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4.サーシャの様子
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フーガが隣町とその周辺で情報を集めている頃。サーシャは一人、城の地下室に閉じ込められていた。
「……フーガ……貴方に会いたい……」
サーシャはすすり泣きながら誰もいない空間で声をもらす。王子からの求婚を受け入れるために、泣く泣く別れた恋人の名を呼びながら。
「……このまま死ぬのなんて嫌! ……お願い、誰か助けて……」
その声は誰にも届かず、冷たい空気の中へ消えていった。
サーシャは嘆きながら、この事態を引き起こした張本人。聖女と呼ばれているルミナのことと王子のことを思い返していた。
サーシャはルミナに普通に接していた。ルミナも始めはサーシャに普通に接していた。
ルミナは王子に呼ばれて度々城に来ていた。聖女としての仕事があったのだろう。
サーシャは何も知らなかった。ただ、普通に生活していた。
そして、ある日突然王子から婚約破棄を告げられたのである。王子がサーシャを見る目は蔑んでいた。
なぜ、とサーシャが問えば身に覚えのない罪を言われた。否定しても、証拠があると言われ聞き入れて貰えなかった。
王子の横で意地悪い笑みを浮べるルミナを見て、サーシャはそこで初めて気がついた。
――私はルミナに嵌められたのだ、と。
しかし、気がついたところで遅かった。あれだけサーシャに惚れ込んでいた王子は、いつの間にかルミナへ信頼と好意を寄せていた。
その結果、サーシャは今処刑されることになり、その日まで地下室に幽閉されているのである。
「……どうして……こんなことになってしまったの……?」
サーシャに思い当たること節は無い。だから、いくら考えてもサーシャにはその理由など分かるはずもない。
ルミナが王子に愛されているサーシャに対して、嫉妬していたなどということは分からないのだ。
サーシャは何も分からないまま、冷たい地下室にいるのだ。
「……フーガ……」
ただ、かつての恋人の名前を呼びながらサーシャは一人泣き続けた。
「……フーガ……貴方に会いたい……」
サーシャはすすり泣きながら誰もいない空間で声をもらす。王子からの求婚を受け入れるために、泣く泣く別れた恋人の名を呼びながら。
「……このまま死ぬのなんて嫌! ……お願い、誰か助けて……」
その声は誰にも届かず、冷たい空気の中へ消えていった。
サーシャは嘆きながら、この事態を引き起こした張本人。聖女と呼ばれているルミナのことと王子のことを思い返していた。
サーシャはルミナに普通に接していた。ルミナも始めはサーシャに普通に接していた。
ルミナは王子に呼ばれて度々城に来ていた。聖女としての仕事があったのだろう。
サーシャは何も知らなかった。ただ、普通に生活していた。
そして、ある日突然王子から婚約破棄を告げられたのである。王子がサーシャを見る目は蔑んでいた。
なぜ、とサーシャが問えば身に覚えのない罪を言われた。否定しても、証拠があると言われ聞き入れて貰えなかった。
王子の横で意地悪い笑みを浮べるルミナを見て、サーシャはそこで初めて気がついた。
――私はルミナに嵌められたのだ、と。
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ルミナが王子に愛されているサーシャに対して、嫉妬していたなどということは分からないのだ。
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「……フーガ……」
ただ、かつての恋人の名前を呼びながらサーシャは一人泣き続けた。
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