神々のストーリーテラー

みん

文字の大きさ
上 下
19 / 40
色付く日常

2

しおりを挟む

「お友達……っていうんでしょうかね。構っていただいてます」
「へえ……見回りで知り合ったのかな?」
「いや。まだ一緒になったことはないですね。あの人たち単独も多いでしょうし」

 集団で行われる見回りの派生で、能力の高い《継承者》は単独での見回りが割り振られることがある。
 ヤタマルは単純戦力の面から、キジトは能力ゆえに単独での持ち回りも多かった。

「え? 単独? ってことは《継承者》なの?」

 サジルの目が心配そうに細められる。
 元より細い目は、次のイスミの言葉で大きく見開かれることとなった。

「ヤタマルさんとキジトさんっていうんですけど」
「なんでまたそんな大物をホイホイしてるわけ?!」

 サジルはあまりの驚愕にイスミに掴みかからんばかりに詰め寄った。
 イスミとてその驚愕がわからないでもない。

 キジトは第一支部内でも有名な厭人家であるし、ヤタマルに至っては第一支部ナンバーワンと名高い《継承者》である。
 故に知名度は高い。
 組織内の《全継承者》の能力を把握するイスミも、それは知るところであった。

「成り行き、ですかね……」

 成り行き以外に答える術がない。
 イスミはあの日の出会いを思案して正直に答えた。

「俺だってそんなにアイツらと話すことないよ……」

 呆れたようにため息を吐くサジルは、ちらりと背後の一般隊員に視線を向けた。
 さほど遠い距離ではない。
 今の会話は聞こえていただろう。
 続いてイスミが顔を向けると、こちらを向いていた視線はあからさまに逸らされた。

「……ごめん、俺がまた余計なウワサ増やしたかも」
「いえ、気にしてませんよ」

 イスミは何でもないことのように素っ気なくサジルに答えると、ふい、と視線をビルの陰に向けた。

「……《悪意》が、来そうです」
「ほんと?!」

 イスミの言葉にサジルが臨戦態勢に入る。
 しばらくじっと陰を見つめていたイスミは、すっと目を閉じると、息を吐いて指示を出した。

「……指揮を執ります。一般隊員は前衛が待機。後衛は構えて。サジルさんは、背後から降りてください」
「了解! 司令官!」

 返事を返したのはサジルだけだ。
 一般隊員は遅れてイスミの指示に従った。

 《躾けられた悪意》が、のろりと顔を出す。

 イスミは手を大きく広げて空を仰ぐと、脳内に《悪意》が形成された《物語》を思い描いて、そして手のひらをぱたん、と合わせた。

 それは、まるで、本を閉じるかのように。

 イスミの指揮は、まるで定められたかのようにぴったりとその《悪意》を抑えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

純白のレゾン

雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》 この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。 親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。

幼馴染から離れたい。

June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

平凡くんと【特別】だらけの王道学園

蜂蜜
BL
自分以外の家族全員が美形という家庭に生まれ育った平凡顔な主人公(ぼっち拗らせて表情筋死んでる)が【自分】を見てくれる人を求めて家族から逃げた先の男子校(全寮制)での話。 王道の転校生や生徒会、風紀委員、不良に振り回されながら愛されていきます。 ※今のところは主人公総受予定。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

処理中です...