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色付く日常
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しおりを挟む「お友達……っていうんでしょうかね。構っていただいてます」
「へえ……見回りで知り合ったのかな?」
「いや。まだ一緒になったことはないですね。あの人たち単独も多いでしょうし」
集団で行われる見回りの派生で、能力の高い《継承者》は単独での見回りが割り振られることがある。
ヤタマルは単純戦力の面から、キジトは能力ゆえに単独での持ち回りも多かった。
「え? 単独? ってことは《継承者》なの?」
サジルの目が心配そうに細められる。
元より細い目は、次のイスミの言葉で大きく見開かれることとなった。
「ヤタマルさんとキジトさんっていうんですけど」
「なんでまたそんな大物をホイホイしてるわけ?!」
サジルはあまりの驚愕にイスミに掴みかからんばかりに詰め寄った。
イスミとてその驚愕がわからないでもない。
キジトは第一支部内でも有名な厭人家であるし、ヤタマルに至っては第一支部ナンバーワンと名高い《継承者》である。
故に知名度は高い。
組織内の《全継承者》の能力を把握するイスミも、それは知るところであった。
「成り行き、ですかね……」
成り行き以外に答える術がない。
イスミはあの日の出会いを思案して正直に答えた。
「俺だってそんなにアイツらと話すことないよ……」
呆れたようにため息を吐くサジルは、ちらりと背後の一般隊員に視線を向けた。
さほど遠い距離ではない。
今の会話は聞こえていただろう。
続いてイスミが顔を向けると、こちらを向いていた視線はあからさまに逸らされた。
「……ごめん、俺がまた余計なウワサ増やしたかも」
「いえ、気にしてませんよ」
イスミは何でもないことのように素っ気なくサジルに答えると、ふい、と視線をビルの陰に向けた。
「……《悪意》が、来そうです」
「ほんと?!」
イスミの言葉にサジルが臨戦態勢に入る。
しばらくじっと陰を見つめていたイスミは、すっと目を閉じると、息を吐いて指示を出した。
「……指揮を執ります。一般隊員は前衛が待機。後衛は構えて。サジルさんは、背後から降りてください」
「了解! 司令官!」
返事を返したのはサジルだけだ。
一般隊員は遅れてイスミの指示に従った。
《躾けられた悪意》が、のろりと顔を出す。
イスミは手を大きく広げて空を仰ぐと、脳内に《悪意》が形成された《物語》を思い描いて、そして手のひらをぱたん、と合わせた。
それは、まるで、本を閉じるかのように。
イスミの指揮は、まるで定められたかのようにぴったりとその《悪意》を抑えた。
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