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25.猫になった婚約者とドライヤー
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大人しくタオルに包まれていたライルを床に下ろしてドライヤーの準備をする。
タオルに包まれている猫など一度も見たことがなかったが、あれはあれで可愛い。なんというか、赤ん坊みたいだ。
「乾かしていきますね」
「ああ……もう結構乾いている気もするが」
ドライヤーのスイッチを入れ、二十センチほど離した位置から風を当てる。手をかざしてみたが、熱くない。大丈夫そうだ。
コームで毛をとかしながら、乾かしていく。タオルドライで充分なくらい乾かしたが、濡れていると良くない。嫌がっている様子もないし、きちんとドライヤーで乾かしておこう。
「……ドライヤーってこんなにうるさかったか?」
「ああ、猫は聴覚が良いですから。音がよく聞こえるのかもしれません」
「そうなのか」
さっきよりもドライヤーを離して風を当てる。少しはうるさくないと良いのだが。一番静かなモードでかけていても、猫にとってはうるさいようだし、早く乾かしてあげなければ。
一、二分経つと、毛はすっかりもふもふに戻っていた。
乾かすのはこれくらいで良いだろう。ドライヤーのスイッチを切って、その場に置く。
「終わりましたよ、ライル様」
「おお、終わったか!」
「ええ。洗ったら綺麗になりましたね」
毛並みが艶々している。毎日ブラッシングをしている。だから普段も毛並みは良いはずなのだが、シャンプー後はより美しい毛並みになっていた。
「猫になってから一度も風呂に入っていなかった分、気持ちよかったぞ」
「あら、良かったですわ」
「また入りたいくらいだ」
「そうですか。ですが、入るとしたらだいぶ先ですよ」
「えっ、なぜだ?」
「猫はあまり頻繁にお風呂に入るのは良くないのです」
「そうなのか……残念だ」
短毛種なら年に一、二回。長毛種なら月一回。それくらいが妥当だと言われている。ライルは短毛種だから、当分の間は必要ないだろう。
「次にお風呂に入るよりも先に、人間に戻っていると思いますよ」
「……そうだといいのだがな……」
含みのある言い方だった。断定はできないし、希望的観測なのは分かっている。だから、ライルも願望以上の物言いはしなかったのだろう。
手を伸ばしライルを撫でた。ふわふわの毛が手のひらを包む。顔を上げたライルと私の視線が交わる。
何も言わずにライルは微笑み、私も微笑み返した。
タオルに包まれている猫など一度も見たことがなかったが、あれはあれで可愛い。なんというか、赤ん坊みたいだ。
「乾かしていきますね」
「ああ……もう結構乾いている気もするが」
ドライヤーのスイッチを入れ、二十センチほど離した位置から風を当てる。手をかざしてみたが、熱くない。大丈夫そうだ。
コームで毛をとかしながら、乾かしていく。タオルドライで充分なくらい乾かしたが、濡れていると良くない。嫌がっている様子もないし、きちんとドライヤーで乾かしておこう。
「……ドライヤーってこんなにうるさかったか?」
「ああ、猫は聴覚が良いですから。音がよく聞こえるのかもしれません」
「そうなのか」
さっきよりもドライヤーを離して風を当てる。少しはうるさくないと良いのだが。一番静かなモードでかけていても、猫にとってはうるさいようだし、早く乾かしてあげなければ。
一、二分経つと、毛はすっかりもふもふに戻っていた。
乾かすのはこれくらいで良いだろう。ドライヤーのスイッチを切って、その場に置く。
「終わりましたよ、ライル様」
「おお、終わったか!」
「ええ。洗ったら綺麗になりましたね」
毛並みが艶々している。毎日ブラッシングをしている。だから普段も毛並みは良いはずなのだが、シャンプー後はより美しい毛並みになっていた。
「猫になってから一度も風呂に入っていなかった分、気持ちよかったぞ」
「あら、良かったですわ」
「また入りたいくらいだ」
「そうですか。ですが、入るとしたらだいぶ先ですよ」
「えっ、なぜだ?」
「猫はあまり頻繁にお風呂に入るのは良くないのです」
「そうなのか……残念だ」
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「次にお風呂に入るよりも先に、人間に戻っていると思いますよ」
「……そうだといいのだがな……」
含みのある言い方だった。断定はできないし、希望的観測なのは分かっている。だから、ライルも願望以上の物言いはしなかったのだろう。
手を伸ばしライルを撫でた。ふわふわの毛が手のひらを包む。顔を上げたライルと私の視線が交わる。
何も言わずにライルは微笑み、私も微笑み返した。
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