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出会い
二話
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彼は振り返らず、木漏れ日の中から空に浮かぶ雲を眺めているだけだった。私は聞こえなかったのだと思い、再度同じ質問を問いかけた。
「…………?」
2度目の問いかけで振り向いた彼は辺りを見回し私以外誰もいないことが分かると、こちらを向いたまま不思議そうに首を傾げていた。
誰だって知らない人に声をかけられたら不思議に思うだろう。そう思って我に返る。少しの恥ずかしさと気まづさを覚えつつも三度目となる問を彼に投げかけた。
「……それ、俺に言ってるの?」
困惑と驚きが入り交じったような表情で彼は自らを指差す。私はその質問に肯定を示すように頷いて見せた。すると彼は更に驚きの色を濃くし言葉を続ける。
「俺のことが、見えるの?」
「……へっ?」
彼の発言に不意を突かれ素っ頓狂な声が出てしまう。見えるのか、とはどういう意味だろう。今度はこちらが困惑する番だった。
「君、俺のことが見えるの?」
身軽な動作で木から降り、私の方へ向き直った彼は先程の言葉を繰り返した。心做しか、口角が上がっているように見える。
「み、見えます!」
「……そっか!」
質問の意図も分からぬまま勢いで返事すると、彼は目を細めて花が咲くような笑みを浮かべる。
これだけ容姿端麗でありながら先程の首を傾げる動作やこの笑顔は……失礼かもしれないが可愛いとそう思ってしまった。
思っていた以上にフレンドリーな性格らしいとほっとすると同時に先程の問に対する疑念が首をもたげた。
「あの……俺が見えるの? ってどういう意味ですか?」
思い切って聞いてみると彼は焦ったように目を泳がせ、少し狼狽えたようだった。少しの沈黙、そして言いにくそうに目を逸らしたまま、彼は口を開いた。
「えーと……その、驚かないで聞いてくれる?」
「え? あ、はいっ!」
眉を八の字に下げ、未だ躊躇うように尋ねる彼によく分からないままに応答する。返事を聞いた彼は私の目をじっと見つめ言葉を紡いだ。
「実はね……俺、幽霊なんだ」
「えっ、あぁ……なるほど?」
「なんか驚くどころか呆れた顔だね……」
一体何を言い出すのだ、と思ったのが態度に出てしまったらしい。私より頭一つ分上にある彼の顔からは落ち込んだ様子が伺えた。
「でもさ俺……本当に死んでるんだよ……」
「…………?」
2度目の問いかけで振り向いた彼は辺りを見回し私以外誰もいないことが分かると、こちらを向いたまま不思議そうに首を傾げていた。
誰だって知らない人に声をかけられたら不思議に思うだろう。そう思って我に返る。少しの恥ずかしさと気まづさを覚えつつも三度目となる問を彼に投げかけた。
「……それ、俺に言ってるの?」
困惑と驚きが入り交じったような表情で彼は自らを指差す。私はその質問に肯定を示すように頷いて見せた。すると彼は更に驚きの色を濃くし言葉を続ける。
「俺のことが、見えるの?」
「……へっ?」
彼の発言に不意を突かれ素っ頓狂な声が出てしまう。見えるのか、とはどういう意味だろう。今度はこちらが困惑する番だった。
「君、俺のことが見えるの?」
身軽な動作で木から降り、私の方へ向き直った彼は先程の言葉を繰り返した。心做しか、口角が上がっているように見える。
「み、見えます!」
「……そっか!」
質問の意図も分からぬまま勢いで返事すると、彼は目を細めて花が咲くような笑みを浮かべる。
これだけ容姿端麗でありながら先程の首を傾げる動作やこの笑顔は……失礼かもしれないが可愛いとそう思ってしまった。
思っていた以上にフレンドリーな性格らしいとほっとすると同時に先程の問に対する疑念が首をもたげた。
「あの……俺が見えるの? ってどういう意味ですか?」
思い切って聞いてみると彼は焦ったように目を泳がせ、少し狼狽えたようだった。少しの沈黙、そして言いにくそうに目を逸らしたまま、彼は口を開いた。
「えーと……その、驚かないで聞いてくれる?」
「え? あ、はいっ!」
眉を八の字に下げ、未だ躊躇うように尋ねる彼によく分からないままに応答する。返事を聞いた彼は私の目をじっと見つめ言葉を紡いだ。
「実はね……俺、幽霊なんだ」
「えっ、あぁ……なるほど?」
「なんか驚くどころか呆れた顔だね……」
一体何を言い出すのだ、と思ったのが態度に出てしまったらしい。私より頭一つ分上にある彼の顔からは落ち込んだ様子が伺えた。
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