたな。これからする実技の厳しさを教えてやる」
どうやら昨日のうちから目をつけられていたらしい。
風花は、ため息を吐きたくなるのを我慢して、前に足を進めた。
「組手は二人一組で五分一勝負だ。十分の休憩ののち、組み合わせを変えて四戦行う。各々の戦闘を見て教師が評価を行い、指導する。この隊は三十人編成で喩術科選択が六名であるから、一度に十二組が戦闘することになる。
あまりに力量に差がある場合や、戦闘困難に陥った場合には教師が止めに入るが、この授業は訓練を前提として実技を行うため、基本的には降参は認めない」
教師は風花から距離を取り、余裕そうに構えを取った。
口元にはいやらしく笑みが浮かんでいる。
指導することよりも、痛め付けることの方が先行しているように思えて仕方ない。
風花は仕方なく教師の正面に向かい合った。
「実技では魔力行使および、精霊の召喚が認められている。魔力や精霊による身体の強化が目的だが、今回は特別に攻撃魔術を使用しても構わん」
この学園の教師レベルであれば、風花の魔力行使の素養の低さがわかるのであろう。
正確に言えば、風花は魔力を内在しているため、素養はないに等しい。
しかし、反して風花が、精霊の加護を受けすぎるほど受けていることを、この教師は理解できていなかった。
教師は完全に風花を、下すぎるほど下に見ていたのである。
言葉の裏に生意気な生徒に俺の強さを見せつけてやる、という棘が丸見えで風花を苛つかせたが、ここは軽く負けるべきと冷静になり開始の合図を待った。
「はじめ!」
「、ぐあ……っ」
「え……?」
開始と同時に吹き飛んだ教師に、その場の誰もが思考を止めた。
吹き飛ばした犯人は風花だ。
しかし、当の本人もまた非常に驚いていた。
開始直後、風花がしたのはたったの二挙動だった。
足に風を集め教師へ向かって飛ぶ。
そこからほんの少しだけ手のひらを強化して、鎖骨に指先を触れさせただけである。
遠くから喩術科と後衛科の担当教師が駆けてくる。
授業は続行不可能。
解散が伝えられて一時その場は騒然とした。
(もしかして、やっちゃった……?)
殺しちゃったの方ではなく、しでかしてしまったの方である。
風花は逃げるように訓練場を後にして、部屋の中で一人大きなため息を吐いた。
風花はその時まだ知らなかった。
魔力の行使も、精霊の召喚も、無詠唱で出来るものがこの学園の教師でさえ、数人しかいないということに。
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