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2.この猫が私?

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「……よし、決めた! 君は俺のところで面倒を見よう」


 いや、突然何を言い出してるのこの人?

 自分勝手すぎない? せめて一回私に聞いて欲しい。


「うわぁっ!?」


 急に体が持ち上がった。

 浮遊感が気持ち悪い。

 思わず手足をバタつかせ、暴れてしまった。


「おっと、抱っこは嫌いか?」


 抱っこ? 何を言っているんだ。

 え、まさか今の浮遊感はこのロールという男が私を持ち上げたのが原因?

 いくら男とはいえ、女一人を軽々と持ち上げる腕力すごいな。別にそこまでムキムキというわけでもないのに。


「また驚かせてしまったな。すまない」


 頭を撫でられた。さっきからこの人馴れ馴れしすぎないだろうか。

 初対面の人にする態度ではない。

 あ、でもこれ乙ゲーだったらありえそうな展開だ。

 最初はこういう風に強引に進むゲーム多いし……ますますゲーム味がある。


「……えっ、ちょっと待って」


 ロールの瞳には、頭を撫でられている白い猫が写っていた。

 目の前のロールの瞳に猫の姿があるということは、つまり、これが私だということである。

 それ以外には考えられない。


「私……猫なの!?」


 今思えば地面もかなり近い。空は頭上のはるか上。

 猫だから背の高さが低いと考えれば、納得がいく。

 それに、ロールのあの態度。動物相手にこういった態度をとる人を見たことがある。結構な頻度で見る。私もやる。

 猫だから、可愛いと言ったり面倒を見ると言ったりしたんだ!

 抱っこと言ったのも多分そうだ。

 不可解に思っていたことがスルスルと溶けていった。


「はぁ……連れていきたいが、これ以上嫌がることをしてはいけないし……」


 ロールがため息をつく。

 さっき抱っこを拒否したからか。ま、諦めてくれるならそれはそれで……良くないな。

 ここが乙ゲーの世界なら攻略キャラの近くにいた方がいい。多分これ、乙ゲーの世界だろうし。

 そもそも、これまでとは全く勝手が違う猫の体で外の世界を生きていける気がしない。

 ここは、このロールに連れて行ってもらい、面倒を見てもらうのが良いのではないか?


「ろ、ロール様!」
「どうした?」
「えーと……」


 いきなり連れて行ってくれとは言えない。どうしよう。

 というか、私は猫なのに言葉通じてるのかな。
 
 なんか会話が成り立っているような気もするけど、単に鳴き声に反応しているだけという可能性もある。

 本当にどうしよう。状況がイレギュラー過ぎて頭がついていかない。


「そこで何をしていらっしゃるの?」
「ルージュ!」


 赤髪の美人な女の人が歩いてきた。お嬢様が着るようなドレスを着ている。とてつもなくスタイルが良い。
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