幽閉塔の早贄

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
上 下
93 / 240
2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木

第12話 外道(ルーク視点)

しおりを挟む
地下は音が響く。アシュレイの言う通りジルの歩行音は特徴的な気がした。

「やけに用心深いですな。出来の悪い兄に聞かれたくないことでもありますかな?」

メルヒャー卿はジルの体の大きさから、兄弟の生まれた順序を誤認しているようだった。

「図体だけはデカくてな。脳に栄養がいかなかったのであろう。あっちが弟だ」

地下は湿度が高く、どこからか水が滴り落ちる音が響いてくる。私の腹を探り、さっきまでの饒舌さからは考えられないくらい彼は静かになった。

「さっきの出来損ないの弟の他に、もう1人庸人の弟がいてな。それがどこからかで手に入れた媚薬の後遺症に悩んでいる、という建前で来た」

「ほほほ、建前とは。他に聞き出したいことでもありますかな?」

メルヒャー卿の目が怪しく光る。きっと人には言えない欲望があると、彼が救世主のように見えるのであろう。彼はそういった人の闇を嗅ぎ分ける才があるのだ。

「その媚薬を辿ると貴殿にたどり着いた。さっきの役立たずはどうにかして庸人の後遺症を取り払いたいと考えているようだが……」

ここで敢えて言葉を区切って、遠くを見た。

「貴兄は違うと?」

「きっと貴殿には理解ができないとは思うが……私は庸人が視界に入るだけでも虫唾が走る。不治の病のようなものだ。同じ兄弟とわかってはいても、こればかりは治らなくてね」

「なにを滅相もございません。この国の大半がその病を罹っております」

メルヒャー卿と視線が絡み合う。しばらくその目に宿る邪気を眺めたら、自らの欲望が溢れ出していく。

「だがな、そんなちっぽけな庸人を力で捻じ伏せ、小さな穴を犯すのがこの上なく愉しくてな。魔人のこどもとは違う、生まれながらのちっぽけな体に自らをねじ込み、何度も何度も腹の中を犯す。腸が破けるほど擦り付けてやると、小さな体からは考えられないくらいいい声で鳴くのだ。やめて、殺さないでと、穴という穴から体液を垂れ流して命乞いする、それが……」

ハッとして、メルヒャー卿を見る。瞳が柔和に細められ、その光景に息を飲む。

「私めは死刑囚にございます。なにを怖がることがございましょう。貴兄の愉悦を咎める者などここには居りません。さっきの出来損ないにはわからない嗜みでございます」

「ああ……。あいつは庸人の弟に入れあげていてな。普段から庸人の弟はあの役立たずに懐いるのだ。だからこっそり庸人をあの媚薬で躾けてやっていたのだ。やめてくれと懇願するのに、体中が熱く体液塗れで……泣きながらあの木偶の坊の名前を呼ぶ。支配とはこういうことをいうのだ。それを庸人に教えてやっていたのに……。あの木偶が、友人から譲り受けた媚薬に勘付きやがった……。出来損ないの分際で……」

メルヒャー卿はゴクリと喉を鳴らした。だから私は股間に手をあてがって、自身を慰めるように摩った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!

あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。 次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。 どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。 って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉

クリム
BL
一回めは処刑された老臣、二回めは鬼教官、三回めは教師、そして四回めの転生は異世界で小人族ですか。身長一メート僕タークは、御信託で巨人族にお嫁入りです。王様はどう見ても三メートルはあります。妖精族のソニン様、獣人族のロキと一緒に王様になりたてのガリウス様を幸せにします。まず、王様のイチモツ、入りますかね? 三人分の前世の記憶と、豆知識、そして貪欲な知識欲を満たすため、異世界王宮改革をしていく三妃タークの物語。 ※はご高覧注意です。 『小説家になろう』にも同時連載。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...